極めて個人的な外界との繋がり

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雪村抱月

雪村抱月

November 27, 2004
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 昨日の事である。仕事が押しに押して、予定に入れていた前の部署の飲み会もキャンセルして机にかじりついていた。

 電車のドアにもたれて出発を待っていると、酔って良い気分になっていると思われる。男女の二人連れが雪崩れ込むように乗ってきた。ちょうど空いている二人分の席に、初老の男性が座り、その横に女性を座らせた。特に関心があったわけでもないのだけれど、視界の真正面に入ってきたので、つい見てしまったのだけど、所謂「夫婦」というわけではなさそうな感じであった。結婚しても恋愛はするだろうし、全然知らない赤の他人が何をどうしようが、大人なんだから、なんとも思わないので本に視線を戻したが、女性の嫌がる声が絶えず耳に届いていた。どういう訳か解らない。が、女性のほうは「止めて下さい」だの「放して下さい」だの言っている。周りの乗客も、最初は気にもしていなかったが、女性のほうが何度もそういう言葉を口にするので、そこに視線が集まって行った。読書の邪魔になって仕方がないが、どうすることも、できない。
 そうこうしているうちに、急行待ちの駅で女性が荷物を持って電車を降りようとしたら、男性がそれを阻止し、結果として女性が転んでしまった。さすがに周囲は一瞬騒然として、電車に乗り込んできたばかりの人は余計に驚いていた。対応に躊躇って、困惑していた。
 嫌がる女性を無理やりではあるが淡々と席に押し戻す男性に対して、しかし周囲は何もしなかった。私も何も出来なかった。「普通の喧嘩」なら、もしかしたら「やめたら?」と言ったかもしれないし、周りもそういう事を口にする人が居たかもしれない。しかし、如何せん「チワゲンカ」である。インターセプトしていいかどうかも、良く解らない。結局は、誰も何も口にせず、めいめいの世界に戻った。改めて本に目を落す人、携帯を取り出す人、目を瞑る人・・・・私も本に目を落とした。だが、酷く居心地が悪かった。金曜日の夜、頭も身体も疲れ切って(随分腹の立つ事もあったことだし)いた。そこに出くわしたハプニング。もしかしたら、何か出来たかもしれないのだが、何もしなかった。中途半端な「常識」や「正義感」だけが漂って、そのくせ自分に火の粉が降りかかることを怖れて、ただ突っ立っていただけだった。
 電車の中は、公共の場であると思っているから、「感情的」になるべき場所ではないと思う。だから、誰かと一緒に乗っていたとしても、喧嘩は一時中断だし、談笑も声を抑えるのが、当たり前だと思っていたけれども・・・・。
 恥を知れという言葉があるのだが、日本という国は、それを重んじてきた。だから表では慎み深く、良くも悪くも感情を表沙汰にしてこなかったのだが、そう考えるのはすでに「古風」と言われるのだろうか・・・。
 いずれにしても、自分を恥じた。自分の中途半端さを恥じた。ただ・・・・巧くいえないのだけれど、どこかがっかりした気持ちもある。誰も、あの女性に助けの手を差し伸べなかった。自分の事を棚に上げて「がっかりする」のは、身勝手だけれど、誤解を恐れずに言えば、やっぱり「がっかり」したのである。痴話喧嘩だったせいもあっただろう、仲裁していいのかどうか、踏ん切りもつけがたい。「勝手にやってろ」とも、どこかで思う。
 また同じ事に遭遇することは、そうあるとも思わない(逢って欲しいとも思わない)が、その時、自分が何を出来るか、まだ解らない。





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Last updated  November 27, 2004 10:39:16 PM
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