The Life Style in The New Millennium

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2005.09.04
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生きる勇気

「戦争が終わった時には、生きてることが罪に思えたよ」

重蔵は、そう言って笑った。

当時の若者は、お国の為に死ぬことが、最高に幸
せだと思ってた。

教育が、死を美化していた。

人間は、所詮、環境に流されて
生きて行くしかない生き物だった。

戦争が終わり、死ぬことができないと分か


重蔵は、終戦を聞いてから所属していた軍隊を一人離れ港から、
とぼとぼと、ただただ歩いて浜辺に来た。

「よーし、ここで死ぬんだ」

と重蔵が短刀を振り上げた時だった・・・

「おっちゃん」

黄色い声が重蔵に耳をつんざいた。

どうして、止めるんだと声にならない叫び
が心の中に響き渡った。

生きてて何になる、そう自分自身に言い聞かせて、今
一度、短刀を振り上げた。

「おっちゃん」



重蔵が仕方なしに振り返ると、
3才か4才くらいの少女が立っていた。

おそらく、このあたりの漁村の子供だろう。

「何か用か?」

と重蔵が訊くと、少女は、



と重蔵の手を引いて、少女は引っ張るように小さな家に連れて行った

「これ、私の家なの」

中から、母親らしき人が出てきた。

「兵隊さん、お疲れのようだね。うちの子が面倒かけたかな」

「いや、そんなこと・・」

「よかったら、中に入って、休憩してください。こんなボロ家ですが、一休み
くらいできますし」

・・・

浜辺で遊ぶ少女を見ながら、重蔵は、その女と話した。

その女は恵子と言って、
重蔵と同い年の30才だった。

「戦争、終わったそうですね」

「らしいが・・・私の中では、まだ・・・」

「死ぬ気ですか?」

「どうして、それが・・」

「分かりますよ。先月特攻隊で死んだと聞いた夫も、そんな顔して出征して行
きました」

「お気持ち察します」

「男の人は、勝手だよね・・自分たちだけカッコつけて死ぬんだって。後に残
された女房と子供のこと考えてるのかねえ」

「その為に死ぬのだ。国を守るとは、そう言うことだ」

「だったら、生きて守ってくれたら、もっと良いのに・・・死ぬぞって思うか
ら死ぬんですよ。その方が楽なんですよ。生きることの方が、もっと勇気がい
るし、大変なのに」

・・・

重蔵は、話しているうちに、恵子に惚れてしまったようだった。

こんな可愛い子供とまだまだ若い妻を残して死ぬなんて、
バカな男もいたもんだと少しずつ思い始めていた。

その日は、そのまま別れて、何とか実家に帰った重蔵は、ど
うしても、恵子のことが忘れられなかった。

そして、数ヶ月後、重蔵は恵子を訪ねてきた。

貧しい母と子が、ただでさえ食糧難だった時代を生きて行くのは大変だ。

自分で良ければ、あの母と子の力になろう・・・

そう心に誓って、重蔵はやってきた。

「こんにちは」

「ああ、おっちゃん」

最初に出てきたのは、あの少女だった。

「元気だったか」

と重蔵が言うと、家の中から、恵子が出てきた

「あら、いらっしゃい」

「いや、あの時は、どうも」

「いいえ・・・元気になりましたか」

「おかげ様で・・・」

「今日は、何か・・・」

「実は、あなたたち二人の・・・」

と言いかけた時、家の奥の方から

「おーい、誰か来たのか」

と言う男の人の声がした。

ニューッと、髭の濃い逞しそうな男性が現れた

「どなたかな?」

恵子は、重蔵の顔を見て少し恥ずかしそうに

「この人、主人です。死んだと聞いた主人です。この人、私と娘のことが思い
出されて、死にきれなかったって帰って来たんです」

と言った。

その瞬間、失恋に気づいた重蔵だったが、全然悲しくなかった。

ただ、その時の恵子の目がキラキラ光って、とてもキレイだったことだけが、
いつまでも心に残ったそうだ。








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Last updated  2015.08.23 08:35:41
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