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過去を振り返ってみた時、懸命に登ろうとしている私がいた。何かに向かって、何かを手に入れようと必死に...そして、そのために様々な道具の力を借りながら...時にはその道具の力でものすごく速く登れたり、自分に力がわいてきたりする。周囲の人も懸命に登っている姿を見て、「まだまだ」と言いながら登る。しかし、鼻の先にぶら下げた人参を追うかのように、頂上は私と同時に上へ上へと移動していくようだ。時には頂上に着いたかのように見えた。しかし、それは仮の頂上だった。その地点でよく見てみると山はまだ続いていた。
ある時、上がだめなら、下へ降りてみようと思った。その時、「何だこんな方法があったのか」とすごい衝撃を受けた。私の中で何かが大きくシフトした。下へ降りるのは登るよりずっと楽である。しかも、何だ頂上を目指していたけれど、欲しいものなんてすぐ手元にあったんじゃないか、という気になる。どんどん降りる。何かずっと打ち寄せてばかりいた波がさぁっと大きく引いていくような感覚があった。その波が引くと同時に波にかくれて見えなかったものが見えてくる。
どんどん降りる。降りてみれば、もう登る必要を感じない。ただ、平面を歩いていろいろな所へ行ってみればいいということがわかる。頂上には何もなかったのかもしれない。しかも、自分で頂上を創り上げて登れ、登ると何かがあるぞ、と言い続けてきただけなのかもしれない。
でも、登ってみてよかった。登る経験はとても大切だった。頂上なんてないことがわかったし、何より登らなければ降りることはできなかったから...
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