愚者の選択

星のかけら

星のかけら

それはとても古くて所々ボロボロで……。
なんでそんなに大事にするのか解らなかった。
匂いはもうすでにそれではなく、少しヤ二と酒の匂いが混ざっている。
かすかに君の匂いがするのは気のせいかな?
いつもそれを胸に抱いて、それになりたいと思うこともあった。
「見せて」と言うと、いたずらっ子みたいに笑う。
その笑顔が見たくて何度この言葉を並べただろう?



不気味な光が無造作に並ぶ鉄のオブジェを照らす。
もう、辺りの静かなる命たちは休んでいるのだろうか?
『月光』のオーケストラはすでに幕を下ろし、僕は君を待つ。
君は来てくれるだろうか?
ドクドクと流れる水の奔流が激しくなっていくのがわかる。
僕はどうしたんだろうか?
すっとブランコに座って考える。
息が白い。
もうそんな季節か……………。



「おっす!」
君は来た。寒そうな格好をして。
「またオヤジくさい事考えてたんでしょ!?」
君は笑う。オヤジくさいとは心外だ………
「今日は寒いね。それなのになんでそんなにテンション高いかな……」
「むぅ!失礼な奴だな~…。人を能天気馬鹿みたいに。」
そう言って僕の隣に座る。
青白い柔らかな光に抱かれて君は…………………



そのただでさえ白い肌がよりいっそう、まるで陶磁器のように白くなる。
滑らかでいて流麗で、幻想の中に居る気分になるとともに、その首に
、その胸に顔をうずめたくなる衝動に狩られる。
自分は本当にどうかしてしまってんだろうか?

「だってそうだろ?いつもいつもテンション高くて……ついていくこ
っちの身にもなってもらいたいよ。」
すると口を膨らませる君。
「君がテンション低すぎるだけだよぉ~!
それだったらもっとテンションあげなきゃ!ほら!」
身振り手振りで一生懸命説得する。
つややかな髪が宙に舞う。
僕はいつから夢魔に憑かれたのだろう?
君とであった、また同じ時間にここに居る。
それはひと時のほんの少しの幸福。
それでもかまわない。他にはいらない。
君が同じ気持ちで居てくれるだけで_______________________




「どうかした?」
怪訝そうに顔を近づける君。
僕は驚いて後ろに飛びのく。
どうやら会話を途中で中断したらしい。
「何でも無いよw気にすんな。」
誤魔化すように笑う。
君もつられて笑う。
「なによ、それぇ~!教えなさい!
さぁ、はきなさい!はけぇ~!!」
そう言って容赦無しに僕の首を締める。
「く、苦しい~。や、やめろって。」
くぐもった声で助けを求める。
ジャラジャラと鎖が音をたてる。
「はけぇ~!はいて楽になっちゃえ!」
鈴を転がしたように君は笑う。

その笑顔を見て思う。

その笑顔を忘れないと______________________










時は残酷で、いつも傍にあるものでありながらも、
ふと気づけばいつのまにか過ぎ去っていくものだ。
でも、君はその波に飲まれず、ずっとそこに居る。
「これ、預かってもらっていいかな?」
突然君はそう言った。
君の代名詞とも言える”それ”を果たして預かっていいんだろうか?
すでに表面がガサガサで、白かったはずの側面は茶色っぽく変色している”それ”
「中身見ても構わないし…………ね?」
いつも僕が好きな笑顔をくれた。
でもそれでいて、君の瞳は澄んだ湖のような静けさを称えている。
その真剣な眼差しに僕は一瞬たじろぐ。
「う………うん。」
うなずいてしまった。その剣幕に負けて。
「よかったぁ。じゃあ宜しくね?大事にしてね!」
そういうと胸に抱いた”それ”を渡す。
「じゃ。」
きびすを反すと君は去っていった。
その一瞬見た瞳は………。
そこで、初めて事の顛末を理解した。
僕の手の中にある”それ”。
そっと淵に手をかける。
やっぱり止めておこう。
そう、決めた。







次の日、あの時と同じく君を待つ。
”それ”を返すつもりで。
それは昨日迷いに迷って決めた事で_____








ところが君は来なくなった。
初めは風邪かと思った。
これだけいきなり寒くなったから…
きっと、性質の悪い風邪をひいたのだろう、と。
しかし、君は来なかった。
「何故だ?」と何度自問自答しただろうか?
それでもやっぱり君は来ない。
なんとなく解っているはずだ。
でも、認めたくなかった。
ふと気づくとある”それ”
君との唯一のつながり。
何度開けようと思っただろう。
解っているはずの答えを求めて。
でも、それはパンドラの箱。
開けたらそれで君との繋がりが切れてしまう気がして………








もうすぐさそり座が綺麗になる季節。
君と同じ星座。
その下で君を待つ。
”それ”を持って________








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あとがき♪

意外と長い話を書きました。
次は明るい話にしたいと思います。
きっと…






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