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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ22〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。藤壼の宮は足りない点もなく、才気が見えすぎる方でもない立派な貴女であると頷きながらも、その人を思うと例の通りに胸が苦しみでいっぱいになる。何れが良いのか決められず、遂には筋の立たぬものとなって朝まで話し続けた。やっと今日になり天気が戻った。光源氏は宮中にばかりいる事も左大臣家の人が気の毒に思えそこへ行った。一糸の乱れず整然としている家なので、真面目という事を最優先の条件にしており、昨夜の談話者たちには気に入ると源氏は思いながら、今も初めどおりに行儀を崩さないでいる。打ち解けぬ夫人であるのを物足らず思い、 中納言の君、中務という若い女房たちと冗談を言いながら、暑さのため部屋着だけになっている源氏を、その人たちは美しいと思い、こうした接触が得られる中に幸福を感じていた。大臣も娘のいる方へ来て、部屋着になっているのを知り、几帳を隔てた席に着き話そうとするのを、暑いと源氏が顔をしかめていると女房たちは笑った。静かにと言い、脇息(きょうそく)に寄りかかった様子にも品のよさが見えた。暗くなってきた頃、今夜は中神の通り路になっており、御所から直接ここへ来て寝んではなりませんと、源氏の家従たちの知らせがあった。中神は避ける風習になっているが、二条院も同じ方角なのだが、源氏はもう疲れていて寝てしまいたいのに、どこへ行ってよいか分からないと言いながら、寝室へ入った。このままにされてはと家従が言って来る。家従の一人の紀伊守である男の家の事が上申され、中川辺へ新築して、水を庭へ引き込み、ここならば涼しいと言うと、それは良いと言い、暑さで体が辛いので車のまま入れる所にしたいと源氏は言っていた。隠れた恋人の家は幾つもあるはずだが、久しぶりに帰ってきて、方角除けに他の女の所へ行っては、済まぬと思っているようだ。紀伊守を呼び出して泊まりに行くことを言うと、紀伊守は承知をした。
2024.06.22
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ21〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。男でも女でも、生かじりの者はわずかな知識を残らず人に見せようとするから困る。三史五経(史記、漢書、後漢書の三史と易経、詩経、書経、礼記、春秋の五経)の学問を始終引き出されてはたまない。女も人間である以上、社会百般の事についてまったくの無知識なものはない。わざわざ学問はしなくても、 少し才のある人なら、耳から目から色々な事は覚えられる。自然男の知識に近い所へまで進んでいる女はつい漢字を沢山書くことになり、女同士で書く手 紙にも半分以上漢宇が混じっているのを見ると嫌な事で、あの人にこの欠点がなければと思う。書いた当人はそれほどの気で書いたのではなくても、読む時に音が強くて、 言葉の舌ざわりがなめらかでなく嫌味になるものです。これは貴婦人もするまちがった趣味で す。歌詠みだといわれている人が、あまりに歌にとらわれて、むずかしい故事なんかを歌の中 へ入れておいて、そんな相手になっている暇のない時などに詠みかけてよこされるのはいやに なってしまうことです、返歌をせねば礼儀でなし、またようしないでいては恥だし困ってしま いますね。宮中の節会の日なんぞ、急いで家を出る時は歌も何もあったものではない。そんな時に菖蒲に寄せた歌が贈られ、九月の菊の宴に作詩の事を思い一所懸命になっている時に菊の歌。こんな思い遣りのない事をしないでも場合さえよければ、真価を買ってもらえる歌を、今贈っては目にも留めてくれない。その人が軽蔑されるようになり、何にでも時と場合があるのに、それに気がつかないほどの人間は風流ぶらないのが無難だ。知っている事でも知らぬ顔をして、言いたい事があっても機会を外して、そのあとで言えばよいだろうと思う。こんな事がまた左馬頭により言わる間にも、源氏は心の中でただ一人の恋しい方の事を思い続けていた。
2024.06.21
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ4〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。親がついていて、大事にしてもらい、屋敷内の奥の邸宅の建物の部屋で育っているうちは、その人の一部分だけを知って男は自分の想像だけで十分補って恋をすることになるですね。顔がきれいで、娘らしくおおようで、そしてほかにすることがないのですから、そんな娘には一つくらいの芸の上達が望める。それができると、仲に立った人間がいいことだけを話して、欠点は隠して言わないようにしている。そんな時にそれは嘘だなどと、こちらもいい加減なことを言う事は可能ではなく、真実だろうと思って結婚したあとで、だんだんあらが出てこないわけはない。中将がこう言って嘆き溜息をついた時に、ありきたりの結婚失敗者ではない源氏も、何か心にうなずかれることがあるか微笑を浮べていた。今言った一つくらいの芸ができるというほどの取り柄もできない人も世の中には存在する。そんな所へは初めからだれもだまされに行きませんよ。何も取り柄のないのと、完全であるのとは同じほどに少ないもの。上流に生まれた人は大事にされて、欠点も目だたないで済みますから、その階級は別ですよ。中の階級の女によってはじめてわれわれはあざやかな、個性を見せてもらうことができるのだと思う。またそれから一段下の階級にはどんな女がいるのだか、まあ私にはあまり興味が持てないと言って、愛想を振りまく中将に、源氏はもう少しその観察を語らせたく思った。
2024.06.04
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ13〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。昔、まだ重要な役をしてないとき、一人の愛人があったが、容貌は良くない女だったので、若い浮気な心には、この人とだけで一生を暮らそうとは思わず、妻とは思っていたが物足りなく外に愛人を持っていたが、とても嫉妬するので、何ともいやな思いで、穏やかに見ていてくれればよいのにと思いながらも、あまりにやかましく言われ、自分のような者をどうしてそんなにまで思うのだろうとあわれむような気になる時もあり、自然に身持ちが修まるようだった。この女性というのは、自身にできぬものでも、この人のためならばと努力してかかり、教養の足りないところも自身で努力し補い、恥のないようにと心がけて、行き届いた世話をしてくれて、私の機嫌を損ねないよう心を尽くし表面に出さなくなり、私だけには柔順な女になって、醜い容貌なんぞも私にきらわれまいとして化粧に骨を折って、この顔で他人に逢っては、良人の不名誉になると思っては、遠慮して来客にも近づかなくなり、とにかく賢い妻になり、同棲するうちに、彼女の利巧さに彼の心は引かれて。ただ一つ嫉妬癖、それだけは彼女自身どうすることもできない厄介なもので、みじめなほど私に参っている女なんだから、二度と嫉妬をしないように懲らしめる仕打ちに出ておどして嫉妬を改めさせよう、もうその嫉妬ぶりに堪えられない、いやでならないという態度に出たら、これほど自分を愛している女なら、うまく成功するだろうと、そんな気で、ある時にわざと冷酷に出して、女がおこり嫉妬し出す時、あさましい事を言うなら、どんな深い縁で結ばれた夫婦の中でも、この関係を破壊してよいのなら、今のような推量でも何でもするがいいと言ってやった。
2024.06.13
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ2〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。嵯峨(さが)天皇の皇子、源融(みなもとのとおる)の左大臣の子息たちは宮中の御用をするよりも、源氏の宿直所への勤めのほうが大事と考えていた。そのうちでも宮様腹の中将「頭中将の実母(左大臣の正妻)」は最も源氏と親しくなっていて、遊戯をするにも何をするにも他の者の及ばない親交ぶりを見せた。大事がる舅の右大臣家へ行くことはこの人もきらいで、恋の遊びのほうが好きだった。結婚した男はだれも妻の家で生活するが、この人はまだ親の家のほうにりっぱに飾った居間や書斎を持っていて、源氏が行く時には 必ずついて行って、夜も、昼も、学問をするのも、遊ぶのもいっしょで、謙遜もせず、 敬意を表することも忘れるほど仲よしになっていた。五月雨がその日も朝から降っていた夕方、殿上役人の詰め所もあまり人影がなく、桐壼も平生より静かな時に、灯りを灯していろいろな書物を見ていると、置き棚にあったその本を取り出した。それぞれ違った色の紙に書かれた表面を覆っている手紙の殻の内容を頭中将は見たがった。無難な所を少しは見せてもいい。見苦しいのがあるからと源氏は言い、見苦しくないかと気になさるのを見たいのですよ。平凡な女の手紙なら、私には私相当に書いて下さるからいいんです。特色のある手紙で、怨みを言っているとか、ある夕方に来てほしと書いて来る手紙で、そんなのを拝見できたらおもしろい。
2024.06.02
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ6〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。宮仕えをして思いがけない幸福のもとを作ったりする例も多いと、左馬頭(さまのかみ)が言うと、それでは何でも金持ちでなければならないと源氏は笑っていた。あなたらしくない事を口にするものではありませんよと、中将は軽く注意を促すように言った。左馬頭はなお話し続けた。家柄も現在の境遇も一致している高貴な家のお嬢さんが平凡な人であった場合、どうしてこんな人ができたのかと情けないことだろうと思うと話す。そうではなくて地位に相応しくすぐれたお嬢さんであったら、それはたいして驚きませんね。当然ですもの。私らにはよくわからない社会の事ですから上品は省く事にしましょう。こんなこともあります。世間からはそんな家のある事なども無視されているような寂しい家に、思いがけない娘が育てられていたとしたら、発見者は非常にうれしいでしょう。意外であったという事は十分に男の心を引くカになる。父親がかなり年寄りで、醜く肥った男で、見掛けの姿のよくない兄を見ても、娘は知れたものだと軽蔑している家庭に、思い上がった娘がいて、歌も上手であったりなどしたら、それは本格的なものではないにしても、ずいぶん興味が持てるだろう。完全な女の選択には入りにくいでしょうと言いながら、同意を促すように式部丞の方を見ると、自身の妹たちが若い男の中で相当な評判になっていると思った。
2024.06.06
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ9〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。横を向いて一人で思い出し笑みを浮べたり、かわいそうなものだなどと独言を言うようになった。そんな時に何なんですかと突っ慳貧(つっけんどん)に言って自分の顔を見る細君などはたまらないではないか。ただ一概に子供らしくておとなしい妻を持った男はだれでもよく仕込むことに苦心するものである。たよりなくは見えても次第に養成されていく妻に多少の満足を感じるものだ。一緒にいる時は可憐さが不足を補い、それでも済むでしょうが、家を離れている 時に用事を言っても何もできないような。遊戯も風流も主婦としてすることも自発的には何もできない、教えられただけの芸を見せるにすぎないような女に、妻としての信頼を持つことはできない。だからそんなのもまただめで、平生はしっくりといかぬ夫婦仲で、淡い憎しみも持たれる女で、何かの場合によい妻であることが痛感されるのもあると、こんなふうな通な左馬頭にも決定的なことは言えないと見えて、深くため息をついた。だからもう階級も何も言いません。容貌もどうでもよく、片よった性格でさえなければ、まじめで素直な人を妻にすべきだと思う。その上に少し見識でもあれば、満足して少しの欠点はあってもよいことにする。安心のできる点が多ければ、趣味の教育などはあとからできる。上品ぶって、恨みを言わなければならぬ時も知らぬ顔で済ませて、表面は賢女らしくしていても、そんな人は苦しくなってしまうと、すごみをきかせた言葉や身に染む歌などを書いて、思い出してもらえる言葉を残して、遠い郊外とか、まったく世間と離れた海岸とかへ行ってしまいたい。子供の時に女房などが小説を読んでいるのを聞いて、そんなふうな女主人公に同情したものです。
2024.06.09
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ17〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。菊を折って、琴の音も菊もえならぬ宿ながらつれなき人を引きやとめけると言って、よい聞き手が来られた時にもっと弾いて聞かせて上げなさいと、嫌味なことを言うと、女は、木枯らしに吹きあはすめる笛の音を引きとどむべき言の葉ぞなきと言ってふざけ合っている。私がのぞいているのも知らないで、今度は十三絃を派手に弾き出した。才女でないがキザな気がした。遊び半分の恋愛をしてい る時は、宮中の女房たちと交際していたが、時々、愛人として通って行く女ではおもしろくないと思い、その晩のことを口実にして別れた。二人の女を比べると、若い時でもあとの上品な女は信頼が出来ないと感じた。私は年配になっており、今後はまた今まで以上に実質がともわずうわべばかりは嫌になる。男に裏切られた女のわびしさや、落ちそうな笹の上の霰のような艶やかな恋人がいいように思うでしょうが、私の年齢まで、あと七年もすれば分かりますよ、私があえて言うと、風流好みな多情な女には気をおつけなさい。三角関係を発見した時に良人の嫉妬で問題を起こしたりする。左馬頭は二人の貴公子に忠言を呈した。中将はうなずき、少しほほえんだ源氏も左馬頭の言葉に真理がありそうだと思う。あるいは二つともばかばかしい話であると笑っていたのかもしれない。私もばか者の話を一つしようと中将は前置きをして語り出した。私がひそかに情人にした女は、見捨てずに置かれる程度のもので、長い関係になろうとも思わぬ人だったが、馴れていくとよい所が見つかり心惹かれていった。たまにしか行かないけど、女も私を信頼するようになった。愛しておれば恨めしさの起こるこちらの態度だがと、気のとがめることがあっても、その女は何も言わないでいる。久しく間を置いて逢っても始終来る人といるようにするので、気の毒で、私も将来のことでいろんな約束をした。父親もない人だったから、私だけに頼らなければと思っている様子が何かの場合に見えて可憐な女だった。
2024.06.17
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〔67〕人々の容姿と性格 賢い過ごし方「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語の紫式部日記」の研鑽を公開してます。人々の容姿と性格 このついでに、人々の容姿のことをお話ししたら、遠慮がないということになるだろうか。それも現在の人のことを。顔をあわせる人のことは、差し障りがあるし、どうかと思われるような、少しでも欠点のある人のことは、言わないことにする方が賢い過ごし方なのかも。宰相の君は、豊子様でなく、北野の三位(藤原遠度)の娘のほう、彼女はふっくらして、とても容姿が整っていて、才気ある理知的な容貌で、ちょっと見たより、見れば見るほど、格段によくて、かわいらしくて、口元に、気品がただよい、こぼれるような愛嬌もそなわってる。立居振舞いもとても美しく、華やかにみえる。気立てもとてもおだやかで、可愛らしく素直で、こっちが気おくれしてしまうような気品もそなわっている。小少将の君(源時通の娘)は、なんとなく上品に優雅で、二月ごろの初々しいしだれ柳のよう。容姿はとても美しく、物腰は奥ゆかしく、性質なども、じぶんでは判断できないように内気で、ひどく世間を恥ずかしがり、見てはいられないほど子どもっぽい。意地の悪い人で、悪しざまにあつかったり事実とはちがうことを言う人があれば、それを気に病んで、死んでしまいそうなほど、弱々しくどうしようもないところが、頼りなくて気がかりです。
2024.03.06
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ15〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。暗い炉を壁のほうに向げて据え、暖かそうな柔らかい綿が沢山入った着物を、乾かす竹のかごに掛けて、寝室へ入る時に上げる几帳の布も上げて、こんな夜にはきっと来るだろうと待っていた様子が見え、そう思っていたのだと私は得意になったが、妻自身はいない。何人かの女房だけが留守をしていて、父親の家へちょうどこの晩移って行ったという。艶な歌も詠んでおらず、気のきいた言葉も残さずに、じみにすっと行ったので、つまらない気がして、やかましく嫉妬をしたのも私にきらわれるためだったと、むしゃくしゃするので、とんでもないことまで忖度した。しかし考えてみると用意してあった着物なども普通よりよくできてるし、その点では実にありがたい。別れた後のことまで考えて話した。彼女は別れるものか慢心を抱き、それからは手紙で交際を姶めたが、私の元へ戻る気がうかがえるし、全く知れない所に隠れる素振りもないし、反抗的な態度を取ろうともせず、前のような態度では我慢ができない、すっかり生活の態度を変えて、一夫一婦の道を取ろうと言っている。暫らく懲らしめてやる気で、一婦主義になるとも言わず、話を長引かせていたら、精神的に苦しんで死んでしまったので、責められて当然である。家の妻というものは、あれほどの者でなければならないと今でもその女が思い出される。風流ごとにも、まじめな間題に話し相手にすることができた。また家庭の仕事はどんなことにも通じており、染め物の立田姫(日本の秋の女神)にもなれたし、七夕の織姫にもなれたと語った左馬頭は、いかにも亡き妻が恋しそうであった。技術上の織姫でなく、永久の夫婦の道を行っている七夕姫だったらよかった。立田姫もわれわれには必要な神様で、男に良くない服装をさせておく細君はだめで、そんな人が早く死ぬんだから、いよいよ良妻は得がたいということになる。
2024.06.15
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ3〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。初めからほんとうに秘密の大事な手紙などは、だれが盗んで行くか知れないので棚などに置くわけにもいかない、だがこれはそれほどの物でもないのだから、源氏は見てもよいと許した。中将は少しずつ読んでから、いろんなのがありますねと想像だけで、だれとかかれとか筆者を当てようとする。上手く言い当てるのもあるが、全然見当違いのことを言いながら、それであろうと深く追究したりする。そんな時に源氏はおかしく思いながらも、あまり相手にならぬようにして、上手く皆を中将から取り返した。あなたこそ女の手紙をたくさん持っているでしょう。少し見せてほしいものだ。そのあとなら棚のを全部見せてもいい。あなたの御覧になる価値のあるものはいないでしょうと、こんな事から頭中将は女についての感想を言い出した。これならば完全だ、欠点がないという女は居ないと私は今やっと気付いた。ただ上っつらな感情で達者に手紙を書いたり、こちらの言うことに理解を持っているような利巧な人もたくさんいるので、そこを長所として取ろうとすれば、きっと合格点に入るという者は中々いないと思う。自分が少し知っている事で得意になって、 ほかの人を軽蔑する事のできる厭味な女が多い。
2024.06.03
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ12〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。決まった形式を必要としないものは、しゃれた形をこしらえたものなどに、これはおもしろいと思わせられて、いろいろなものが、次から次へ新しい物がいいように思われるが、ほんとうにそれがなければならない道具というような物を上手にこしらえ上げるのは名人でなければできない。また絵所に幾人も画家がいるが、席上の絵の描き手に選ばれ大勢出る時は、どれが良いのか悪いのか分からないが、非写実的な蓬莱山や荒海の大魚や、唐にしかいない恐ろしい獣の形などを描く人は、勝手ほうだいに誇張したもので人を驚かせて、それは実際にほど遠くても通る。普通の山の姿や水の流れとか、自分たちが日常見ている美しい家や何かの図を写生的におもしろく混ぜて描き、我々の近くにある高くない山を描き、木をたくさん描き、静寂な趣を出したり、あ るいは人の住む邸の中を忠実に描くような時に上手と下手の差がよくわかるものだ。字でもそうである。深味がなく、あちこちの線を長く引いたりするのに技巧を用いたものは、ちょっと見がおもしろいようでも、それと比べてまじめに丁寧に書いた字で見栄えのせぬものも、二度目によく比べて見れば技巧だけで書いた字よりもよく見えるものだ。ちょっとしたことでもそうである、まして人間の問題なので、技巧でおもしろく思わせるような人には永久の愛が持てないと決めている。好色がましい多情な男に思われるかもしれませんが、 以前のことを少しお話ししましょうと言って、左馬頭は膝を進めるが、源氏も目をさまして聞いていた。中将は左馬頭の見方を尊重すると見せて、頬杖をついて正面から相手を見ていた。坊様が過去未来の道理を説法する席のようで、おかしくないこともないのであるが、この機会に各自の恋の秘密を、持ち出されることになった。
2024.06.12
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ1〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。源氏物語2帖帚木(ははきぎ)を研鑽。桐壺帝が命名した光源氏、すばらしい名で、青春を盛り上げてできたような人と想像できる。また自由奔放な好色生活が想像されるが、実際はそれよりずっと質素な心持ちの青年だった。その上恋愛という一つのことで後世へ自分が誤って伝えられるようになってはと、異性との交際を極力内輪にしていたのであるが、ここに書く話のような事が伝わっているのは世間のうわさからおもしろがって広まる。自重してまじめな風体の源氏は恋愛風流などには疎かった。好色小説の中の交野の少将(中納言なる人物が交野の鷹狩りが縁で大領の娘と契るが、以後訪れないため娘は投身自殺をはかるという物語)には笑われていたであろうと思われる。中将時代にはおもに宮中の宿直所に暮らしていた時、たまにしか舅の左大臣家へ行かないので、左大臣は光源氏が別に恋人を持っているかのような疑いを受けていた。舅の左大臣は世間にざらにあるような好色男の生活はきらいであった。まれには風変わりな恋をして、たやすい相手でない人に心を打ち込んだりする欠点はあった。梅雨のころ、帝の謹慎日が幾日かあって、帝の傍に仕える大臣は家へも帰らずに皆宿直する。こんな日が続いて、源氏の御所住まいが長くなった。大臣家ではこうして途絶えの多い婿君を恨めしくは思っていたが、やはり衣服その他贅沢を尽くした新調品を御所の桐壼へ運ぶのに飽きることはなかった。
2024.06.01
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「夜這いでもしているように見えただろうか?」 「中国上海写真ライフ」では、雲南昆明の写真を公開しています。昆明22時36分発大理行き列車は初めての寝台列車だった。話し声や笑い声、いびき等の雑音が聞こえ、中々眠れなかった。こんな時に酒でもあれば、気がまぎれもするがと思いながら、ツアー客の中に酒を持っている人がいないか、ベットより降りたところ、他の人も眠れないのか通路で立ったまま話をしていた。結局、2時頃になっても3時頃になって、うとうとっと眠りかかると、隣のベットの若い女性の大きな「いびき」に眠れない。またベットから降りて隣のベットへ上っていき、身体を軽く揺り動かす。3段目の人にも同じようにするが、知らない人が見たら、夜這いでもしているように見えただろうか?朝眠たい目を擦りながら、洗面所に行ったが人でいっぱいだった。
2009.06.15
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ19〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。男に永久性の愛を求めない態度に出ると完全な妻になれない。左馬頭の話の嫉妬深い女も、思い出としてはよいが、今暮らす妻なら堪らなく、嫌になってしまう。琴の上手な才女というのも浮気の罪がある。私の女も本心の見せられない点に欠陥がある。どれがいちばん良いとも言えない事は、人生そのものです。何人かの女から良いところを取り、悪いところは省いたような、そんな女はどこにもいない。鬼子母神の娘で、毘沙門天の妻吉祥天女を恋人にしようと思うと、仏法臭く困ると中将が言ったので皆笑った。式部の所にはおもしろい話があるだろう、少しずつでも聞きたいものだと中将が言い出す。私どもは下の下の階級で、面白い事はないと式部丞は話を断っていたが、頭中将が本気になり、早くと話を責め立てるので、どんな話をしたら良いか考えたが、まだ文章生時代のことで、私はある賢女の良人になり、左馬頭の話のように、役所の仕事の相談相手にもなり、私の処世の方法なんかについても役だつ事を教えてくれた。学問は博士は恥ずかしいほどで学問の事では、前で口が利けなかった。ある博士の家へ弟子になり通っていた時に、娘が多くいる事を聞いていたので、機会をとらえて接近してしまった。親の博士が二人の関係を知るとすぐに杯を持ち出し、白楽天の結婚の詩を歌ってくれたが、実は私は気が進まなかった。 ただ博士への遠慮でその関係はつながっていた。先方では私を気に入り、よく世話をして、夜分寝ている時にも、学問のつくような話をしたり、官吏としての心得方を言ってくれた。手紙は皆きれいな漢文で、仮名なんか一字も混じってない。良い文章を送ってくるので別れ難く、今でも師匠の恩をその女に感じるが、そんな細君を持つのは、学の浅い人間や、間違いだらけの生活をしている者には堪らない事だとその当時思っていた。また二人のような優れた貴公子方には必要はないだろう。
2024.06.19
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「南京事件10」 「中国写真ライフ」では、江蘇省南京「南京大虐殺記念館」の写真を公開しています。上の絵の写真は虐殺を始めたところの1シーンだが日本皇軍で使用されていた機関銃は九九式軽機関銃。1分間に550発を発射させる事ができるが装弾可能は30発なので何度も装弾しなければならない。1ヶ月余りの期間、南京市内を巡回して残党兵を射殺するだけでも大変な精神的苦痛を受けるだろう。その前に残党兵は戦意を喪失して士気が下がり白旗を掲げて投降して来たのではないだろうか。中国の映画やテレビでは、投降した便衣兵を集め虐殺に及ぶシーンを延々と映し出しているが当時の日本皇軍の機関銃では延々と射撃できない。中国側が問題にしているのは日本の残虐行為だけで南京攻略までに至った前後関係には口を閉ざしている。日本人が忘れ去ろうとしている。または全く知らない中国軍による日本人居留民の虐殺「通州事件」の事を。中国の居留区に暮らす大勢の日本人を虐殺した。「通州事件」日本の世論を奮い立たせ日本皇軍を動かし南京攻略に踏み切り命を下したが上海で戦死者が続出した。下の写真は「支那事変」で皇軍連戦勝利の「画報」である。
2012.03.23
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源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ18〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。久しく訪ねて行かなかった時分に、ひどい事を私の妻の家の方へ出入りする女の知人を介して言わせた。私はあとで聞いた事だが、そんなかわいそうな事があったとも知らず、心の中では忘れないでいながら手紙も書かず、長く行きもしないでいると、女はずいぶん心細がり、私との間に小さな子供もあり、煩悶した結果、撫子の花を使いに持たせたところ、中将は涙ぐんでいた。どんな手紙を書いたのかと源氏が聞いたところ、なに、平凡なものですよ。山がつの垣は荒るともをりをりに哀れはかけよ撫子の露と送った。私はそれで行く気になり行って見た。穏やかなものなんですが、少し物思いにふける顔をして、秋の荒れた庭をながめながら、虫の声と同じような力のない様子で見ているのは、小説のようで、咲きまじる花は何れとわかねどもなほ常夏にしくものぞなきと、子供の事は言わずに、母親の機嫌を取った。打ち払ふ袖も露けき常夏に嵐吹き添ふ秋も来にけりと、こんな歌をはかなそうに言って、正面から私を恨む素振りもない。うっかり涙を零しても恥ずかしそうに誤魔化してしまう。恨めしい理由をみずから追究して考えていくことが苦痛らしく、私は安心して帰って来てしまい、 またしばらく途絶えているうちに消えたようにいなくなってしまった。まだ生きていれば相当、苦労をしているだろう。私も愛していたから、私をしっかり離さずにつかんでいてくれたなら、そうしたみじめな目に逢いはしなかった。長く途絶えて行く事もせず、妻の一人として待遇のしようもあった。撫子の花と母親の言った子もかわいい子なので、何とか捜し出したいと思っていたが、今だに手がかりがない。素知らぬ顔をして、心で恨めしく思っていた事も気付かず、私は愛していたが一種の片思いと言える。もう今は忘れかけているが、あちらではまだ忘れられずに、今でも時々は辛い悲しい思いをしているのだろう。
2024.06.18
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源氏物語〔1帖桐壺21〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語1帖桐壺の研鑽」を公開してます。臣下の列に入れて国家の柱石にすることがいちばんよいと決めて、以前にもましていろいろの勉強をさせた。大きな天才らしい所が現われてくると人臣にするのが惜しいという気持ちになったが、親王にすれば天子に変わろうとする野心を持つような疑いを当然受けそうにお思われた。上手な運命占いをする者に尋ねても同じような事を言うので、元服後は源姓を賜わって源氏の何がしにしようと決めた。年月がたっても帝は桐壼の更衣との死別の悲しみを忘れることができなかった。慰みになるかと思い美しいと評判のある人などを後宮へ召いたこともあったが、結果はこの世界には故更衣の美に準ずるだけの人もないという失望を味わうことになっただけである。そうしたころ、先帝桐壺帝の従兄あるいは叔父君桐壺帝の父か兄の第四の内親王で美しいことをだれも言い、母君の后が大事にしている方のことを、帝のそばに奉仕している典侍は先帝の宮廷にいた人で、后の宮へも親しく出入りし、内親王の幼少時代も知り、現在でも顔を拝見する機会が多く帝へ話した。お亡れになった御息所の容貌に似た方を、三代も宮廷にいた私すらまだ見たことがないのに、后の宮様の内親王様だけがあの方に似ていることにはじめて気がつき、とても美しい方です。もしそんなことがあったらと大御心(おおみごころ)が動いて、先帝の后の宮へ姫宮の入内のことを懇切に 申し入れた。后は、そんな恐ろしいこと、東宮のお母様の女御が並み外れな強い性格で、桐壷の更衣が露骨ないじめ方をされたと話はとん挫していた。
2024.05.25
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