門外漢のねごとたわごとひとりごと

門外漢のねごとたわごとひとりごと

2015.11.07
XML
カテゴリ: その他芸術関連
 “東路の 佐野の舟橋 かけてのみ 思い渡るを 知る人ぞなき” 

『後撰和歌集』にある “源 等(みなもとのひとし)” という人の和歌です。

何故唐突にこんなことを書いているかと言うと、先日初めてその歌が意匠になっている国宝の作品を観てきたからです。

その国宝作品は『舟橋蒔絵硯箱』という本阿弥光悦作とされている、斬新な形がユニークな硯箱。

その硯箱の蓋の意匠に、この和歌の言葉が順序をばらして散りばめられているのです。

その文字は本阿弥光悦の書とされていて、その書を写し取って銀の板を切り抜いて加工が施され貼り付けてある。
  • C0002026.jpg
その文字は正確には “東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知人そ なき” と21文字が散らされているのです。

ここで気が付くのが、不思議なことに “舟橋” の文字が意匠されていないことです。

ただでさえ文字がばらばらに散らされていて、元和歌を分かり難くしている上に、この歌の重要な要素である “舟橋” の文字を意図的に抜いて制作されている。



 “舟橋” の文字をわざと省略させているのは、この硯箱の蓋のデザインを見ればわかるようになっている。

その金蒔絵の蓋には大胆にも、黒々とした鉛の板で水辺に架かる橋がデザインされていて、その下の川面には川舟が数艘あしらわれているのです。

金蒔絵作品に鉛の板を合わせたのは光悦が初めてだと言われている。

この国宝硯箱、本阿弥光悦自身がどの程度関与したのかは定かではないらしいが、プロデューサー光悦として古典からの主題選定、大胆なデザインそして高度な技術などを指導したことは明らかで、光悦作品の蒔絵の中で最も光悦らしさの出た作品で白眉とされているのは周知のところです。
  • L_C0008663.jpg
いまこの国宝硯箱が京都国立博物館で展示されています。

写真でみた時はかなり大きなものに思えましたが、実際には意外にも小さなものでした。

因みに、『後撰和歌集(ごせんわかしゅう)』は『古今和歌集』に次いで二番目にできた勅撰和歌集で、村上天皇の下命によって編纂されたものです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2015.11.07 17:58:58
コメント(2) | コメントを書く
[その他芸術関連] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

smiling drunkard

smiling drunkard

Calendar

Favorite Blog

岡崎体育氏の快作「… riverside1040さん

【重要なお知らせ】I… 楽天ブログスタッフさん

Comments

smilingdrunkard@ Re[1]:今回は早々と中止の連絡が…(11/14) 浅野稔さん ーーーーー わたしも体力の衰えは感…
smilingdrunkard@ Re[1]:滅多に買わない展覧会図録だが、これは…(11/04) 幹事コンさんへ ----- 1点1点観ていると、…
幹事コン@ Re:滅多に買わない展覧会図録だが、これは…(11/04) 私も滅多に図録は買いませんが、この図録…
smiling drunkard @ Re[1]:安堵した! 正常に作動してくれた…(10/06) 幹事コンさんへ ----- レコードプレーヤー…
幹事コン@ Re:安堵した! 正常に作動してくれた…(10/06) レコードプレーヤー、私は今も使ってます…

Freepage List


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: