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August 19, 2012
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カテゴリ: 政治・経済

続き

サムスン側弁護団は、執拗にアップルの秘密を暴き、独自性や先進性に彩られたジョブズ神話に疑義を投げかける法廷戦術を続ける。ソニーに続く攻撃の材料に使われたのは、三菱電機だった。

8月13日から始まったサムスン側弁論。アップルがiPhoneなどの画面を操作する革新的な技術としてアピールした「マルチタッチ」について、サムスンは「三菱電機が先に開発したものだ」と主張した。


サムスン側は三菱電機の北米開発拠点「MERL」(マサチューセッツ州)が2001年に開発した「ダイヤモンド・タッチ」技術に関わった担当者を証言台に立たせた。

「ダイヤモンド・タッチ」は、テーブル状の画面の上で、ペンやキーボードを使わずに指で直接、文字や線を書いたり、2本の指で表示しているものを拡大したりできる。試作機を大学や研究機関に公開し、販売もしたという。

担当者は「2003年にアップル本社でも『ダイヤモンド・タッチ』を説明した」と証言。これを受けてアップルは質問にまわり、三菱がアップル本社に当時持ち込んだ「ダイヤモンド・タッチ」に、画面に表示されたものを指で拡大する機能があったかどうか疑問が残ると強調した。

ただ、iPhone開発が04年に始まったことを考えると、三菱の技術をアップルが取り込んだかもしれないという印象を陪審員らが持った可能性もある。

法廷で繰り広げられた激しい応酬を受け、コー判事は15日、アップルとサムスン双方の弁護士に語りかけた。「今が和解の時です」。この裁判の結果が「両社にリスクをもたらす可能性がある」と考えた判事は、陪審員が評決を下す前に、和解の可能性を探るよう提案したのだ。両社はすでに公判前に2回にわたって首脳同士が会談。判事の勧告により電話でも協議したが、結局折り合えなかった。



「つぶしてやる」。アップルを対サムスン訴訟に駆り立てたのは、生前のジョブズ氏が07年以来、抱き続けていた「怒り」だった。この年の11月、米グーグルが携帯電話用の無償OS「アンドロイド」を発表。ジョブズ氏は盟友と信じてグーグルのエリック・シュミット会長(当時CEO)を社外取締役に受け入れていただけに「裏切られた」と強く悔やんだ。彼の強烈な怒りの矛先は最終的に、アンドロイドを搭載したスマホを売り出したサムスンにも向けられたのだ。



「かえって我々の宣伝になるんじゃないですか」。11年4月。アップルから提訴された2週間後、サムスン電子の役員は笑顔を見せた。あちこちの事業部からも同じような趣旨の発言が漏れ伝わってくる。サムスンと取引がある日本メーカーの幹部は当時、「天下のアップルに訴えられて、そんな余裕を持てるはずないだろう」と耳を疑った。

しかし、サムスンは巨大な競争相手にもたじろがない。背景には、多くの主力事業を米国や日本メーカーの後追いで育て、成功につなげたことから来る信念がある。

「我々は得意分野に資源を集中して世界市場を狙うファストフォロワー(迅速な追随者)だった」。半導体や液晶パネルを草創期から育て、CEOも務めた李潤雨(イ・ユンウ)常任顧問はこう言ったことがある。サムスンは三洋電機や日本電気(NEC)との合弁を通じて技術を導入し、東芝からはNAND型フラッシュメモリーの技術開示を受けた。薄型テレビやパネルも日本勢より後発だが、今や世界最大手にのし上がった。

たとえライバル企業の商品でも、優れていれば「良いモノは良い」と素早く割り切り、直ちに開発に取りかかる。後発事業を短期間で離陸させ、あっという間にシェアを奪うスピードを支えるのは、内部に強い電子部品部門を抱える事業の構造だ。

工場などの資産を持たないアップルは4~6月期に純利益が88億2400万ドル(約6900億円)となり、両社の収益力の差はいまだ大きい。だが、サムスンには内製部品を使い、アップルの端末更新の間隙を突く形で新モデルを次々に投入するスピード感がある。

たとえばスマホの「ギャラクシー」では消費者の目に直接触れ、特徴としてアピールしやすいパネルに、いち早く有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)を搭載。パネルの大きさも機種を追うごとに大型化し、一貫して3.5型のiPhoneとの違いを打ち出した。


サムスンは2010年6月に「ギャラクシーS」でスマホに本格参入。今年5月に投入した「ギャラクシーS3」は4.8型の大画面が売りで、2カ月で1000万台を売るヒット商品となった。本格参入からたった2年だが、世界販売台数では4~6月期まで2四半期連続でアップルを抑え、首位に立っている。スマホのマーケティングを担当する李英熙(イ・ヨンヒ)専務は「素早く意思決定し、(発売の)最後の瞬間に至るまで仕様を変更する大胆さ」で勝負をかけるという。

アップルに販売台数で追いついたことで、サムスンはたとえ後発でもやり方次第で互角に戦えるという自信をいっそう深めた。12年4~6月期の連結営業利益は前年同期比79%増の6兆7241億ウォン(約4600億円)と四半期ベースの過去最高を更新。スマホをけん引役としてIT機器部門だけで4兆1900億ウォンと全体の6割を稼ぎだす。

こうなると、アップルとしてもサムスンを「模倣者」と呼び続けるだけでは済まなくなる。サムスンは純然たる脅威であり、法廷闘争のみならず、商品開発でも全力で対抗していく必要がある。9月とされる次期iPhoneの発表が、アップルにとってきわめて重要な節目となる。

今回の米国裁判の評決は、サムスンに多額の損賠賠償を要求。ダメージとなったのは確かだ。だが、対象は旧型製品。販売が差し止められれば、一部の在庫がたまる事態は避けられないが、致命傷とはならない見通しだ。

むしろ、法廷での厳しいやり取りが毎日のように報道された結果、サムスンの知名度は世界的に上昇した。「アップルと対峙して競争する存在」であるという印象が世界中の消費者に植え付けられた点は見逃せない。




たとえ「コピーキャット」呼ばわりされても、真に受ける必要はない。「失うものがない」のがサムスンの強みだ。

法廷では「オリジナリティー」や「先進性」というアップルのイメージを揺さぶる一点に注力。細かな証拠や証人を並べ立ててアップルにしたたかに立ち回った。その結果、ベールに包まれていたアップルの商品戦略や、サムスンの商品をジョブズ氏らが意識している様子など、重要な「秘密」を引き出すことに成功した。

アップルの幹部も次々に登場した法廷は、サムスンにとって最大のライバルの力量を肌身で確かめる貴重な場にもなったはずだ。

かたや、アップルは暴露合戦に持ち込むサムスン側のペースに引きずり込まれた印象が否めない。アップル関係者からは「スティーブが生きていたら、こんな状況は望まなかったはずだ」との怨嗟(えんさ)の声もあがる。

「争ったのは賠償金の額や特許の問題ではなく、価値観だ。盗むことは許されない」。24日の評決後、アップルは様々なリスクを承知であえてサムスンとの法廷闘争に打って出た狙いを声明で改めて訴えた。対するサムスンは「この評決はアップルの勝利ではない。米国の消費者の損失だ」とコメントした。



あまりにも対照的な立場にあるIT2強が折り合えるはずはなく、法廷と市場で二正面作戦が今後も続くことになる。

(ソウル=尾島島雄、シリコンバレー=岡田信行)





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最終更新日  August 29, 2012 09:53:43 AM


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