2007年01月19日
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■住友不動産の株価

 ある日、某マネーポータルサイトでその日の日経平均の終値を見たついでに、幾つかの銘柄のコード番号を叩いてみたが、指が動いたその先に、住友不動産(8830)の株価があった。3年くらい前に、株式投資したいという知人に教えた数銘柄(業種をばらした無難なミニ・ポートフォリオ)の中に、この銘柄が入っていたので、時たま思い出すのだ。

 同社の最近の株価をご存じない読者には、是非、マネーポータルサイトではなくマーケットスピードで(!)見て欲しいが、筆者が見た時点では、株価は4000円の少し下の水準だった。この銘柄は、ほんの3年ほど前は1000円に満たない株価だったのだが、昨今の不動産市況の回復(特に首都圏のオフィス物件の価格、家賃)を背景に、急上昇した。知人のポートフォリオには多少の貢献ができたわけだが、自慢になるかというと、そうでもない。正確な株価は忘れたが、株価2000円の手前で、どうしたらいいかと訊かれたときに、「もう降りた方がいいのではないか」と言ったことを覚えている。だから、今の株価に対する気分は、いくらかほろ苦い。

 ちなみに、同じ大手不動産会社では、三井不動産、三菱地所が共に3千円前後の株価で推移しているが、筆者の、これら三銘柄の株価に関する過去のイメージでは、三井不動産、三菱地所の方が、住友不動産よりも株価の高い会社ということだし、一株純資産を見ても、三井・三菱の方が大きいのだが、住友不動産の方が勢いよく上昇した。

 筆者は、不動産アナリストではないので、ここで業績の分析はしないが、「会社四季報」の最新号の住友不動産の項を見ると、「都心立地の新鋭ビル多い」とある。最近の不動産市況の傾向が大いに追い風になったことが想像できる。

 この株価を見ながら、二つのことが頭に浮かんだ。

■鉱山会社の株価形成

 一つは、株式というもののレバレッジ効果についてだ。どういうレバレッジかというと、ある種の純粋な(専業という意味で)鉱山会社の利益の構造を考えていただくと分かりやすい。



 ここで、この鉱物の市場価格が、ほんの5%上昇すると、この会社の粗利益は、以前の100%増、つまり2倍となる。鉱物の産出価格の上昇が、1割なら、上昇率は200%、粗利益は3倍、2割なら、上昇率は400%で、粗利益は当初の5倍にもなっている。これに正確に比例するとは限らないが、株価も相当に上昇するだろう。

 つまり、鉱山会社の株価は、この会社が産出する鉱物価格の変化に対して大きなレバレッジ効果を持っている、ということなのだ。

 これは、金価格の上昇が話題になる場合に、金の現物を買うよりも、金鉱会社の株を買う方が、投下資本に対して、金価格の上昇メリットを大きく受けやすいことがある、というような文脈でよく語られる話で、株式投資にあっては初歩的な常識の一つだ。

 それでは、仮に、金に投資する場合、現物で金を買うのと、商品先物で金を買うのと、金鉱会社の株を買うのとでは、どれが有利なのだろうか。

 金の現物、というのは、実際に金を所有する満足感を味わうことができるとしても、投機として考えるなら、あまり効率は良くない。金塊自体は、所有している間に、何も価値を生まないから、単に、ある種の価格リスクを供給してくれるに過ぎない。

 商品先物の場合には、株式の信用取引が子供に見えるくらいの大きなレバレッジ効果があるが、その分、値下がりした場合の損失拡大も大きい。当初の証拠金だけでは損が済まないこともあるだろうし、この参加者がもてあますほど大きなレバレッジ効果は、多くの悲劇の原因にもなってきた。

 一方、金鉱山の株は、商品先物ほどではないとしても、レバレッジ効果が大きいが、このレバレッジ効果は、もちろん、逆方向にも働く。これは、たとえば、先の例で、産出物の価格が110から100に落ちる場合に、利益が3分の1になってしまうようなケースを考えると、ご理解いただけるだろう。ただし、株式投資のいいところは「有限責任」だ。つまり、金の価格が大きく下がっても、金鉱会社株への投資は、最悪ゼロになるだけで、投資額以上の損失はもたらさない。

 また、金鉱会社の経営者に対して好意的に解釈すると、金価格が限界的な産出コストを下回るようになると、金の産出を減らしたり、中止したりして、コストをカットするだろうし、理屈の上では、金価格に回復の見込みなし、ということになれば、会社を解散して、残余財産を配分してくれるかも知れない。

 もちろん、産金会社が無駄の多い経営を行って、株主の資本を余計に喰ってしまう、というような事態も可能性として想像できるが、金の価格上昇に参加するという意味では、産金会社の株を買うという方法には、検討に値する魅力があると思う。

 なお、このケースを考えたついでに触れておくが、先の鉱山会社で、たとえば鉱物の価格が10万円ずつ上昇していくケースを考えると、徐々に増益の「率」は低下することがお分かり頂けるだろう。この過程では、レバレッジの効果が落ちるし、また、同じ増益率を維持しようとすると、産出物の価格はより一層大きく上がらなければならない、ということが分かる。

 日本企業は、連続増益を続ける傍らで、徐々に増益率が低下してきたように見えるが、その背景には、これに似た(純粋な鉱山よりももう少し複雑だが)算術的事情がある。



■ヘッジとしての株式投資

 住友不動産の株価を見て、鉱山会社の株価の話を思いついた理由は、実は、金鉱会社の株が金価格上昇のヘッジに使えるように、不動産会社の株は、不動産価格のヘッジに使えるのではないか、と思い至ったからだ。考えてみると、当然のことだが、これは検討してみる価値があるかも知れないとふと思ったのだ。

 多くの日本人が、かなり背伸びをして、重い住宅ローンを組んでまで、マイホームを買う。こうした人たちの中には、ファイナンシャル・プランニング的には、相当に大きな無理をして買う方が多いのだが、ある程度の財産的基盤ができる前に、無理をしてでも家を取得したいという理由の中に、将来、不動産価格が上昇してしまうのではないかという不安が含まれているとすれば、例えば、金融資産の運用額の一部で、不動産会社の株式を買う、という選択肢があり得る。

 この場合、たとえば3000万円見当の不動産の価格上昇リスクをヘッジするために、3000万円相当の不動産会社の株式を買う必要はない。どのような銘柄かにもよるし、もとより、完全なヘッジになるわけではないが、1割か2割程度で十分な場合もあるのではないかと思う。また、不動産会社の株でなくても、実質的に不動産価格に連動したリスクを持った株はある。たとえば、不良債権問題に苦しんでいた頃の、銀行株がそうだった。

 なお、比較的少額でできるヘッジとしてレバレッジ効果に期待するなら、現在、既に大きく収益が改善した優良不動産会社よりも、もっと限界的な会社の方がいい理屈になる。気分としては、一流会社を買いたくなることが多いが、一流会社も、そうでない会社も、「それなり」の有利不利のない(分からない、と言った方が正確かも知れないが)株価を付けているとするなら、一流でない不動産会社の株を買うのは大いに考えられる選択肢だ。






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最終更新日  2007年01月19日 11時16分44秒
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