2007年09月07日
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 毎月分配型のファンド以外にも、その性質が、行動ファイナンスで扱う概念で説明できそうな金融商品がある。

 たとえば、先のプロスペクト理論によると、人は「元本は100%確保したい」と強くこだわると予想できるが、いわゆる仕組み債を投信の形で小口化した「元本確保型」と謳うようなファンドはこの心理を利用したものだ。

 計算してみると随分不利なオプション価格でこうしたファンドを顧客が購入してくれるのは、何と言っても、彼らがオプション価格を計算できないからだろうが、元本確保という属性に対して高い対価を払ってくれる傾向が影響している。

 また、貯蓄としては有利とはいえない学資保険が売れていたり、多少の貯蓄と健康保険があれば必要ないはずの医療保険(これも顧客から見て大いに不利な賭だ)に加入する人がいたりするのは、本来は色がないはずのお金に色を着けて、先の「メンタル・アカウンティング」を利用する、生命保険会社側のマーケティング戦略によるものといえる。

 行動ファイナンスを応用した商品は、元本確保型投信のように金融工学と合わせ技になっているものが多い。この場合、オプションの適正価値が計算しにくいことが、売り手側の手数料を隠す上で大きな役割を果たしている。オプション価格の理論と計算方法の開発は、俗に「金融工学」と呼ばれるような一連の研究分野の代表的な成果だが、この種の理論は、顧客に分かりにくい形で、金融商品の条件の中に手数料を組み込むことに使われている(「悪用されている」と言っていいだろう)。代表的な悪徳商品は、「EB」と呼ばれる他社株転換付債券で、判断力の乏しい個人投資家に売られている。

 こうした「金融工学型」ともいえる商品は、その条件が顧客側に有利に設計されていることは決してないし、中身の計算が分からない顧客が、実質的にいくら手数料が取られているのか判断することも困難だ。こういう商品を購入すること自体が、顧客が損得判断をできていないことの動かぬ証拠だ。商品の供給側が計算ミスでもしない限り、顧客がこうした商品を買う意味はないことは、それこそ金融工学で分かるはずだ。

 また、株式の売買やFX(外貨証拠金取引)などトレードの刺激は、「依存症」と深く関わっているはずだ。

 何れにしても、毎月分配型ファンド以外にも、「実質的な価値の割に売れている」金融商品/サービスに関して、行動ファイナンスでその説明がつくものや、さらに積極的に、行動ファイナンスを利用(「悪用」と呼んでもいいかも知れない)している例がある。



 しかし、行動ファイナンスが注目する人間の意思決定/行動の非合理的傾向は、個人の行動レベルではなかなか修正されず、加えて、多数の個人が集まる集団では一定のバイアス(たとえば頻繁な分配金を好むような)が安定する傾向がある。

 仮に、伝統的な理論では等価値とされるような(たとえば同水準のリスクで、最終利回りベースの投資利回りが同じ)、ファンドA:「分配金が多くて、償還金が小さいファンド」と、ファンドB:「分配金が少なくて、償還金が多いファンド」があったときに、顧客が正しい必要性以上にAのタイプを好む場合、彼はその好みの差に相当する程度までなら、手数料が高くても、ファンドAに投資するだろう。

 このようなファンドAに関しては、その優位性を、ファンドの売れ行きに活かすこともできようし、手数料の引き上げに使って、収益を増やすこともできる。

 つまり、行動ファイナンスでいうところの人間の「バイアス」は、裏側から見ると、そのまま利潤の源であり、多数の個人を相手にするリテールのマーケットで成功するための儲けの種として、非常に有用だ。また、いわゆる金融工学も、個人相手のマーケットでは、実質的な手数料を隠しつつ、顧客が好みそうな商品を供給する目的に利用されている。
 当初は、たまたま顧客の心理のツボに合致した商品がヒットしただけかも知れないが、近年の運用商品を見ていると、顧客の心理のバイアスを、敢えていえば、意図的に悪用した商品開発や販売が行われている。

 行動ファイナンスの理論自体に罪はない(金融工学についても同様だ)。本来は、金融業者が顧客をたぶらかすためにではなく、投資家が自分のバイアスを意識して、これを克服するために、行動ファイナンスの理論が存在すると筆者は思っている。

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最終更新日  2007年09月25日 19時26分23秒
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