2008年03月21日
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 ■ドル・原油・金
 ■日本株への影響
 ■公的資金は投入されるか
 ■日本株の株価水準

 このコラムでは、これまで当面の相場状況とは関係の薄い、なるべく一般的なテーマを取り上げてきた。だが、たまには、相場の現状を考えてみよう。現在のマーケットを大きく揺るがせているアメリカのサブプライム問題には、ある種の「バブル」の一般論が当てはまるので、将来も振り返る価値があると思う。


 ■二方向に拡がるサブプライム問題

 昨年の暮れぐらいから、筆者は、サブプライム問題は第二ステージに入ったと考えてきた。具体的には、雇用統計に見るアメリカ経済の減速、低調だったクリスマス商戦などから、アメリカの不動産価格の下落が、景気の減速に結びつき、景気悪化を悪材料として株式が売り込まれる段階に入ったと考えた。

 ちなみに、第一段階は、サブプライムローンの証券化商品による金融機関の損失がもたらす流動性の収縮と心理的悪化がアメリカの株価と米ドルを下押しするプロセスだ。この段階も、マーケットには相当のインパクトがあったが、不動産価格の下落は、サブプライム層が購入する物件だけに起こるわけではないし、特にアメリカでは住宅価格の上昇を消費の原資にするメカニズムが広く利用されているから、不動産市況の不調が景気に影響する段階が必ずあるはずだと考えた。



 その後、今年の3月までの印象は、第一段階が意外に長く尾を引いていることと、第二段階の事実の表れが案外遅いことだ。

 サブプライム問題による金融機関の損失は、昨年7月の時点ではバーナンキFRB議長が最大1000億ドル程度だと議会で発言した。しかし、現在、既に2000億ドル以上の損失が発表されているし、最終的に1兆ドルに近いのではないかと推計する声があちこちから出ている。金融機関のサブプライム関連の損失額は、対象の範囲と、時期などによって大きく変動しうるが、当局の当初発表の数倍という日本の不良債権問題のような推移になっている。この問題の全貌がまだ見えきった感じがしないのは、いささか不気味だ。
 相場の問題として考えると、第一段階の問題の悪影響は、金融当局が市場に潤沢に流動性を供給すると、ある程度は、損をした金融機関だけの問題に限定でき、広い範囲の信用収縮に至るような性質の問題ではない。

 だが、第二段階の「景気への悪影響」は、それが起こってしまうと、即効性のある政策対応が難しい。この点は、資産価格の下落とその「負の資産効果」が表れるまでの間にタイムラグがあることと共に、この問題の扱いを難しくしている。現在、日本の株価は非常に景気に敏感で、特に、アメリカの景気と株価に敏感に反応している。今しばらくの間、アメリカの景気指標からは目が離せない状況が続きそうだ。

 ここまでは、サブプライム問題が発生した段階である程度考えることができたが、新たに考えなければならなくなった要因がある。それは、サブプライム・ローンの証券化商品にとどまらず、証券化商品全般に対する疑心の拡大だ。消費者ローンや、自動車ローンなどを証券化した証券化商品でも格付けと価格が下がっているし、新たな商品の組成が難しくなってきている。

 証券化の段階では、通常さまざまな債権のキャッシュフローを束ねて分散投資効果を狙っている。主として個別の要因でデフォルトが起こるような場合には、分散効果が効きやすいのだが、景気の悪化や不動産価格全般の下落のような国中に広く起こるような要因で起こるデフォルトに関しては、リスクの分散効果は働きにくいはずだ。

 サブプライム関連の証券化商品が典型的だが、証券化商品に関する当初のリスク評価は、前者のような状況でのデータを前提に行われていて、後者のような状況をカバーしていなかったのではないかと思われる。そうなると、前者の状況を前提に評価された信用リスクが仮にAAA(トリプル・エー)だったとしても、これを信用してはいけないのではないか、と疑われて当然だ。

 サブプライム問題は、サブプライム以外の住宅ローン証券化商品と共に、住宅ローン以外の証券化商品に対する疑問まで波及してしまったようだ。そして、この疑問は、取り越し苦労ではなく、当然の疑問である。リスクの誤認と共に高価格(高格付け)が流通していたという意味で「証券化バブル」と呼べる状況があったと考えてもいいだろう。景気に対する懸念と共に、「証券化バブルの崩壊」が表面化したのが、現在の状況だ。

 証券化商品全般の信用リスクがより実体に近く評価されるということは、証券化によるファイナンスの縮小を意味する。この信用収縮に対して、FRBの利下げは、投資する側の資金コストを通じてプラスの影響があるから全く無関係ではないが、直接的には十分な効果を持ちにくいだろう。

 また、証券化商品の広範な値下がりは、金融機関の資本の実質的な毀損を意味する。自己資本が制約となって、貸し渋り・貸しはがしなど融資の縮小が起こることは、日本のバブル崩壊後の十数年で経験済みの事態だが、アメリカの金融がこのコースに嵌る可能性が出てきた。FRBによる流動性の供給は、金融機関相互の資金融通市場を通じた、あくまでも資金繰りの支援でしかなく、「損」を取り除いて資本を立て直すものではないから、「アメリカ版貸し渋り」に対して決定的な効果を持ちにくい。

 サブプライム問題は第二段階に入ったが、この第二段階は、景気への悪影響と、証券化バブルの崩壊による信用供与の縮小という共に厄介な二方向に拡がっているようだ。




 株価が下がる一方で、原油先物は100ドルを、金は1000ドルを超え、日本円は1ドル100円を突破した。それぞれが近い時期に大台替わりしたことに特別の必然性はないが、印象的な推移だ。

 為替レートの先行きを見通すことはいつの時代でも難しいが、アメリカの金利が現実にこれだけ低下し、さらに金融緩和に向かうしかないと思われることや、アメリカの金融が混乱して、国際金融の決済通貨及び準備通貨としての米ドルの使い勝手が損なわれつつあることを考えると、米ドルの趨勢的な下落に歯止めがかかるとは思えない。

 また、円は、米ドル以外の通貨に対しては歴史的にも安値圏にあり、日本の景気だけが突出して悪いわけではない以上、円安に誘導する為替介入は正当化されにくいだろう。また、日本政府単独の介入で、ドルの下落が止められるとは想像しにくく、本格的な協調介入も想定しにくい。

 一層の円高を積極的に「予想」しないまでも、そのリスクを「覚悟」する必要はありそうだ。

 原油や金など、商品市況については、個々の商品の需給を洗い直す必要があり、現時点で、筆者には確たる意見があるわけではない。ただ、商品先物市場に米国の年金などの長期の運用資金が流入している(彼らはインフレヘッジが名目なので、一方的に「買い」のサイドから入りやすいはずだ)ことと、こうした一次産品の高騰が不景気と両立しにくいはずであることを考えると、現在の価格が商品それ自体に対する需要の実態に対する以上の価格となっている(つまり、「商品バブル」の)可能性がないとはいえない。特に前者の要因による価格上昇は、資金の流入が止まると剥げ落ちる性質のものなので、要注意だ。



 商品や為替レートと株式を比較すると、株価に対する利益、あるいは資産といった投資価値のアンカーになるものが存在する分だけ、株式の価値は考えやすい。個人の資産運用の立場で考えると、商品はあくまでも「投機の対象として面白いもの」であり(筆者は人が投機を楽しむことに反対ではない)、長期の運用対象としては考えにくい。





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最終更新日  2008年03月24日 15時29分53秒
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