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2010.04.11
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カテゴリ: 株式投資


2010年04月09日 13:23

足元のわが国経済は、中国を中心とするアジア諸国向け輸出に支えられて、緩やかな回復過程を歩んでいる。ただ、「これで、わが国の経済はもう大丈夫」と判断するのは尚早だ。中国のバブル崩壊などによってアジア諸国の景気に陰りが出て、輸出が伸び悩むようなことになると、すぐにわが国経済の先行きに黄色信号がともることになる。突き詰めて考えると、現在のわが国経済の行方は、海外要因次第ということになる。海外投資家が「日本の株式は、典型的な世界景気敏感株」と位置づけているのはよく分かる気がする。

その背景には、人口減少・少子高齢化などの国内の構造的要因に加えて、明確な戦略を持たないわが国特有の事情がある。人口構成の急激な変化に対応できない政府と、企業再編が遅れる産業界、いずれも有効な戦略を持たず、世界経済の動きの翻弄(ほんろう)されるわが国、そうした状況は、ニュー・デクライニング・カントリー(新衰退国)といわれる所以だ。まさに「戦略なき日本の迷路」である。

<国家戦略なき民主党政権>

政権交代に成功した民主党政権の基本的な考え方は「経済の起点は家計」である。政権の主な関心が今年夏の参院選にあることも、そうした考え方の背景になっているのだろう。しかし、家計部門に「子ども手当」を配布することで、少子化に歯止めを掛け、国内の個人消費を盛り上げることができるだろうか。最近の世論調査を見ても、その答えは「ノー」だ。国民の心配の種である、医療、介護、年金の問題を放置したまま「子ども手当」などをもらって、人々の心理が大きく改善するとは考え難い。

むしろ、わが国が持っている技術力などの比較優位性を使って、国民生活の原資となる企業収益を増強する戦略を考える方が有効ではないだろうか。わが国企業が強くなれる環境を整備して、企業部門が稼ぎ出す付加価値を増やし、経済を成長させる道筋を示すことができれば、国民の心理は大きく改善するはずだ。地理的に近いアジア諸国の経済発展を見ると、わが国にとっては、今、大きなチャンスがめぐってきていると考えるべきだ。大きなインフラ投資を必要とする新興国のニーズに、わが国の高い技術で作り上げた製品群をマッチングすることができれば、大きなビジネスチャンスになる。

ただ、新興国向けの輸出ビジネスの競争は急速に激化している。そのハードルを越えるためには、国のリーダーシップが求められる。国が、利害の対立する企業間の調整を行ってコンソーシアムを形成したり、輸入国に対して資金借款を供与する。さらに政府幹部の直接セールスによって、契約締結に寄与することが考えられる。これらは、いずれも日本経済の成長を促進するという明確な戦略に基づいて行われるべきだ。残念だが、現在の民主党政権にはその戦略が見えない。

<企業再編が進まないわが国の産業界>



それにもかかわらず、わが国の企業は経営統合にはあまり積極的ではないようだ。M&Aなどによって企業体力を強化し、世界市場でのポジションを上昇させるよりも、企業の独立性を重視するスタンスが多い。本当にそうしたスタンスで、わが国企業は、これからの国際的な競争に生き残っていかれるのだろうか。有力電機メーカーの経営者にヒアリングした。彼は、まず、サムソンの脅威を強調した。それに加えて、国内の高い法人税率を問題にしていた。確かに韓国そのものといわれるサムスンの実力は顕著で、税金負担の違いは大きい。しかし、企業の規模の利益、人材などの経営資源に関して言えば、企業再編を行う選択肢は十分に考えられるだろう。その方が、はるかに効率的な経営が可能になるように見える。むろん外から見るよりも、当事者には複雑な問題が存在することは理解する。しかし、企業の経営戦略の観点から見ると、企業再編を避けていては、本当の意味での成長戦略は描けないだろう。

<ニュー・デクライニング・カントリーからの脱却>

1980年代前半、英国は「英国病」に苦しんでいた。最近、「英国病」という言葉は、ほとんど耳にすることはなくなった。サッチャーの出現によって、英国は、競争原理への回帰によって病を克服した。英国にできたことは、わが国にもできるはずだ。現在の閉塞感を打ち破ることができれば、わが国は、自然と「ニュー・デクライニング・カントリー」のカテゴリーから外れる。

それを実現するためには、政府も民間企業も虚心坦懐になって、わが国の成長戦略を真剣に考えなければならない。まず、政府は、選挙のことばかりにとらわれず、経済を成長させ、国民を幸福にする政策運営を検討すべきだ。規制緩和、法人税や設備投資の負担軽減を通して、企業を強くすることを戦略の基本とすべきである。また、年金、介護、医療の制度については、一政党ではなく、超党派で国民的な議論を展開すればよい。

もし、民主党政権にそれができなければ、国民は、夏の選挙で容赦なく、民主党に「ノー」を突きつけるべきだ。政権に、成長のための政策立案と執行の能力がないのであれば、率直に意思表示をしなければならない。一方、企業経営者も、企業の独立性に気を取られるあまり、成長戦略を軽視すべきではない。世界的に高い技術力を持っている今、わが国企業は、M&Aなどの手法によって、さらに成長するチャンスが残っている。そうした企業成長のチャンスを逃すことは、単に一企業の損失だけに止まらない。わが国経済全体にとっても、大きな機会喪失というコスト負担になる。企業経営者には、そうした責任感が求められるはずだ。

仮に、企業がそうした意思決定ができないのであれば、企業の所有者たる株主は、反対票=保有株式の売却を行えばよい。そうなると株価は低下し、企業価値は減少する。その結果、当該経営者は、その地位を奪われる可能性が高まる。政治や企業経営について、われわれは、様々な意思表示ができる立場にある。われわれは、そうした意思表示の機会を軽視してはならない。そのチャンスを有効に生かして、わが国の経済が成長し、より幸福な生活ができるような道を考えるべきだ。

真壁昭夫 信州大学・経済学部教授

(9日 東京)

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最終更新日  2010.04.11 20:19:09


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