≪卓上四季≫
砂漠の中の遺産を訪ねると「過去」ではなく「未来」に連れ去られたような錯覚に陥る。
シリア砂漠の中央部にあるバルミラの遺構もそうだった。
紀元前1世紀末から紀元後3世紀ごろまで、東西文明を結ぶシルクロードの中継地として
繁栄を謳歌したオアシス都市。巨大神殿の石柱群や円形劇場ー。クレオパトラの子孫を
自称していた女王ゼノビアの伝説も残る。
周囲の山々はかつてはイチジクやマツ科の木々が茂っていたという。寒暖差が激しい
砂漠での生活の暖をとるなどのために切り倒されたと聞けば、文明の行きつく先の姿を
”沈黙の言葉”で警告してくれているようにも思える。
日本では富士山の世界遺産決定に沸いているが、ユネスコの世界遺産委員会は今回、
バルミラを含むシリア国内6か所の世界遺産すべてを「危機遺産」に登録した。
意味するところは極めて重い。
内戦は無辜の民の命を奪うだけではなく、「人類の記憶」をも消し去ろうとしている。
このまま深刻な流血の事態が続き、ダマスカス旧市街など貴重な歴史的建造物が失われれば
そのあとにひりがるのは「人類の愚かさ」を物語る”未来の風景”だろう。
バルミラ郊外で、「どこから来た」と気さくに声をかけてきて、紅茶と甘いナツメヤシ
をふるまってくれた遊牧の家族は平穏に暮らしているだろうか。
「遺産」からのSOSが耳を突き刺す。
2013.6.25 道新より
富士山が登録され これからが大変ですよね。
ごみになるようなものは持って行けないし
綺麗な景色を保てるよう気をつかわなければね。
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