村上春樹さんのエッセイ集で50篇のエッセイが、大橋歩さんの銅版画を挿絵に綴られております。短編や長編の小説と違い、村上さんの素顔に触れられる楽しいエッセイ集です。したがって、村上さんの茶目っ気を十分楽しみながら、村上さんらしさを堪能できます。元は『anan』(2000年3月17日号~2001年3月3日号)に1年間連載されたものを纏めて単行本として発売し、その後に文庫本になったようです。10年前の話とは言え、殆どが今でも真理を突いており、村上さん特有の読者へは強制しない自己主張が面白いです。「なるほど話」や「よく有るね話」もありますが、電車の中では思わず吹き出してしまうものがたくさんあるので要注意。一話一話が短いので、ちょっとした空き時間にもってこいの本です。もっとも、すぐに読み終わってしまいますが。
面白かった話を幾つか紹介します。
☆にんじんさん
☆円周率おじさん
600桁まで円周率を暗記しているおじさんの話で、毎朝これを声を出して暗唱しているそうです。村上さん曰く、確かにすごい事だけど、家族にはあまり尊敬されてないと思う。毎朝600桁の円周率聞かされるのは・・・。
☆真っ白な嘘
村上さんが若い頃、インタビューでどんな本を読んでいるかを聞かれて、「最近は明治時代の小説を・・・。・・・具体的に言うと、牟田口正午とか、大坂五兵なんかの作品は・・・」とか答えたらしい。もちろんこんな人たちは実在しないと言う話です。
3つ目の話を読むと村上春樹ファンの方なら真っ先に思い浮かぶのが、デビュー作の 『風の歌を聴け』 の序章とあとがきに出てくるデレク・ハートフィールドという米作家だと思います。村上さんに最も影響を与えた作家であり、彼の墓参りのためだけに渡米し、苦労して探し出し、墓標に書かれていたニーチェの言葉を紹介しています。
多数の村上ファンがハートフィールドの作品を探したり、出版社に問合せしたそうです。しかし、モデルとなった作家はいるものの、ハートフィールドなどという作家は実在しない。作家も本の中で紹介されている彼の作品も村上さんの創作であり、真っ白な嘘」という落ちでした。
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