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カレンダー
寝返りを打ちながら 聴いていた
そして はたと我に戻り 仕入れだと思い返し 飛び起きた
目覚ましは・・・・6時に設定していたのを思い出した
眠いはずだ・・・・寝たのは午前二時を回っていた記憶がする
凍結しているかもしれない と・・・昨夜の若者達との会話が胸をかすめた
ゆっくり走れば 大丈夫よ・・・と 自分にささやいて 布団を払った
室内温度 13度 身支度をしながら 寒さに指が小刻みに震えた
これくらいで寒いなどと言っていたら 北国の人はどうする? と自身を叱咤してみた
裏のドァーを開けて 驚愕した
一面 霜にも似ているが 小雪だった
暖気を済ませ 早朝の冷気を勢い良く切って ヘッドライトは闇を裂いた
山間部に近づくにつれて 雪は激しさを増していった
フロント目掛けて 乱舞する白い粒は 見る見るうちにあたり一面を埋め尽くしていった
ようやく 猛進型の今朝の無謀な行動を ほんの少し後悔し始めていた
目的地までの数箇所に ノーマル車は退避して状況をうかがっていた
大きく右にカーブをしたら・・・・灯りは見えるはずだ・・と
誰に言うとも無く つぶやいた
所要時間は これまでの仕入れの二倍掛かっていたことに気がついた
目的地に到着した
振り続ける雪は短靴の半分辺りまでになっていた
車の轍(わだち)は 数えるほどしかなかったが施設の中には元気に働くお年寄りの姿が見えた
痛いほどの冷たさの中で その手は元気に働き続けていた
新鮮なものを そして安全なものを 手作りで届けていただいている
それだけで 感謝の気持ちで 毎回心が熱くなる
ここへは今年最後の仕入れであった為 いつもより念入りにお礼を述べた
かざりっけ無く相好を崩して笑うお年寄り達の笑顔は 大きな慈愛に満ちていた
なれればいいな・・・と 仕入れたものを抱え 笑い返しながら誰に言うとも無く
施設を後にした
誰かが運ぶ時に落としたのだろうか・・・葉っぱのついた子蜜柑が
雪の上に転がっていた
帰りの路なりは 雪を楽しめた
全輪駆動車は過信しては危険だが 雪には強い
まだ明けない朝の路なりは それでも楽しく感じられた
午前七時とは思えないほど辺りは真っ暗だったが 軽快なデフテックの勢いに乗り
薄っすらと明けゆく農村を駆け抜けた
一番多忙な人間が一番多くの時間をもつ
(アレクサンドル・ビネ)
・・・・ 深い言葉を 雪の轍に貼り付けた朝だった
拝啓 桜花の父上様 2008年04月05日
千夜一夜(もんママ版) 第四話 2008年02月12日
千夜一夜(もんママ版) 第三話 2008年01月28日