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読書2016.1
2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3648ページ
ナイス数:135ナイス
最終戦争論 (中公文庫BIBLIO20世紀)
の
感想
昭和15年5月講演録。「今、米は全艦隊をハワイに集結して日本を脅迫」。ドイツは一次大戦後、産業革命して機械化兵団と空軍質量差で欧州弱者に短期勝利。連合側の物心両面劣勢は必然。後30年で最終戦争になると。男子皆兵に加え老若男女全員に耐えを求める戦争となる。空中戦が中心で瞬時に都市を壊滅する兵器が運用され、世界人口は半減するやも。喧嘩好き西欧覇道文明は、弱い人々と重要施設を破壊目標にして殲滅作戦をとる。日本は備え、民族協和をめざせと。今でも大統領がまず国益を口にする国は当時とあまり変わらないのか。
読了日:1月31日 著者:
石原莞爾
伊藤正一写真集 漂流の記憶 「黒部の山賊」と開拓時代
の
感想
三俣山荘、雲の平山荘、水晶小屋、伊藤新道の建設整備の記録写真、北アルプス深奥の美しさ、冷厳さ、芽吹きの記録写真集だ。槍ヶ岳の月光、朝焼け、氷雪の姿は峻厳でやっぱり孤高に見えた。上流階級の世界、「山賊」の時代、発電国策の時代、自然を愛する大衆登山の時代、変遷がよくわかる。「人はなぜ山に登るのか。背後に社会があるからだ。」と著者は言う、山岳文化はまさに社会の生き写しで汚すも隠すも育むも文明水準次第と言う事だろう。くしくも山々の自然との関係が、日本人の文明水準を明らかにしているようだ。
読了日:1月29日 著者:
五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後
の
感想
石原莞爾の試案で辻政信が骨格づくりした満州国最高学府の卒業生達の戦中戦後の記録だった。民族を超えて生きようとした青年の希望と米ソ欧のアジア侵略との格闘。共産主義、軍国主義、民族主義いずれもが残忍で、自らの知識と思考に未来を探す青年達の健全な死闘録だ。朝日新聞の記者が書いたものなので自社都合の切り取り、切り捨てに用心して読み始めたが、証言記録は胸に迫るものばかり。論証抜きの断定的歴史観形容詞が一部余分に感ずる程度の「角度」。良い本。
読了日:1月28日 著者:
三浦英之
佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日
の
感想
報道では知りえない内容ばかり。イスラム過激派の仏でのテロが意味するもの、北方領土の現実的行方、ウクライナ問題は独、仏も国益で動き、露の勝利で合意、ウクライナ指導者の暗部は歴代深い、IS支配地域への人道支援の敵対的意味の大きさ、核の新たな拡散危険性、韓国のナショナリズムの行方、反知性主義の表層化等々、どれも得心。著者の本を読むと新聞は本当に取材して書いているのかわからなくなってくる。
読了日:1月26日 著者:
佐藤優
獅子吼
の
感想
吉村昭の「動物園」を思いだした。戦時中の上野動物園での薬殺で、飼育員の悲しみが描かれていた。薬入り馬肉を食べないライオン。飢えで追い込まれて食して絶命する百獣の王だった。獅子吼の西山動物園は仙台動物園なのだろうか。Wikiだと花壇にあったらしく、たしか広瀬川の蛇行した洲だ。西の山上にある八木山動物園は戦後らしい。収録6編とも人の真心を問う心に沁みる話だった。
読了日:1月24日 著者:
浅田次郎
破獄 (新潮文庫)
の
感想
軍国主義の深まる時代から民主主義を自己流に試し始める時代までの間に繰り広げられた、最強の公権力行使である刑務所への抵抗となる脱獄の人間模様が描かれているが、時代とその時の人々の真実をみるようだった。モデルの人の実生活を守る為の仮名小説だが、日本人の経験した事象の本質が記録されていると思う。
読了日:1月24日 著者:
吉村昭
山本五十六の真実―連合艦隊司令長官の苦悩
の
感想
英雄の逸話、私信の真情を読み、伝え聞いていた英雄像が実像であると思える内容だった。「社会科学上一つの概念は筆者の嗜好によって左右することは慎まねばならないが」と著者は書いているが、著者の英雄への敬愛が出ていた。つくづく、英雄を追い詰めた戦争体験のない成績エリート軍人達の偏屈と陶酔と保身と徒党に嘆息。本の編集は、節の寄せ集めで時系列入りくり、事績の重複、文脈飛躍に気が散った。
読了日:1月22日 著者:
工藤美知尋
忘れられた島々 「南洋群島」の現代史 (平凡社新書)
の
感想
沖縄戦の惨劇に先立ち、沖縄からの移住者の惨劇がサイパン、テニアンなどで起きていたことも忘れてはならないと。軍の考えた本土の捨て石に多くの人々の命が失われたそうだ。兵士、軍属そして家庭人、その子供達。南洋群島の現代史も17世紀からの西欧の差別、収奪、暴力の変遷と本質は変わらないと思えてしまう。南洋群島を舞台に20世紀の文明の正体を暴くかのようだ。もっと考えよと言われたようだ。良い本。
読了日:1月19日 著者:
井上亮
蚤と爆弾 (文春文庫)
の
感想
あとがきで保坂正康が主文脈で名を与えられたのは一人のみで、他は無名の役職表現をとる匿名形式のノンフィクションと。冷静な筆致で興奮した告発はないと。まさにそのとおりの吉村昭作品だった。描写事実と人間像に、日米ソとも、非人間性でみれば同じ穴に巣食う無限の暴力性を備えた同罪の国家であることがわかる。軍事と科学分野で人間はとんでもないことをしでかす存在と分る。非難告発表現なしにこれでいいのかと問われた。
読了日:1月14日 著者:
吉村昭
賊軍の昭和史
の
感想
薩長史観、薩長の軍事行動での成功体験が、その後の軍事学と軍事思想の健全な進歩を歪め、成績至上の暗記軍人が戦争知らずのまま、参謀となり、天皇の大権を越権して、敗戦時のことを思考せず、人々を死に追いやったと。偽の錦の御旗で官軍を装い、政敵を虐殺した戊辰戦争と酷似。主犯の参謀達は天皇責任問わずにより責任追求から逃れたと。終戦に持ち込み日本人の命を繋いだのは、賊軍派の要人の力だそうだ。陸海エリート参謀の罪ははかりしれないと。
読了日:1月11日 著者:
半藤一利,保阪正康
2020年世界はこうなる
の
感想
著者の情報と予測には、今回も、なるほどと思わずつぶやく事しきりだった。天津爆発の原因と影響、中韓が日との首脳会議へ急転回した理由、米中首脳会議の直前に安保法制が成立した狙い、米軍は前線での共同作戦を拒否する国がある、VWの体質とその未来、メルケルがプーチンを支持する理由、人民解放軍との確執とその国の未来、北朝鮮の干ばつ、拉致の全貌、その時の中国からの影響・・・日本の未来を信じてよさそうな気分に
読了日:1月9日 著者:
長谷川慶太郎,田原総一朗
出島の千の秋 下
の
感想
「帳簿の世界史」にあったオランダの世界制覇と衰退の中で会計が果たした役割を思いだした。この本でも極東での交易と商館経営の歴史が帳簿で紡がれていて物語の基底にあった。負債は資産だとのセリフもあった。植民地経営、海上交易、商船、海軍と、日本の封建社会、侍文化の関わりがとても面白い。米、英、蘭、独の違いも鮮やか。現代の風刺にも思えてきた。よくできた時代劇。
読了日:1月8日 著者:
デイヴィッドミッチェル
出島の千の秋 上
の
感想
著者は、英国生まれで広島で日本語教師を8年していたらしい。原文は英語だそうだが、自然な日本語に翻訳されていて見事な江戸時代劇になっている。驚きだ。長崎に無数の煙突、九州山中の積雪、寺に毛布など時代風俗考証で少し気になったが、寛政の日本と植民地支配の世界情勢の凝縮が面白い。史上初の株式会社で世界の価格を支配していたオランダ東インド会社での出世争い、私利私欲ぶりは企業小説。鎖国行政と開化探求は歴史小説。その噛み合いは面白い。
読了日:1月5日 著者:
デイヴィッドミッチェル
ヨーロッパから民主主義が消える (PHP新書)
の
感想
「事実を通じて真実を、事象を通じて本質を」知ることが大切と「収容所から来た遺書」の主人公の言葉があった。新聞は自社角度の保身に執着で報道すべき事実がされてないと思うが、この著者の話は真実に近づけた気になれる。ヨーロッパ民主主義は多分にご都合主義でキリスト教徒の名で犯してきた罪と偽善に気づかない限りイスラム問題は解決しないと。イスラム過激派はヨーロッパが育てたと言ったら言い過ぎかと。
読了日:1月2日 著者:
川口マーン惠美
読書メーター
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