JEWEL

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碧の天使 第1話



表紙素材は、 てんぱる様 からお借りしました。

「本当に、何もない所ですね。」
「君、そんな事を言うと地元の方に失礼ですよ。」
「お言葉ですが、僕は素直に感想を述べただけです。」
「そうですか。さぁ、こんな所で油を売っている暇はありませんよ。」
「はい、わかりました。」
警視庁特命係・杉下右京と、警察庁長官官房付・神戸尊は、眺めがいい灯台に背を向け、事件現場へと向かった。
事の始まりは二週間前、東京湾の近くで一人の男の遺体が発見されたことだった。
「うわ、これはひでぇ・・」
「水死体は、いつ見ても慣れないっすねぇ・・」
「おい、こりゃ何だ?」
三浦刑事は、被害者が握っている“何か”だった。
それは、美しい輝きを放つ真珠だった。
「これは、天然真珠ですね。しかも、かなり純度が高いものですね。」
伊丹・芹沢・三浦が、被害者が握っていた真珠を眺めていると、彼らの背後からぬっと右京が姿を現した。
「警部殿、またですか!」
「失礼、この真珠は被害者のものですか?」
「被害者が握っているから、そうなんじゃないですか?」
「しかし、妙ですねぇ・・男性が、真珠のネックレスをつけますかねぇ?」
「何故、そう思われるんでしょうか?」
「被害者の左手の中指に、何かに擦れたような傷があります。恐らくこれは、被害者が誰かともみ合った時、その誰かがつけていた真珠のネックレスを掴み、鎖で傷がついた。」
「確かに、そう見えますな。」
鑑識の米沢は、被害者の左手を調べながら言った。
「杉下さん、また勝手に何処かへ行って・・」
軽快な足音と共に、神戸尊が右京達の元へとやって来た。
彼は水死体に気づき、慌てて口元をハンカチで覆った。
「これはこれは、元特命係の神戸ソン警視殿~、何であなたが現場にいらっしゃるんですか?」
「ソンじゃなくてたけるです。実は、上からの命令で、被害者の元交際相手を捜せといわれましてね。まさか、こんな形で会うなんて・・」
そう言った尊は、蒼褪めた顔で再びハンカチで口元を覆った。
「神戸君、大丈夫ですか?」
「はい、何とか・・」
尊はそう虚勢を張って歩き出したが、急に視界が暗くなってその場に座り込んでしまった。
「その様子だと、大丈夫ではなさそうですね。」
その後、二人は東京湾から車で警視庁の離れ小島へと戻った。
「よ、暇か?」
いつものパンダのコーヒーカップを持って特命係に入って来たのは、組織犯罪対策5課課長・角田だった。
「ねぇねぇ、東京湾で発見されたホトケさん、かなりヤバい事に首突っ込んでいるみたいでさぁ~、毎日残業で辛いわ。女房にはチクチクと嫌味を言われるし、独身貴族はいいよねぇ~」
「ヤバい事って、暴力団絡みとか?」
「サルウィンのマフィアに消されちまったんじゃないかって、もっぱらの噂だよ。何でも、真珠の養殖に絡んでいるとか・・」
「真珠の養殖といえば、三重の伊勢志摩が有名ですよね。それをマフィアが何処で仕切っていたんでしょう。」
「さぁな。あ、でも、ホトケさんの部屋から、こんなものが見つかったぜ。」
角田はそう言うと、右京と尊にあるものを見せた。
それは、ある町の観光ポスターだった。
“人魚が住む町、由羅町へようこそ”という、文字と共に、可愛らしい人魚のイラストが添えられていた。
「ふ~ん、“人魚が住む町”ねぇ・・」
「行ってみましょう。」
「え?」
「この町に、何か事件の謎を解く鍵があるかもしれませんよ。」
こうして、二人は由羅町へと向かった。
「本当に、何もない所ですね。」
町一番の絶景スポットである灯台から紺碧の海を眺めながら尊がそう呟くと、彼の隣に立っていた右京がすかさずこう彼を窘めた。
「君、そんな事を言うと地元の方に失礼ですよ。」
「お言葉ですが、僕は素直に感想を述べただけです。」
「そうですか。さぁ、こんな所で油を売っている暇はありませんよ。」
「はい、わかりました。」
二人がそんな事を灯台で話していると、遠くから警察のパトカーのサイレンが聞こえて来た。
「何やら事件のようですね。」
「行きましょうか、町の方へ。」
灯台から尊が運転する黒のGT-Rでサイレンが聞こえて来た方へと向かうと、そこは港の近くにある公園だった。
「うわ・・」
「酷ぇな、こりゃ・・」
由羅町警察署捜査一課・片岡刑事と緒形刑事は、公園のベンチに横たわっている女性の遺体を見た。
彼女は、喉を掻き切られ、周りには真珠のネックレスの残骸らしきものが散らばっていた。
「ほぉ、ここにも真珠が・・しかも、天然真珠・・」
「ひぃ、なんだよあんたら!?」
「すいません、僕達こういう者です。」
右京と尊が片岡刑事と緒形刑事に警察手帳を見せると、二人は驚愕の表情を浮かべた。
「東京から刑事さんが、何だってこんな所に?」
「実は、色々とありましたね。それよりも、暫くこの町に滞在したいのですが、おすすめの宿はありますか?」
「由羅グランドビューホテルがおすすめですよ。高台の、灯台の近くにありますよ、案内しますよ。」
「いいえ、大丈夫です。灯台には先程行ったので、ホテルへの道はわかります。」
「そ、そうですか・・」

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