JEWEL

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愛の華、咲く頃 第1話


表紙素材は、 湯弐様 からお借りしました。

「や~い、火月の男女!」
「ブース!」
小さい頃、火月は自分の容姿が周りから違うという事で、いじめられていた。
『いいかい、火月。“人と違う”と言う事は、強みになるんだよ。』
毎日泣きながら学校から帰って来た火月を優しく膝上に抱いた祖母は、そう言って彼女を励ました。
『お祖母ちゃん、僕アイドルになれる?』
『なれるさ、あんたは、“特別”なんだからね。』
祖母の言葉を胸に、火月はアイドルになるという夢を叶える為、音楽学校へと入学した。
だが、そこで待っていたものは、秒刻みの過酷なスケジュールと、先輩達による厳しい指導だった。
(僕、才能ないのかなぁ・・)
音楽学校での厳しいレッスンを終え、火月は人気のない場所で日本舞踊の練習をしていると、不意に背後から視線を感じたので彼女が振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。
燃えるような美しい紅い髪をしたその女性は、澄んだ海のような碧い瞳で火月を見た後、こう言った。

“見つけた・・”

その女性は、そう呟いた後、煙のように掻き消えていった。

(え、何今の!?)

不気味な体験をした火月は、音楽学校を卒業するまで、その場所には二度と近づかなかった。

「高原さん、あなたに話があるの。」
「え、はい・・」

音楽学校の卒業式を終えた火月は、理事長室に呼ばれた。
そこには、大手芸能事務所の社長が居た。

「あなた、芸能界に興味ない?」

夢への扉が、開いた気がした。

「土御門有匡さん、クランクアップです!」
「お疲れ様でした~!」

漸く終わった―そう思いながら、土御門有匡はドラマの撮影を終えて楽屋へと戻ると、大きな溜息を吐いた。
7歳の頃から子役としてデビューし、もう20年もこの虚飾に塗れた世界で生きている。
実家は世界で五指に入る程の財閥でありながら、こうして彼が家業を継がずに役者をしているのは、かつてハリウッドで名優としてその名を馳せた父・有仁のお陰だ。
ただ、もうこの業界で生きるのは限界だと、有匡は最近感じていた。
(もう潮時かもしれないな。)
そんな事を思いながら有匡が衣装から私服へと着替えていると、突然楽屋のドアが開き、一人の少女が入って来た。
金髪紅眼の容姿をした少女は、有匡が上半身裸である事に気づいて、慌てて彼に向かって頭を下げると、こう言った。
「すいません、間違えました!」
(うるさい奴だったな・・)
「殿、如何なさいましたか?」
「いや、さっき間違えて入って来た子が気になってな。」
「あぁ。あの金髪の子ですか?“ウィッシュ☆”というアイドルグループのメンバーですわ。」
「アイドル、ね・・」
そういえば今日は音楽番組の収録があると誰かが言っていたな―そんな事を思いながら、有匡は備え付けのテレビのスイッチを自然につけていた。
画面には、5人位の少女達が煌びやかな揃いの衣装に身を纏いながら、歌い、踊っていた。
その中で一際光っているのは、自分の楽屋に間違って入って来た金髪の少女だった。
その歌声は美しく澄んでいて、踊りにもキレがあった。
「あの金髪の子は、誰だ?」
「あの子は、高原火月ちゃん。あの椿音楽学校の卒業生ですわ。」
「椿音楽学校ねぇ・・」
そこは数々の名優を輩出してきた名門校で、バレエ・声楽・日本舞踊のみならず、茶道・礼儀作法などの授業がある“女学校”として有名な所だった。
「まぁ、お珍しいですわね、人嫌いの殿が他人に興味を持つなんて。」
「うるさい、放っておけ。」
そうマネージャーの小里に憎まれ口を叩きながら、有匡は番組が終わるまでテレビから目を離せなかった。
「お疲れ様でした。」
「お疲れ~!」
番組の収録を終えた火月が他のメンバー達と楽屋へと向かっていた時、一人の男と擦れ違った。
彼は、自分が間違えて楽屋に入ってしまった時に居た男だった。
「お疲れ様です!」
「耳元で喚くな、うるさい。」
「す、すいませんっ!」
男が去った後、火月は他のメンバー達からの質問責めに遭った。
「火月ちゃん、土御門有匡様とお知り合いなの!?」
「え、さっきの人が?」
「え~、火月ちゃん知らないの!?芸能界で“抱かれたい男”10年連続ナンバーワンに選ばれているスターなのよ!」
「へ~、そうなんだ~」

帰宅した火月は、有匡が出演していたドラマのDVDを観た。

(何だろう、この人とは、何処かであったような気がする。)

翌日、事務所の社長から、火月はとんでもない知らせを受けた。

「え、僕がドラマ出演ですか!?しかも時代劇で主演!?」

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