JEWEL

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朧月の祈り ~progress~ 1



一部性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。

「なぁ、なんか変な音がしないか?」
「え?」
ある蒸し暑い夏の日、10歳の中山明は、友人達と4人で近所の神社へ蝉取りに来ていた。
「何処?」
「ほら、向こうから・・」
そう言って明の親友・浩介が指したのは、美しい朱塗りの社だった。
「なぁ、もしかして・・」
「ユーレイ、って事!?」
「行ってみようぜ!」
好奇心を剥き出しにした少年達は、“変な音”がする社の奥へと向かった。
「あっ、やんっ」
「袴の上から触っただけなのに、こんなに濡れて・・」
衣擦れの音を立てながら、社の奥で一組の男女が激しく睦み合っていた。
女は腰下までの長さがある金髪を振り乱しながら、甘い嬌声を上げていた。
それに対し、女に悦びを与えている男の方は、息ひとつ乱さず女の胸と蜜壺を弄っていた。
「そろそろ頃合いだな。」
男は女の緋袴の紐を解くと、己の袴の前を寛がせた。
(うわ、デカッ!)
(僕のパパのよりもデカい!)
(あれ、入るの?)
明達は、女が男のものを喉奥まで咥え込むのを見た。
「上手だ。そう、もっと吸い上げて・・」
端整で雪のように白く肌理細かい男の肌が、徐々に赤くなり、息が荒くなっていく事に明達は気づいた。
「自分から動いてみせろ。」
女はゆっくりと男の上に跨り、腰を揺らし始めた。
「だめ、もうっ・・」
女が涙目で男を見ると、彼は女を四つん這いにさせ奥まで貫いた後、女の両腕を摑んで腰を激しく上下に揺らした。
「あ~、奥が、あぁ~!」
「くっ・・」
明達は、暫くその場で棒立ちになったまま動けなかった。
気絶した女の髪を男が優しく梳いた時、明達は彼と目が合った。
切れ長の、碧みがかった黒いその瞳に睨まれ、まるで金縛りが解けたかのように、明達は脱兎の如くその場から逃げ出した。
「先生・・?」
「何でもない、まだ寝ていろ。」
「はい・・」
昼間はあんなに晴れていたのに、夕方になると空を黒雲が覆い、雷鳴と共に雨が降り始めた。
「うわぁ~、こりゃ酷いや。」
雨はやがて川を濁流へと変えさせ、それは町を襲った。
「先生、どうかしましたか?」
「また、“あいつ”の仕業か。」
男―この社の主である土御門有匡は、そう呟くとじわじわと迫りくる“彼”の気配を感じていた。
―狐の子だ!
―怪しげな力を持つ化物め!
―山へ帰れ!
―死んじゃえよ。
―お前なんて生まれて来なきゃ良かったんだ。
ひたひたと、迫りくる闇。
「先生?」
「う・・」
「大丈夫ですか?酷くうなされていたみたいでしたけど・・」
「少し、昔の事を思い出していた。」
「昔の事、ですか?」
「あぁ。」
有匡は自分の手を握っている妻・火月を見た。
今から700年前、半人半狐の陰陽師だった有匡は、唐の野猫族・紅牙族である火月と出逢い、紆余曲折の末に結ばれ、この社を守る事になった。
「先生、最近変ですよ?」
「何処がだ?」
「何だか、苛立っているような気がして・・」
「“あいつ”の気配を感じる。」
「“あいつ”?」
「随分な言い方だな、有匡よ。」

何処か神経を逆撫でするかのような声が聞こえたかと思うと、白銀の髪を靡かせた一人の青年が有匡と火月の前に現れた。

彼の名は、狼英。

鬼神の息子であり、昔有匡に調伏された彼は、それ以来有匡に懸想し、しつこく求婚を迫って来る。

「有匡よ、今宵こそ色好い返事を・・」
「くどい。わたしは貴様と番うつもりはない。」
「其方の子なら、いくらでも我が産んでやろうぞ。」
狼英は女性へと姿を変えると有匡にしなだれかかったが、火月によって阻まれた。
「狼英、去ね。」
「嫌じゃ。其方が我の子を産んでくれるまで、帰らぬぞ。」
「先生に近づくな、この変態!」
夫にまとわりつく狼英に苛立った火月は、彼の顔に爪を立てた。
「おのれ・・化猫風情がっ!」
「若様、こちらにいらっしゃったのですか!早う帰りますぞ!」
雷鳴と共に現れたのは、雷神の息子であり狼英の幼馴染でもある光信だった。
「嫌じゃ~!」
「全く、あいつは騒がしくてかなわん。」
「先生、どうして700年もあいつにつきまとわれているんですか?」
「話せば長くなるが、まぁいい。あいつとは、わたしが昔宮中に居た頃に知り合った。」

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