【一六八】 甘 辛 味 に 於 るや、 甘 は 益 々 甘 、 辛 は 益 々 辛 なるは、 偏 (片寄る)なり。 偏 ぜざれば、 則 ち 其 の 真 味 を 保 つ 能 わず。 然 れども 人 口 に 適 せず。 故 に 甘 辛 調 和 せざるを 得 ざるなり。 人 も 亦 甘 性 なる 者 有 り。 辛 性 なる 者 有 り。 是 れ 亦 偏 なり。 故 に 進 む 者 之 を 退 け、 退 く 者 之 を 進 め、 甘 辛 調 和 して、 然 る 後 世 の 容 る 所 と 為 り、 人 の 用 る 所 と 為 る。 然 りと 雖 も、 偏 ならざれば、 則 ち 其 の 真 性 を 保 つ 能 わず。 譬 えば 醃 菜 (香の物)を 作 る 者 、 短 食 (短期保存食)には 則 ち 甘 鹹 相 半 ばし、 長 食 には 則 ち 鹹 を 専 らにするなり。