桃の種


(おそらく、醇風美俗と思う人もいることでしょう。)

しかし、北朝鮮から逃げてきた幹部の黄(ファン) ジャンヨプ書記が書いたものを読みますと、かの国はその点においてわが国の価値観に似ているようです。

同書記は1960年代末から「主体思想」という一種の人間中心主義的な革命思想の理論的な体系化の仕事に加わり、3年半にわたって従事したといいます。
この思想は1972年に「毎日新聞」の質問に金日成主席の名前で答える形で発表されました。

しかし、その後、主体思想は変質させられてしまった、と同書記は告発しているわけです。

1999年に光文社から発行された「北朝鮮の真実と虚偽」から拾い出してみましょう。
■ 全知全能
「… 首領は全知全能であり過ちを犯すことはなく…。首領が人民大衆の生命の中心であり頭脳であるのだから、首領がいない人民大衆は精神を持ちえない単純な肉の塊にすぎず、… 烏合の衆にすぎないというのだ。」
■ 親
「… 個人が所有している社会的政治的生命は、皆、首領が与えてくれたものであり、したがって首領は人民大衆の恩人でありオボイ(親)であると主張した。」
「… 首領は、すべての社会成員たちの生命のオボイ(親)になると主張した。すなわち、人民大衆が自分の指導者を育て上げ選出するのではなく、首領が人民大衆の生命の恩人として人民大衆を育て上げるのだとする、本末転倒の主張をするようになった。」
■ 桃の種
「… 挙句の果てには、首領が桃の種であり人民は桃の果肉であるから、桃の果肉は種のために存在するなどといって、人民は首領のために存在するものであると主張した …。」
「人民大衆が首領を擁護し、首領に喜びと満足を与えるためには、自分の生命をいともたやすく捨てなければならない (…と説教する)」

このような歪曲、変質の結果、今日の北朝鮮では「なんでもあり」の封建主義になってしまったというのです。

もって他山の石としましょう。


[背景説明]
黄書記によれば、
「社会主義」は経済生活においても民主主義を実現するためには必要なものであり、封建主義とは相反するものだ、と。
したがって、北朝鮮は首領絶対化によって封建主義に変質するとともに、民主主義、社会主義とは無縁の存在となった、という。

60年代末、朝鮮労働党は、金日成主席の誕生日を祝うように各国の共産党に求め、プレゼントを寄越すように要求したので、日本共産党などの一部の党が反発した。

そのうえ、ラングーン・テロ事件(アウンサン廟を爆破して韓国要人を殺害)を起こした結果、日共などと断交した。
この後、共産党は自民党など他の政党が北朝鮮と交流を深めるのを批難し、拉致事件の家族との接触を持って、国会でも追及し、政府・自民党側に拉致疑惑の存在を公式に認めさせた。

拉致事件を通じて北の異常な実態を知れば知るほど、わが国の官尊民卑、政府の怠慢と傲慢さ、ふつうの民間人の卑屈さも見えてしまうようで、家族会の激しい言葉には違和感はない。

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