事件は会議室で起きたんじゃない
ましてや湾岸署で起きたんでもない
事件は
けるっちの家で起きてたんだ!
ある晴れた日曜日
台所で仕事をするけるっち
6月8日A.M10:15
そして、事件は起こった
「おぉい!!ちょっと来てくれ~!!」
和久さん
旦那の叫ぶ声
今日は山で友人と昼食をとる予定だ
旦那は1号と共に荷物を車に積み込んでいた
「な~に~?]
台所から叫ぶけるっち
「いいから~ちょっと~早く来てくれないか?」
嫌な胸騒ぎがする すみれ
けるっち
玄関で異変に気づく
開けっ放しの玄関
呆然とたたずむ旦那と息子
2人は同じ八の字眉で押し黙る
「・・・カルビッチ氏が
・・・逃げた?」
無言で頷く 和久さん
旦那
思い出される悪夢
前回の脱走劇では10日間も帰ってこられなかった彼
10日間も近所のガレージで帰ってこられなくて鳴き続けていた
カルビッチ氏・・・
坊ちゃん育ちで過保護に育てた彼の帰巣本能は皆無に近い
「 真下君
1号、玄関を開けっ放しにしたのはあなたなのね」
困った顔で頷く 真下
1号
「ごめんなさい、あの、ウキウキしちゃってうっかり・・・」
怒りを押し殺し目を見開くけるっち
「被疑者(カルビッチ氏)は?」
「あそこで隣の犬を見てる」
和久さん
旦那が声を押し殺して答える
庭に目をやると
被疑者が身を乗り出して犬を見ている
「かんちゃん(隣家の犬の名)・・・」
同日 A.M10:17
けるっちの額に冷たい雨が落ちてきた
・・・さっきまであんなに晴れていたのに・・・
これは一刻をあらそうわ
なにしろ被疑者は猫
水は苦手なのよ
「 和久さん
旦那ちゃんマタタビ持って来て
・・・いや、モンプチ・・・モンプチの方がいいわ。
真下君
1号あんたは家に戻っていなさい」
被疑者カルビッチ氏は雨の中
吠えまくるかんちゃんの前から動かない
「・・・かるびっちぃぃ動かないで~」
小声で近づくけるっち
カルビッチ氏がスローモーションで振り向く
刹 那
今までに見せたことのない俊足で逃げるカルビッチ氏
「待ちなさいカルビッチ!!
もうすぐ モンプチ が来るわ!!」
振り返ることもせず逃げるカルビッチ氏
呆然とみつめるけるっち
カルビッチ氏との日々が走馬灯のように駆け巡る
あれほど可愛がっていたのに・・・
私の顔を見た瞬間に猛ダッシュかよ・・・
心の中に虚無感が漂う
「はっ!そうだ!青島君!通路・・・通路封鎖して!!」
「封鎖できません」
・・・って現実から逃避している場合じゃない
同日 A.M10:20
しょげるとも怒るともない微妙な足取りで玄関に向かうけるっち
旦那と1号がこちらを見ている
和久さん
旦那がバツが悪そうにボソっと切り出す
「・・・カルビッチ
・・・カルビッチ
・・・帰ってきたから」
へ??
えぇぇ??帰った??
だって今逃げていったんだよ
私の顔を見た瞬間にぃ
事態が飲み込めないけるっち
「だから、カルビッチはぐるっと家を回って玄関まで来たのね
んで目があったのでドアを開けたら家に入っていった」
同日 A.M10:22
被疑者確保ぉぉ!!
感極まるというよりは拍子抜けしたけるっち
脱走時間たった7分のスピード解決!
なぜ、けるっちの顔を見て一目散に逃げたのか
なぜ、すぐに帰ってきたのか
彼の取調べはこれからだ
ついでに、あれほど口をすっぱくして
ドアや窓の開けっ放しを禁止していたのにもかかわらず
失態をやらかしたこっちの事情聴取もこれからだ
と、まぁすったもんだあったものの、
その後は無事友人達と昼食を済ませたけるっち
これから暑くなると
1号や2号の(いや大穴狙って、旦那か?)
うっかり閉め忘れを
カルビッチ氏が狙っているわけです
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