2011年05月11日
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静かに酒は飲んでいるが 菅沼幸一(五島昇)には焦りが出ていた 早いとこ用談に入りたい それがすまなければ落ちつかない といった顔色だった 話していても 眉の間にときどき皺が動く
井戸原俊敏(小佐野賢治)は もう頃合いだ と思って 杯をおいた
さて 今日はお忙しいのにお呼び立てしまして 実はたいへん言いつらいのですが こういうことをお願い申しあげようと思うんです
孝一の唇の端がぴくりと痙攣し 経理担当重役の中村は心もち座り直すようにした 二人とも井戸原の口元を見つめている
わたしの方には先代の会長(菅沼丑平 モデルは五島慶太)から頂戴した手形がかなり溜まっております いまここにそのリストをつくってきましたから 一応 ごらん願います 
上巻 百六十九ページ

親父が死んだあとに どうもうちの会社はお化粧をしているらしいということで 実権を親父に握られていた 菅沼幸一が 会社の経理を調べなおして 会社が相当 悲惨な状態になっていたことでかなり愕然 井戸原からの借り入れ三百億で 会社が支えられていたことに気がつく

さらに 今度の粉飾剥落で分かったのだが 丑平会長は経理担当重役に命じて簿外経理を作らせていた 銀行筋によらない借り入れ金を販売入金に当てていたのである

そうしたことで こうした粉飾決算には借入金による販売入金という形がよく取られる このことは主として銀行筋に信用を維持するためであるが 借入金がそれだけに当てられるとは限らず 当然 当面の金ぐりに投入される
上巻三十五ページ

井戸原は 幸一に もう全額返してくれというが 幸一は これだけの金額はとても一度には無理なので 最終的には 井戸原の条件通り ある会社の株と ビルが譲られることになります

あきらかに東急と国際興業との関係をモチーフにして 清張が小説にしたもの ある意味 終戦直後の隠匿物資がどのようにロンダリングされたかのいい見本でもあるし すこし意味合いも違うが 帝国ホテル 国民相互銀行 航空会社の株というのは 小佐野にとって どういう意味をもっていたかの謎がみえてきます





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最終更新日  2011年05月11日 23時28分03秒
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