煮すぎたうどん

煮すぎたうどん

PR

カレンダー

バックナンバー

2025年11月

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2007年12月31日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
※生々しい表現が含まれています。











クリスマスに胎児の死を知り、26日に手術を受けることになった。
しかし、説明ではどんな事をされるのか、ちっとも解らなかった。
だから、覚えていようと思った。
この痛みを、忘れないように、書き記したいと思う。

まず、前日の夜から食事と水を抜く。
麻酔の時に吐く恐れがある為。

当日、点滴を受ける。中はただのブドウ糖。

点滴をつけたまま、処置台へ。出産台のようなもの。
下を脱ぎ、大股を広げて、手足を拘束される。
屈辱だ。独身の女性なら、泣きたくなるだろう。

その恥ずかしい格好のまま、しばらく待たされ、ようやく麻酔をかけられる。
全身麻酔。点滴から注射でいれられる。
数を数える。
10までは数えられた。
そのうち、視界がボヤけ、自分が言ってる声が遠く感じる。

眼を閉じても回る視界。
誰かが入ってくる気配。
固い管を、膣にぐっと押し込まれる感覚を最後に、意識は飛んだ。


薄いピンクと黄色の長方形が、鼓動に合わせて踊っていた。
麻薬で飛ぶ人と、同じ感覚だと思う。

漠然と感じる恐れ。
必死で、思考を保とうとする。
だが、ある瞬間、ピーッ・ブチッという音がして、すべての思考が遮断された。


無。

深層意識のみが、恐怖を伝える。
この世から、断絶された。
私は、死んだ。

一瞬のその時間は、永遠に思えた。

やがて、ぐるぐる回る感覚と共に、名前を呼ばれた。
「おわりましたよー」

それに曖昧に返事をした。
まだ効いている麻酔。
吐き気と寒気のみが戻ってくる。

その中で、うわ言を言っていた。

さみしい・さむい・大丈夫・ごめんなさい・気持ち悪い
ありがとう・さようなら・さようなら
赤ちゃん・赤ちゃん・赤ちゃん…

やがて、まだ途切れる意識のまま、処置台から下ろされ、ベッドに寝かされた。
横になって丸まり、私はまるで、大きな胎児のようになっていた。
無性に、女の人が恋しかった。
娘の名前、母、友人の名前を、何度も呼んでいた。
弔いの歌も口にしていたと思う。

吐き気は酷く、寒さも強い。

孤独だった。
ひたすら、寂しくて寂しくて、涙がこぼれた。

2時間が経つ頃、ようやく麻酔がきれ、吐き気も収まった。
手足だけは、凍ったようにつめたい。

手術は、たったの5分だというが、あの麻酔をかけられた時間は、一日に思えた。
私の胎児はもう死んでいたから、何も見えなかったけど、
中絶の人は、何かを見てしまいそうだと思った。

凄まじい喪失感でぼぅ、としながら、旦那の迎えを待つ。
なるべく、普通にふるまうようにした。
だが、それがいけなかったのか、旦那は帰りに、混みまくっている銀行で、私に金を下ろすように言った。

喧嘩になった。

「男の人には、この痛みは絶対に解らない」と、絶望で真っ暗になりながら、家を飛び出した。

それから、3日後に和解したが、不信感は消えない。

頭では、意味のある事と、片付けようとしているが、感情ではもうやり切れない、いつでも泣き出したい気持ちでいっぱいだ。

旦那にも娘にも、優しくできない。
焦燥のみが頭に居座って、やり切れない。

逝った子は、こんな事望んでいないだろうに。

まだ、別れを飲み込めない。

中絶も、同じ処置をすると思うが、あんな体験、未婚の女性たちにして欲しくない。
必ず、避妊して欲しい。
傷つくのは、いつだって女性の方なんだから。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年12月31日 13時15分03秒


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

プロフィール

清水2064

清水2064


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: