オトキチ日記

はじめての平壌

北朝鮮旅行記1日目

はじめての平壌

飛行機は無事着陸。
が、そこからが長かつた。
誘導路に入るといふわけではなく、滑走路をまつすぐにいつまでも走る。
「道路を飛行機で走つてゐる」といふ感じ。なにか意味/理由があるのかは
わかりません。
空港のビルは「発着所の事務所」といふのが似合ひさう。
同型機が8機くらゐ停つてゐました。

乗るときと同じくバスへ。
で、バスの運転手および係員は、おお、あの大きな軍帽をかぶつた軍人さん
ではありませんか。実際に見ると本当にでかくて圧倒される帽子です。

緊張の入国審査。まはりは「同胞」の方ばかりのやう。
軍人さんがうろうろしてゐて知つた人に声をかけたりしてゐますが、フレン
ドリーな感じではなく、厳しい目つきでなにやらを耳打ちか打ち合わせをす
るやうな感じでした。
柵の向うには出迎への人たちが大勢ゐます。

ここでは間違ひなく私ひとりが異質な存在です。
軍人さんたちは(当り前ですが)にこりともしないし。

入国審査は何も言はれずに通過。

ターンテーブルで預け入れ荷物を受け取ります。
ターンテーブルは動いてゐないといふ話も読んでゐたのですが、ちやんと動いて
ゐて、といふか、ほんとにこんなに積んでゐたのかと思ふくらゐに大量の荷物で
した。洗濯機だか冷蔵庫のやうなものまでありました。

税関検査に並んでゐると柵の向うから合図を送る男の人が。あ、ガイドさんだ、と
ほつとしますが、奥へと合図をしてゐます。

3つある検査ゲートの二つに大勢が並んでゐて、一番奥は軍人さんはゐるものの
閉められてゐて誰も並んでゐない。
そこへ移動。
パスポート・査証を見せると通れと柵を開けてくれました。
出てガイドさんのはうに向はうとすると呼び止められて手荷物を見せろとのこと。
それはさうですわな。
手荷物検査は徹底してゐました。
機内で読む文庫本を一冊入れてたのだけれど、これもぱらぱらと開いて中身を
確認してOK。
ヌードグラビアのある週刊誌なんぞだつたらたぶんOUTなんだと思ふ。

ところでこの文庫本。実は倉橋由美子の「スミヤキストQの冒険」なんですね。
共産主義者を徹底して小馬鹿にして諷刺した小説でありまして、はて、それを
知つてゐたらあの軍人さんはどうしたことやら?

不思議なのは手荷物は徹底して調べたのに、キャリーバックのはうは開けろと
も言はれず。こつちのはうが量が多いのにね?

さて、やうやくガイドさんと対面。もうこれであとはこのガイドさんの指示に
従へばいい。と、そこへ女性のガイドさんが。やはりガイドは2人なんだ、と、
え? あれ? 可愛いくね? 愛ちやんに似てゐる。別の意味で驚いたよ。

ガイドさん

<これは2日目に開城で撮つた写真です>

ガイドだから美人かとは想像してゐたけど、「きれい」といふより「可愛い」
ので驚いた。そして私は「可愛い」のに弱いのです、はい。

いはゆる北朝鮮の美女軍団はきれいだなとは思ふけれども、まあ、それだけでね、
つまりは萌えはしません。
でもこのガイドさんには萌えました、正直。
で、またよく笑ふし、それが可愛いし、そのくせ結構不機嫌さうになつて男の
ガイドさんに文句を言つたりするのね。そこもまた可愛いんだね。
(ま、これは後の話ですが)

男のガイドさんは李さん、女のガイドさんは金さん(金英錦 キム・ヨムグム。
キムさんのはうだけは後日しつかり名前を確認しました。李さんもこのとき
教へてくれたのですが、忘れた)。運転手さんもゐてこちらも李さん。

空港の建物を出ると「専用車」が止まつてゐて黒いアウディ。なるほどネットで
読んだ通りだと乗り込んで驚いたよ。

げっ、フロントガラスがひび割れてゐる。

運転手の目の前がたぶん石が直撃したやうにひび割れてゐたのですね。
しかしひび割れについてはガイドは何も言はず。
どうやらこれが当り前らしい。

このアウディ、実はホテルに着くまでに3回エンストしかかりました。
オイル切れランプが点きつぱなしだつたからおそらくオイル交換なんて
できないのでせう。エアコンはないのか壊れてゐるのか、窓全開で走る
わけですが、排ガスの臭いがもの凄かつた。環境もへつたくれもないと
思つた次第。

車/道路事情については別にまとめて書くつもりだけれど、まあ、想像
以上でした。
エンストした車はあちこちに停まつてゐるし、それ以前にほんとにこの
車動くの? といふ代物ばかり。廃車置場にだつてあんなのないよ。
道路もひとことで言へばガタガタ。

これは実はすべてに言へることなんだけど、「作つた最初は良かつたんだ
らうなあ」といふもので北朝鮮はあふれてゐます。その後の補修がされて
ゐない(できない)。

風景を見ながら(観察しながら)一路平壌へ。
この車の中でガイドさんとお話。
「朝鮮行くつて言つたら拉致されるとか言はれませんでしたか」と李さん。
ほう、やつぱり向うから言つてきたかと思ひつつ「言はれました」と笑顔で
返事。
キムさんが「海外旅行はよく行かれますか?」
「いえ、今回がはじめてなんです」
「はじめての外国で朝鮮に来られましたか? それは凄いことですね」
さう言ひながら笑ふのがまた可愛いんですね(と、言つてゐるとこればかり
になるので以後は省略)。

「私は大学で日本語を学びましたが、実際に日本に行つたことはありません。
ですから、ことば遣ひでをかしなことを言ふかもしれませんが、悪気はあり
ませんので、許してください」
「いえ、完璧ですよ」
「ありがたうございます」と笑ふのがまた(略)。

「わが国の正式名称は朝鮮民主主義人民共和国でありますけども、ふだんは
共和国または朝鮮と言つてゐます。南朝鮮の話をするときだけは区別をす
るために北といふ言ひ方をすることがありますが、それ以外では北といふ
言ひ方はしません」
「わかりました」といふことで滞在中は「朝鮮」「南朝鮮」といふ言ひ方
を通しました。

実はこれを書いてゐても「北朝鮮」ではなく「朝鮮」と書きさうになつて
ゐます。慣れとは怖ろしいものです。

「撮影は自由です。たくさん撮つてください。ただし、軍人と作業中の人は駄目
です」
ビデオももちろんOK。

いよいよ平壌市内へ入つた。

以下はその夜書いたメモです。

             *

18時頃、退社時分とのことにて大勢の人人人。
トロリーバス、路面電車、走りまくり。
大勢の人が乗り、大勢の人がバスや路面電車を待つてゐる。
トロリーバスのバスターミナル、まるで解体業者の廃車置場に見える。
トラックの他、乗用車も走つてゐる。アウディ、ベンツ、日本車。
きれいな建物と古びた建物の落差はげしい。
自転車結構走つてゐる。
デートしてゐるふうの高校生くらゐの姿もあつた。
木陰に坐つて話してゐて、なんかいい感じ。白い夏服。
荷物を頭上にもつをばさん多し。
空港が軍人ばかりだつたが、平壌市内では軍人はあまり見かけず(注。この日の
この時刻がたまたまさうだつたやうで、後日は市内でも軍人はたくさんゐました)。

             *

ホテルは羊角島ホテル。
ロビー大層な造りだが電気は点いてをらず。
しかし明り取りからの光で十分に明るいので点けないのが自然か。

男の李さんからホテルについての説明あり。
「カジノもあります。ボーリング場もありますよ」そして「マッサージ、ありますね。
マッサージしませんか?」
おお、ちらとは聞いてゐたがほんとにあるんだと思ふ。
もちろんここでいふマッサージとは「性感マッサージ」であつて、つまり風俗なのね。

北朝鮮での女買ひ。
これは是非とも経験しておきたいと思ふ心は十二分にありました。
しかし、以下の理由でその日はやんわりと断りました。

1 とにかく緊張してゐて疲れきつてゐて、とても「遊ぶ」気持にはなれない。

2 やはり怖い。裸で密室で二人きりで言葉も通じないで、異例事態があつたらどうする?
  なにかの手違ひか、軍人が踏み込んできて「何してゐるだスンニダ!」とか言はれたら?

3 女性ガイドのキムさんが横にゐたから。こんな可愛い人の前でそんなこと頼むなんて、
  「不潔よ」とかケーベツされさうで、ねえ?

「キムさんが相手してくるんですか?」と冗談を言はうかとも思つたけれど、はい、もち
ろんそんなことは言ひませんでした。

部屋はツイン。広さは十分。日本でも十分通用しさう。
バストイレも広くてトイレットペーパーもちやんとある。
日本のものよりは紙質落ちるが、まあ、スーパーで売つてゐる一番安いもの程度。

(が、トイレと電気についてはこのあと北朝鮮の現実に驚くこととなります)

テレビは朝鮮のテレビのほか、中国のが2局、アメリカ(だと思ふ。CNNと表示
されてゐた)のが1局、ほか映りが悪くてよくわからない外国のが数局、そして
NHKが見られた。これはまがふことなくリアルな映像でした。

食事はガイドさんたちと外の料理店へ。
平壌の日没は20時過ぎとかでまだ昼間のやうに明るい。なんだか感覚が狂ひます。
ここで食事をして、今後の打ち合わせをすることに。

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