オトキチ日記

犬を喰ふ

北朝鮮旅行記2日目

犬を喰ふ

甘肉料理の店へ。

ここは例の建築途中で放置されてゐる柳京ホテルの裏手にあつた。
で、メインの通りから1本だけ中に入つたんだけど、

げ、地震でもあつたのか?

メインの通りの道路もガタガタだと思つたけど、1本入つただけでもつと酷い。車道はバツタンバツタン
車が飛ぶし、歩道の敷石はまともなものなんか1枚もない。敷石がないはうが歩きやすいんぢやと思へる
くらゐ。建物も間近に見るとほんとに崩れさう。

観光客に見せても平気なんだからこれが当り前になつてゐるんだらうね。
もつとも綺麗なところだけ見せようとしたらいまの平壌では一歩も動けなくなるが。

町の道路

<こんな感じです>


それで、柳京ホテルの裏側です。

柳京

<裏側は撮れないとかネットで見たけど、好きに撮れました>

キムさんに(わざと)「クレーンがありますがまだ工事中なんですか」と聞くとさうだとのこと。
ただ、建築途中で放置されてゐるのはこのホテルだけではない。
クレーンが乗つてゐて、数年は放置されてゐるやうな建物がほかにも二棟はあつた。一般の住居用ビル
のやうだつたから、つまりは何のビルであれ、もう新規建築する力は残つてゐないといふことだらう。

料理店の前に停まつてゐた車を指して、キムさんが「わが国の国産車です」といふので、パチリ。

国産車

<「どこかとの合弁の国産車」とは言つてゐたけど、どこまで本当に国産車かは不明。しかし
 ちやんとした車で日本で走つてゐても不思議ではないくらゐ立派な車でした>

料理店の中へ。

例によつて入口/廊下は暗い。でも慣れてきた。

まづは前菜が、これも例によつてたくさん出る。
ガイドさんたちも前菜はあまり箸をつけず。メインに備へてゐるふう。

やうやく甘肉がでる。煮付けの皿。
ひと口食べる。
美味い。
よく煮込んであるのか柔らかく臭みも何もない。たしかに甘い。

美味しいですねえ、と言ひつつ食べるがガイドさんたちはつまむ程度。

「甘肉はスープで出るのがメインですね」と李さん。
なるほどこれも前菜のうちなのか。
そしてメインのスープが運ばれる。具は肉がどつさり。

美味しい。柔らかく、たしかに栄養ありさう。

ここで、言はずもがなのことを。
イヌを食べるのは野蛮だとか何とか言ふ言説には私は全く与しない。
牛や豚は食べてもよくて犬は駄目といふ理窟はどこをどうやつても出てこない。

犬は悧巧でだから云々といふのなら、鯨は知能が高いからどうしたといふ毛唐の理窟と同じ
である。
ぢやあ馬鹿なら食べていいのか? 命を差別するのか?

馬鹿だらうと悧巧だらうと命は命である。
さういふ命を奪つて食べなければ悲しいかな我々は生きてはいけない。
植物でも一緒である。
断食して死ぬ道を選べないのなら、命を喰つて生きるしかない。
生きるとはさういふことだ。

食べる機会があるなら私は猫肉だらうと猿肉だらうと食べてみたい。
世界にはゴキブリだの蝉だのを食べる民族もゐる。
私はそんなものは食べたくない。
食べたくないから、食べない。
ただそれだけだ。
しかしゴキブリや蝉を食べる人々に何かを言ふつもりはない。
単なる食文化の違ひだ。

日本人は蛸を食べる。
しかし欧米人には信じられぬらしい。
かれらにとつてはミミズがナメクジを喰らふに等しいのだらう。
さういふことだ。

帰るさ車のなかでガイドさんたちが「ご馳走さまでした」と礼を言ひ、頭を下げた。
旅行中、食事は何度も一緒にして(たぶん)支払ひは私持ちなのに、礼を言はれたのは
この時だけである。

甘肉料理はそれほどのご馳走らしい。
そして、「暑い時期に3度食べる」といふ李さんの説明を考へ合せると、甘肉を食べるこ
とはひとつの義務的習慣ではないのかとも思つた。

例へば日本人が正月にお雑煮を食べて正月を実感する、もしお雑煮も食べずに正月を過ご
してしまつたら、何かするべきことをしなかつたやうな、「今年の正月はお雑煮も食べな
かつた」と自責の念を持つやうな、さういふ食べ物なのではないか?
かつ、高価でさうは簡単には食べられない。
それが今回食べられた。
義務がひとつ果たせた。
それが、あのお礼になつたのかとこれは私の独善的考察です。

尚、犬は食用に飼つてゐる犬とのこと。

ただ、話のニュアンスからはその辺の野良犬を捕まへて食べることもなくはないやう。

しかし、さうは言つても、いまの北朝鮮で「食べられる犬」がその辺をうろうろしてゐるか
も疑問といへば疑問。食べられるならとつくに食べつくしてゐるやうにも思ふ。

食用犬をお金を出して食べられるやうな階層(階級とは言はないよ)の人たちだけが食べ
られるのだらうなあと思つた次第。

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