オトキチ日記

さらば平壌

北朝鮮旅行記5日目

さらば平壌


空港に着いて、初日から預けたきりのパスポート・査証・航空券を持つて、李さんが手続きに行く。

私とキムさんで待つ。

相変らず、たくさんの軍人さん。
時刻表(といふのが相応しい)を見ると1日1便か。
羽田や関空とは違ふなあと改めて思ふ。

李さんが搭乗券を持つて、戻つてきた。
パスポートと査証も受け取る。
しげしげと見てゐると、キムさんが、
「パスポートが戻るかどうか不安だつたさうですよ」
「だつて、日本に帰れなくなりますから」と私。
「あぶない人ですから、しつかり調べるやうに言つておきました」と李さん。もちろんこれは冗談。

荷物の検査に。李さんが同行してくれる。
X線検査の結果、キャリーバッグを開けろと言はれて、素直に、ちよつと緊張しつつ開ける。
例の3将軍のコインの箱を手に取り、「メダル?」と聞く。
さうだと李さんが答へる。

それはあんたらが敬愛する3将軍のコインだぞ、メダルぢやないぞ、と心の中で思ふが、もちろん
言はない。

出国検査も無事通過。

2階が出国ロビーでここには免税店があつた。1階には何もないので、売店の類ひはないのかと思つて
ゐた。
遅れてキムさんが上がつてきた。
彼女はここへもフリーパスなんだなと思ふ。
「写真はもういいのですか?」とキムさん。
「空港は撮影禁止ではないのですか?」
「こちらは駄目ですが」と外の風景を指して、「こちらはいいですよ」と待合内部を指す。
では、と最後の撮影を。

空港1

<空港の2階。壁際が免税店。シャンデリアがあるがもちろん点いてはゐない>


空港2


<免税店。職員がまつたりと>


空港3

<白いブラウスはキムさんの後姿。大きな帽子は軍人さんだが、このときはお寛ぎのやうす>


免税店をぶらぶらと眺めながら、キムさんに、
「この中で何かお気に入りのものがあれば、プレゼントしたいのですが」
 すると、キムさんは、ふふふと笑つて、
「その気持だけでいいですよぉ」
 軽くいなされました。

手荷物検査&ボディチェックに。

まはりは中国人が多数、白人が少数、日本人は(たぶん)私ひとり。

白人の人の後ろに並んだが、そのボディチェックの念入りなこと。
若い軍人が怖い目付きで金属探知機の棒で体を撫でまはす。
ズボンの後ろポケットに何かあり、出せ、と。
四つに畳んだ紙幣。
その紙幣にまで金属探知機の棒を当てた。

私の番。
やはり緊張する。
が、若い軍人の目は私の肩越しに向うを見てゐる。
軽く頷く。
で、私のボディチェックは、形だけ。
金属探知機の棒をすう~と動かして、「行け」。

なるほど特別待遇。
後ろにゐるキムさんと目で合図してOKといふわけだつたのだらう。

入国のときも出国のときも特別待遇だつたわけである。

あとは飛行機に乗るだけ。
ここでキムさんともお別れ。

キムさんが階段を下りてゆく。
キムさんの姿が視界から消えた。

ひとりになつた。
もう「特別待遇」はない。
初日の緊張が甦つてくる。

例によつて、バスに乗り、飛行機に乗り込んだ。
初日と同じく、暑い。
初日と同じく、団扇が配られた。

離陸へ。

真つ直ぐに滑走路を「走る」。
10分近く「走つてから」停まつた。
ここからが本当の離陸だ。

さらば、平壌。

さあ、日本へ。

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