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2008.01.03
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カテゴリ: lovesick
「それで、楓は、どうなの?悠斗のこと。」
彩が、「お風呂もらうな」と通り過ぎた悠斗を見送ってから、たずねます。
「まあ、キライではないはずだよな」
いつの間にか戻ってきた宗太郎が、カウンター越しに彩から、カセットコンロを受け取りながらいいます。
彩が、すかさず、私にノートパソコンを渡します。メモだと間に合わないときにいつもここで貸してもらうものです。手伝い役を宗太郎に返し、私はカウンターにパソコンを置いて、打ち込みました。
『悠斗のことは、もちろん、好きだと思う、自分でも』
2人が画面を覗き込んで、驚いたように顔を見合わせています。私は続けて、
『だって、見た目は最高だし、中身も優しいし、こんな私のこと大切にしてくれるの、すごく』
悠斗に言ったセリフを繰り返しました。

彩が、打ちあぐねる私を励ますようにそっと肩に触れます。
『だけど、やっぱり怖い。悠斗のこと好きになって、悠斗が私を愛してくれる気持ちを受け入れて、楽しい時間を過ごせると想像するのは、とても幸せだけど、でも、また、何かで悠斗を失うことになったら?どうしても先に進む気持ちになれないの』
彩は、私の肩に触れた手に少し力を込めて、
「楓の気持ち、よく分かるわ」
「ああ、俺も」
「私たちは、悠斗の気持ちも分かるから、ちょっと板ばさみだけど」
「そうだな、楓、悠斗はああ見えて、相当根性あるから、じっくり行けばいいよ。お前のペースで」
「うんうん。楓が、先に進めなくてもいいよ。先に進みたいのに、って思えてるだけで、進んでるよ」
「たしかに」
2人は、とても優しい。いつもとても。
『ありがとう。悠斗も同じこと言ってくれたわ』

『信じてみたいと思ってる。悠斗の気持ち。私、頼りないけど、精一杯がんばってみる』
2人はにっこりうなずいて、作業に戻りました。

宗太郎と彩。2人を見ていると、私はとても幸せな気持ちになれます。私が失くしてしまったものを、ちゃんと育て続けられている2人。宗太郎は、悟が私を見つめていたのと同じくらい、彩だけを見つめて生きてきました。彩は、その深く安定した愛情に包まれて、無垢なまま、愛らしい彩でい続けられる。私と悟が紡げなかった未来を確実に実際のものにしていっている2人が、私には眩しかったです。悟の死の直後、正直言えば、2人を見るのが辛い時期もありました。でも、2人は私の気持ちを分かっていながら、私から絶対に離れなかった。あの時、2人が私に遠慮し、遠ざかるようなことがあったなら、私はもう、きっとこの世にはいなかったでしょう。悟の不在に3人とも打ちひしがれながら、それでも、宗太郎と彩の2人は、2人でいられることから生まれる、ほんの一滴の力を、私にすべて注いでくれたのです。自暴自棄になり、謙吾に身を委ねた私を、悟の代わりに静かに許してくれたのも2人でした。謙吾のフォローもきっとしてくれたのでしょう、そうでなければ謙吾だって、今の活躍はないはずなのです。


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最終更新日  2008.01.03 21:14:11
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