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2008.01.08
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カテゴリ: lovesick
宗太郎は、しばらく黙っていたが、
「楓は、悟が刺されたときにあげた悲鳴を最後に、声が出なくなった。俺は家の中、彩の部屋にいてその声を聞いたよ。ただごとじゃないのが分かったから、彩には部屋にいるようにいって、飛び出した。悟が倒れていて、冴子さんが喉を突いて、倒れこむところだった。必死で楓に手を伸ばそうとする悟を支えながら、全部夢ならいいのに、と思ったよ。悟は、しばらく息があって、楓に何か話しかけていたけど、結局助からなかった」
と続け、ワインを一口飲んで、大きなため息をついた。少し震えていた。俺は、宗太郎の方を見た。宗太郎だって、ひどい思いをしたのだ。親友を目の前で。宗太郎はそんな俺の視線を受けながら、
「あんな思いは二度としたくないな。」
と少し無理に笑った。
「だから、楓が、誰の愛情もうけいれられないこと、よく理解できるんだ。俺だって怖いくらいなんだ、悠斗」
宗太郎の珍しい弱気な言葉に、俺は、
「ああ、分かるよ」
と答えるしかなかった。宗太郎は、俺を少し眩しそうに見ながら、

俺は力強くうなずいて、
「もちろん、そのつもりだよ。俺、恋愛にこんなに必死なの、初めてなんだ。自分でもびっくりしてる。だけど、楓は、やっぱり俺にとって、誰とも違う気がするから」
宗太郎は、ニッと笑ってそれを受け、
「楓はいい子だよ。今は不安定で、暗い顔の方が多いけど、悟がいた頃の楓は、本当に天真爛漫で、いつも彩とコロコロ笑ってたんだ。ほんと、早くあの頃の楓に戻ってほしいよ。そして、楓が誰とも違うところ、それは、何より、陶芸の才能にあふれてることだ。それだけは今も変わらないけど。」
俺がうなずくと、
「そうだ、今度のオフはいつ?」
「え?っと、いつだったかなあ。ちょっと電話してみないと。」
「俺たち近々実家に行く用事があるんだよ。よかったら一緒にいかないか?浮風窯、案内するよ。さっき言ってた楓のいる窯。あいつ多分、こもりっきりになるはずだから。俺たちの引き出物のことで」
「あ、そうなんだ。ちょっと待って、聞いてみる」
俺は、またマネージャーの加藤さんに電話した。
「あ、何度もすいません。悠斗です。今いいですか、はい。あのね、俺、次のオフっていつでしたっけ?、、あはは、休むことばっかり考えてるわけじゃないですよ。はい。はい。分かりました。ありがとうございました」

「来週の土曜日が、午前中っつーか、前日から明け方までの撮影だから、終わり次第、朝から休みだって。その後は、ちょっとまだ撮影の進み具合次第らしいわ。どう?」
「じゃあ、その仕事終わったら、直でウチに来て、仮眠しろよ。どうせ家出るの昼頃だし、行きは俺が運転するから、車でも寝てりゃあいいよ。」
「そうだな」
俺はワインを一口飲んで答える。
「決まり。お前も楓の作品みたら、さらに楓の虜になっちゃうだろうなあ」

「大丈夫だよ。ダメな時間は、教室の方で待ってたらいいし。お前もちょっとやってみたら?陶芸。あれ、楽しいぜ。」
「ん~、どうもそういうの、下手っぽいよ、俺」
と正直に言う。苦手なんだよな、そういうの。
「ははは。やってもみないうちから。でも、悟のはひどかったぜ、実際。あれにはかなわないよ」
「どんなんだよ、それ。」
「それはともかくさ、お前も、楓のこと真剣なら、じいちゃんにも、フジシマくんにも早く会っといたほうがいいしな。」
「うわ、そうか。なんか急に緊張してきちゃったよ、俺」
「はは、そうかもな。2人とも、かなり楓のこと愛しちゃってるから、覚悟しとけよ」
俺が黙ると、宗太郎は慌てて、
「いやいや、冗談だよ。いい人だよ、ふたりとも。だから、安心してろよ。お前が真剣ならそれだけで受け入れてくれるはずだよ。だから素直に行くことだな。得意だろ?そういうの」
俺は幾分、ほっとして、
「ああ、まるでバカって言われてる気がするけど」
と、笑った。


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最終更新日  2008.01.08 06:27:41
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