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2010.04.17
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カテゴリ: box
思いがけないカタチで美莉に、俺が新谷とのことを知ったことが伝わったことで戸惑う俺に、母さんは母さんで少し考えてから、あきれたように言う。
「ねえ、それにしても、ケースケ、じゃあ、なに、あなた、理由も聞かないで、別れること承知したっていうことなの?」
「・・・理由なんかより、ミリが、もう、絶対俺と別れるって決めてたから、だから、仕方なかったんだよ」

あんなに決意してたミリだったから。だから。

母さんはため息をついて、
「頼りないコ。それであなた、本当にあきらめられるの?ミリちゃんのこと」
「・・・あきらめ、、るしかないだろ?それがミリのためなんだ。。」
そんな自信なんてないまま、自分にしつこく言い聞かせてる言葉を、弱弱しく口にするしかない俺に、母さんは、もう一度、大きくため息をついて、首を振る。
「なんだよ」

かあさんは、一人合点に頷きながら、
「私は、美莉ちゃんと会えなくなるの寂しいし、とっても残念でショックだったけど、美莉ちゃんのこと、考えれば、そうよね。・・・大体、もともと、ケースケ、あなたにはもったいなすぎる子だった。もう、絶対に近づかない方がいいわ。あなたのそのやり方が、美莉ちゃんのため、っていうなら、ね。第一そんな頼りないオトコに美莉ちゃんを支えられるもんですか」
そこまで言ってやっと言葉を切ったかあさんに、
「・・・そこまで言わなくてもいいだろ?」
口を尖らせて言い返しながら、俺はこれ以上凹まされたくなくて、席を立とうとした。

・・・かあさんのショックがとりあえず和らいだなら、これ以上、話す必要もないだろ?

かあさんは、その気配を察して、鍵に目をやり、
「その鍵、あなたが持ってなさいよ。・・どうせあなたのことだから、すぐ誰かに渡すんでしょうけど」

・・・誰かに?それって、新しい恋人にってこと?勘弁してくれよ。

「渡さないよ。。」
なんだか力が抜けて、立ち上がりかけたコシを降ろし、そう言った俺には全くかまわず、

にっこり笑って、冗談とも本気ともつかない声でそういうかあさん。
「ないって・・」
力なく言い返す俺に、かあさんは、
「私は、そのくらいミリちゃんが大好きだったの」
少しだけ、潤んだ声でそう告げる。

やっと素直に頭を下げる気になった俺を、しばらく黙って見つめてから、
「慶介。・・・ミリちゃん、あなたが見たこと話したら、少し黙り込んでいたけれど、最後は何もかもふっきれたような表情で帰っていったわ。今思えば、あなたにバレたこともそれでいいって思ったのかも知れないわね。・・・それでいいのよね。ミリちゃんは新しい恋の始まりにいるんだから。幸せ絶頂のはずだもの」
きつい現実を告げる言葉に、
「・・・わざわざ、そんなことまで言ってくれなくてもいいんだよ」
思わず苦笑する俺に、母さんは真顔で、
「だから慶介、あなたも、もっとしっかりしなさい。そして、せめて、早く立ち直りなさい。あなたがいつまでもそんな風に未練がましい顔してたら、ミリちゃんだって、心のソコからは幸せになれないのよ?分かったわね?頼りないなりに、そのくらいの礼儀は果たしなさいよ?」
はっきりとそう告げ、もう話はない、とでもいうように、また眼鏡をかけ、家計簿に戻ったかあさん。

・・・そのキツいお言葉。かあさんなりの励ましな、わけ?キビシイなぁ、、。

「はいはい。努力しますよ」
俺はただそう返事して、立ち上がり、
少し迷ってから、テーブルから鍵を拾いあげ、廊下に出た。

廊下を歩きながら、鍵を手の中でなぞる。

なんの変哲もない鍵。
でも、とても重い意味を持っている鍵。

そう、今、こうして、俺の手の中にあるけれど、この鍵は俺がミリに渡したものじゃない。

この鍵で開けることのできるあの部屋、ミリと2人で暮らしたあの部屋は、最初はヒロトの部屋だった部屋。
ミリはこの鍵をヒロトからもらったんだよな。
・・・きっと幸せな想いとともに。
そして、、、最後は、こんな風に、かあさんに返された鍵。
俺はただその鍵をぐっと握り締める。

ヒロトに、きっと愛しい笑顔で、渡されたその日から、
ヒロトが、きっと愛しい思いで、渡したその日から、
ずっとずっとミリのそばにいた鍵。
ずっとミリのそばに、、。

こいつは、今、
俺にミリとの終わりを思い知らせる重要な役割を果たしているなんて、
気づいてもいないんだ。

こんなに大切なものを、こんな形で受け取ってしまうコトになるなんて。

俺は仏間に入る。仏壇の前、おきっぱなしの座布団。ほんの数時間前に、ミリはここにいたんだ。もう、2度と会えないミリ。俺は、必死で気配を感じ取ろうとするが、もちろん、何も手に入れられることもなく。
座布団の脇から、仏壇に手を伸ばし、そっと鍵を置いた。

・・・兄貴に、返すよ。ごめんな。俺、約束守れなかった。ずっとミリを離さないって、守ってくって言ったのに。

心の中でそう呟き、鍵から手を離そうとして、ふと思いついてたずねる。

・・・ミリ、最後にここで、なんて言ってた?

そんなこと問いかけてみても、ただ、あるのは、静寂で。

・・・教えてくれるはず、ないか。こんな頼んない弟に。

俺はゆっくりと、その鍵から、手を離した。


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最終更新日  2010.04.17 12:33:42
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