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2010.04.26
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カテゴリ: box
画面の中の僕が、驚くのを蒼夜と並んで見ていた。少し、緊張する僕。蒼夜は何も知らないことなのに。

「へ~。あんなのまだ、残ってたんだ。いつも思うけど、すごいね、この番組のスタッフさんて。」
「だなぁ」

何気なくそう答えながら、僕の中にはそれを目にしたときの衝撃が蘇っていた。
インタビュアーにチラシを渡され、手にした瞬間、 ユウコにそれを手渡した僕 が帰ってきていたのだ。

とはいえ、僕は役者。そんな不安定な僕は、引っ込めて、速やかに俳優・碓氷哲哉を演じるモードに切り替えた。
だから、画面の中の僕には、今、微かに演じている時のオーラが漂っている。
素人目には何も分からないだろうけど。



油断すると、また、僕の中に訪れる昔の僕。僕はその僕に言う。頼む。今は引っ込んでいてくれ。画面越しには騙せても、すぐ隣でそんな違和感。見逃すはずの蒼夜ではないんだから。

そして画面は、初演のときの僕の写真に変わる。蒼夜が、楽しそうな笑い声をあげて、腕の中から、僕を見上げる。愛おしく見つめ返す僕に、
「あれが、ウスイくん?」
からかうような目つき。それをしおに、僕は、話に乗っていく。チラシのこと。それを手にした僕。を、忘れられるなら。どんな話題でもかまわない。僕は微笑んで言う。
「そうだよ。すっごい昔の僕。22年前。ソヨが生まれる前か~。僕、そのころもう今のソヨくらいの歳だったんだよな。僕って、ほんと、おっさんだな~」
少しショゲタように言ってみる僕に、蒼夜は、にっこり笑って、口づけ、
「そんなことないよ。ぜんっぜん、おっさんなんかじゃない。碓氷くんは、とっても素敵」
優しくそういってから、もう一度画面に目を移し、
「でも、かっこいいね。あ~、なんていうか、今とは違う、鋭い魅力がある感じ」
なんて解説を。ナンにでも妬いちゃう状態の僕はつい尋ねる。
「この頃出会いたかった?」

「ううん。今の碓氷くんがいい」
「あっちの方が若いよ?」
からかうように言う僕に、蒼夜は口をとがらせ、
「もう。・・若さなんてどうでもいいの。私は碓氷くんがいい」
「あっちも僕だよ?」

「もう。何度言わせたいの?私は、今の、碓氷くんがいいのっ」
「どうして?」
たずねた僕に、蒼夜は少し、伏し目がちになって、
「きっと、このときの碓氷くんに出会っても、随分女遊びに泣かされたと思うわ。ていうか・・・好きな人がいた頃でしょ?私なんて碓氷くんの眼中に入れなかったわよ」

・・・好きな人。・・・ユウコ。

ごまかしきれない想いが、また、僕の中に蘇ってくる。
でも、僕はその想いを瞬時に押さえつけなくてはならない。
今の僕には、蒼夜が。
そう、今、目の前には蒼夜がいるんだ。
僕は言う。
「・・・ソヨに会ってたら違ってたと思うよ」
「そうかしら?」
少し目を輝かせる蒼夜。
「どうだろう?」
からかうようにそう言ってみると、
「意地悪ね。」
またすねてしまう蒼夜。僕はそっと髪に口づけて囁く。
「・・・冗談だよ。」
「・・・そうかしら」
今度はポツリと蒼夜は言う。
寂しげに響く蒼夜の言葉。

僕は、過去に漂う情けない僕の心を、蹴り飛ばす。確かに、今回の舞台は、ユウコと出会った思い出の。。だけど、それにしても、蒼夜がいるのに、しつこく思い出しすぎる。ユウコのことを。 この間の舞台のときも 。。・・・一体なぜなんだ?もう、あれは22年も前。今さら、何が起こるはずもないのに、何かが起こりそうなそんな気配にずっと怯えているなんて。らしくもないっ。

・・・しっかりしろよ?

昔の思い出に、今の幸せを投げ出すことなどできない。
僕は、今度は、しっかりと力を込めていう。

「蒼夜。キミの好きな、『今の碓氷くん』には、蒼夜、キミだけしかいないよ。」

蒼夜は、小さく息をつき、そっと、僕の胸に頬を寄せた。
僕はまた髪に優しくキスをし、しっかりと抱きしめたまま、耳元で囁く。

「愛してるよ、蒼夜」

・・・僕、絶対離さないから。


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最終更新日  2010.04.26 23:51:34
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