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憧 ポプラ社太宰治 / 百年文庫【中古】afb「女生徒」太宰治20歳前後に読んだ作品。38歳でなくなった作者は、20歳の私からすればずっと年上の存在だったが、今は自分よりも年下の存在となっている。そんな作者が、女生徒に成りすまして語っているようで、どこか気恥ずかしい。初めて読んだときはそうは思わなかったのにどうしてだろう。だが、読み進めていくうちに急に作者本人の声が聞こえてくるところがあり、流石と思うところもある。この作品、女生徒の内面を描いているようで、実は作者自身が何者かに対して訴えているように思える。 「ドニイズ」ラディゲ 堀口大學 訳「夭折の天才」と呼ばれる作者。この作品のキーワードは「鼾(いびき)」。 「幾度目かの最期」久坂葉子この作家の存在を初めて知った。名門の生まれで、太宰治を敬愛していたという。この「幾度目かの最期」を書き上げた直後に自死している。死の寸前の作品と思うと一歩後ずさりしてしまう。
2020.10.03
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「台所のおと」幸田 文料理人である夫は胃ガンに侵されている。その妻はそのことを夫に伝えてはならないと医者に言われる。夫には二度の結婚経験がある。彼は、妻と前妻、前々妻の台所の音に三人の性格の違いを見る。言ってはならない現実と過去を抱えながらも、互いを思いやる気持ちにあふれている夫婦の姿が淡々と描かれている。病床で調理場の音を聞く男のリアリティが切ない。 「深川の鈴」川口松太郎「深川」と読んだだけで江戸情緒のある粋な世界が浮かんでくる。これは一読者としての勝手な思い込みに過ぎないのだが……。では「深川の鈴」とは何なのか。この鈴の音は、洲崎の寿司屋の二階で聞こえた音なのだが、主人公の男からすれば、その音にはいろいろと深い意味がある。そして数十年後の思いがけない再会。ラストシーンが味わい深い。 「斑鳩物語」高浜虚子文章を読むと情景が見えてくる。宿屋から見える大和一円の景色が美しい。法起寺三重の塔に登るところなどは読んでいて足がすくむようだ。解説に「正岡子規の『写生』を継承発展させ、散文にも適用した」とあり、なるほどと思う。110余年前の大和を文章で味わうことができる。ほかの作品も読んでみたい。
2020.10.03
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絆 (百年文庫 2) [ 海音寺 潮五郎 ]「善助と万助」海音寺潮五郎善助は後の黒田家一番家老の栗山備後。万助は三番家老の母里但馬友信。善助は弁舌さわやかで心根は誠実。万助は剛情者で黒を白と言いとおした男。このまったく性格の違う二人が若い頃に取り交わした誓紙があった。物語は二人が50歳を過ぎてからの事。何歳になっても人の性格というものは変わらないもの。剛情な但馬がある騒動を引き起こす。そのとき備後はどう動いたのか……。表題「絆」にぴったりの物語である。 「五十年後」コナン・ドイル 延原謙 訳百年文庫というアンソロジーを読み進めていたら、こんなにも良い作品に出会うことができた。「こんなにも」とは、例えば映像にするとしたら、宇宙から捉えた地球のシーンからスタートし、イングランドのデヴォンシャーという町がズームインされていくところ。そこに住む結婚間近の若い二人。男性は新しい仕事が決まりカナダに渡り、後に婚約者とその祖母の三人で暮らすことになっていた。ところが彼はカナダで悪徳下宿のポン引きに襲われてしまう。彼は昏睡のすえに一命を取り留めたが記憶を失う。それから五十年……、という物語である。短編でありながら、スケールが大きい。デヴォンシャーという町、そこに住む人々の描写がなんとも味わい深い。 「山椿」山本周五郎山本周五郎の作品は学生時代に文庫本で何冊か読んだことがあるが、この作品もその頃に読んだような気がする。筆者の「人へのいたわりと優しさ」がこの作品からも滲み出ている。主人公の梶井主馬がきわめて普通の人であるところも良いと思う。
2020.10.02
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季 (百年文庫 10) [ 円地 文子 ]「白梅の女」円地文子舞台は北鎌倉。お寺と地続きになっている裏山を背負った家の庭。物語はその家の茶室から始まる。もうそれだけで、小説の舞台として成り立っているが、この場面の展開のさせ方が読者をうならせる。 主人公は、そこで30年前に恋に落ちた20歳年上の歌人(大学教授)と再会する。主人公は40代後半、歌人は60代後半ほどだろう。 やがて歌人は他界し、主人公はそれまで捉われていた想念から解きほどかれるが、そんな彼女を取り乱させてしまう展開が待っていた。ラストシーンがクライマックスである。 「仙酔島」島村利正初めて読む作家である。この作品もラストシーンに主人公の思いを凝縮させている。乱酔の夫、実直な旅商人、そして老船頭夫婦。彼らの中に主人公が見たものを静かに書き表している。 「玉碗器」井上靖大学時代の友人に誘われ、正倉院御物の白瑠璃碗と共に並んだ安閑天皇陵出土の玉碗を見に行く。白瑠璃碗と玉椀は外来のカットグラスの器物で瓜二つ。千余年の歳月を経て再会した。主人公は、この二つの器物の運命にふれ、亡くなった妹と義弟の愛情を重ねて見るようになる。安定して読みやすい文体。状景も心情も心に染み込んでくる。
2020.10.01
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