短歌



その思いを寄せていた人が、俳句を少しやっていたせいで、彼女の作品を見せてもらったり、僕が好きな短歌や詩を紹介したりしていた。

僕は熱に浮かされた思いを吐き出す手段を求めていた。
現代詩は、形式的な制約がほとんどないので、書き始めるのは簡単なのだが、形式がないため取りとめがないものになってしまう。
では俳句は、その当時、熱い思いを抱えていた僕にとって、枯れすぎた表現形式であった。
で、短歌ならと思って、寺山修司の初期の短歌のモノマネで、滅茶苦茶にワープロをいじって書き出したら、それらしきものができた。
寺山修司、西行、中原中也、アポリネールなどがごちゃ混ぜになっているものだ。
未熟な表現で、少女趣味である。

はっきり言って、僕の柄でもないのである。
今は一切やらなくなった。




 逢い初めし笑みし面影やさしかりし別れてのちの夢のあとには


 嘆けども叶わぬ恋や夏は逝けり亡骸(なきがら)としてわれは残る


 落ちし蛾を夜眺めつつ歩むわれ胸深く恋おさめたり夏の形見に


 夢に見しいづこや景色夏色めき独り嗅いでいる花の残り香


 憧れは空のかなた過ぎ逝けりわれ見上げつつ夏木立行く時


 まなざしの優しき記憶遠ざかりわれ独り居るさんざめく夏の夜に


 ほの暗き優しき記憶たずねあてたり連れ添ってありわれと影と


 わが通る花の小径風さわやかなりわれ顔伏してわが恋思う



 匂やかに気色の中に溶け入りてきみの存在(あること)儚くも美し


 涼やかにそぞろ歩きする影たちに尋ねてみたし夜の行方を


 遠き夜のビアガーデンの灯り暗く在りし日の顔の人今は逝けり


 雲流れ風流れており草の上白球追ってピッチ駈ける時


 わが内に一輪の薔薇悩ましき健やかさ祈りあなたに捧ぐ




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