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2010年05月15日
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※リボーン二次ss。
※ある方に触発されて炎ツナに挑戦。プラスナッツ。


「ありがとう、エンマくん」
 炎真は首を傾ける。
「…何が?」
 最初、何に対して感謝されたのか、分からなかった。
 床にぺたんとあぐらをかいた綱吉は、頭を掻いて言う。申し訳ないというテンションだ。
「何って…いやー、片づけ、手伝ってもらっちゃって…悪いなーと思って」
 言いながら、拾い忘れていたゴミを見つけたようで、ゴミ箱に入れる。

「別に…紅葉が迷惑かけたし…」
 綱吉のファミリーである了平と、炎真のファミリーである紅葉。二人の勉強対決の果てに、何故か爆発した室内は、壁紙に焦げ痕を少し残しつつも、ようやく片づけが終わったところだった。
 ふと、炎真の方こそ、まだ言っていないことがあると気づく。
「ありがとう…」
「え?」
「Tシャツ」
「あぁ…サイズ、同じくらいで良かったよ」
 と、炎真の「27」と数字がプリントされている半袖Tシャツを見る。
 今、炎真が着ているのは昼間来た時に着ていた制服ではない。
 夕方、掃除に終わりが見えてきた頃、出てきたゴミ袋を抱えて1階へ降りようとして炎真は転んだ。それで頭から制服までゴミまみれになった炎真を見た綱吉の母は、風呂をすすめた。
 そうして風呂から上がると、何故だか夕飯だけでなく、綱吉の家に泊まる手はずになっていた。

 炎真は首を振る。ファミリーの待つアパートに帰っても、何もない。何より、綱吉の母の作るご飯はおいしかった。
 それに、綱吉は先ほどから炎真の都合を気にしてくれるが、炎真こそ引けめを感じる。
「そっちこそ…僕がいて迷惑じゃない?」
「え?」
 綱吉は大きな目を、さらに大きく丸くする。

「…僕まで泊めてくれるなんて…迷惑じゃない?」
 継承式典までの綱吉の警護を、炎真のファミリーはメンバーが沢田家に一日一人宿泊するという形で受諾した。だから、今日の担当になった紅葉と、牛柄の子どもにねだられたらうじはともかくとして。炎真は泊まる予定などなかったのだ。
 だが、炎真の引けめを、綱吉は軽やかに否定する。
「あぁ…それは全然だいじょうぶ!ウチの母さん、にぎやかなのが大好きなんだ」
 そう、にっこり笑う。その顏は、話に出た母親にとても似ていることを、炎真は発見する。
「リボーンが来てからはお客がたくさん来るのには慣れてるし、それに…」
「それに?」
 綱吉は伏し目がちになる。告げる声はトーンが落ちた。
「それに…その、オレが…エンマくんと話がしたかったし…」
 ちらり、と炎真は綱吉を見る。誘われた時から、何となく、予感はあった。
 綱吉は、切り出すタイミングを図りかねるように、足の形をあぐらから正座へと変える。そうすると、炎真へ膝を寄せる形になる。
 そしてようやく決意がついたのか、口を開いた。
「エンマくん…あの、」
「ツッくん!」
 が。その時、ドアが開いた。自分の背後で勢いよく開いたドアに、綱吉は正座のまま飛び上がる。
「わ!ノ、ノックもせずに入るなよ、母さん!」
「はいはい。でもツッくん、お友だちが来て嬉しいのは分かるけど、おしゃべりばっかりしてないで早くお風呂に入りなさい!あ。エンマくんはゆっくりしててね~」
「わかってるってば!」
 綱吉の反論にも「はいはい」とだけ流し、母親は去る。
 乱暴に扉を閉める綱吉の頬はほんのり赤い。
「その呼び方やめろって言ってるのに…ったく…ごめん!ええっと…」
 迷うようにドアと炎真を見比べる。炎真は首を振る。
「いいよ。先にお風呂、入ってきなよ」
「う…うん…」
 それでも後ろ髪を引かれるように、綱吉は立つ。
「じゃ…じゃあ、また後で、ね」
 小さく手を振って、パタン、とドアは閉じた。
「…静かだね」
 もう外は暗い。夕方ごろまで張り合っていた紅葉と了平も、居候だという子どもたちも、今は気配を感じないぐらい大人しい。
 ナッツは、返事をするようにのどをゴロゴロ鳴らす。それが面白くて、炎真の掻き撫でる指にも熱が入る。
 コツン。
「………」
 その指が、外からの小さな音に止まる。
 炎真は、わずかな微笑を消して立ち上がると、窓を開けた。夜風にカーテンが揺れる。その影から、
「炎真」
 と、名前を呼ぶ声。窓の外――普通の来訪者ならば現れないような場所に、人が立っていた。
 夜の闇に溶けるような黒髪と黒い制服の、長身の女。炎真には顔馴染みである。
「アーデルハイト…」
「守備はどうだ?」
「別に…」
 視線を下向かせる。綱吉の守護者と紅葉とが起こした昼間の騒ぎ…はノーカウントだ。
 すると、間髪入れずに襟首を掴まれた。
「炎真。別に、と答えるのはやめなさい。いつも言っているでしょう?」
 掴まれたTシャツの襟が首を絞める。苦しくて、炎真は顏を歪める。
「…な、何もなかったよ…どうせ、見てたんでしょ?」
「あぁ。紅葉は後で粛清です。しかし、それとこれとは違う」
 強く射抜くような眼光で、アーデルハイトは炎真を覗く。まるで、うつむいて逃げることは許さない、とでも言うように。
「私は、お前からちゃんと話を聞きたいのです。今回のことは、我々ファミリーにとっても失敗できないのです…わかっていますね?」
「…わかってるよ」
「ならば…」
 さらに何か言おうとするアーデルハイトを待つ。しかし言葉は続かない。注がれていた視線が、炎真の脇に逸れた。
「……がるる!」
「…なんです。その生き物は」
 アーデルハイトは怪訝そうに、眉を歪める。
「ナッツ」
 アーデルハイトの来訪に、後ろへ隠れたはずの、綱吉の飼い猫である。
「がぅがぅ!」
 小さな変わった猫は、アーデルハイトに向かって吠える。まるで番犬のような反応だが、この猫が他人に向かって威嚇する姿を、炎真は見たことがない。
 ふいに、炎真は、隣に寄り添うように立つナッツから、小さな震えを感じた。
 よく見れば、たてがみの中に埋まる小さな耳は、怯えたように寝ている。後ろ足も逃げ腰だ。
「が…がぅがぅ!」
 それでも、両足でふんばり、アーデルハイトに向かってナッツは吠える。
 “こいつ、臆病だから。初対面の人間になつくの、珍しいんだよ。”
 ふいに炎真は、綱吉がそう言っていたことを思い出す。
「…大丈夫だよ、ナッツ」
 ふわり、少し笑って、ナッツに呼びかける。
「アーデルハイトは僕をいじめてるんじゃない。大切な話をしているんだ」
 炎真は、アーデルハイトが目をみはるのには気づかなかった。その瞳にわずかな痛みが走るが、それもすぐに消えた。
 しぶしぶといった感じで、ナッツは吠えるのを止める。それでも心配なのか、炎真の横をぐるぐると回る。
「…とにかく、炎真」
 アーデルハイトは本題を思い出し、顏をしかめる。もう時間はない。あの十代目の家庭教師――最強の赤ん坊が部屋に戻る気配を感じた。
「…忘れないように。我々の使命を」
 それだけ言うと、アーデルハイトは炎真を突き放した。
 そのせいで、炎真は着地した先の床で、頭を数回バウンドさせるはめになった。慌てて上半身を起き上がらせるが、外にアーデルハイトの気配はもうない。
「…っ…いたた…」
 今の拍子で打った頭が痛い。ぐったりとして、ベッドに頭の左横を預ける。
「がるる…」
 すぐにナッツが近寄ってくる。うるうると潤む目で「だいじょうぶ?」と問うように見上げられるから、炎真は無理にでも笑ってみせる。
「だいじょうぶだよ…心配してくれてありがとう」
 それでも気が済まないのか、ナッツは頬を舐める。そこの傷は治っていたが、傷を癒そうとするように、何度も。
「ふはっ…くすぐったいよ、ナッツ」
 たてがみに腕を伸ばして撫でる。ナッツは気持ち良さそうに、目を細めてのどを鳴らす。
「…大丈夫だよ、僕は」
 細やかな息づかいを繰り返す、温かい生き物。その温もりに寄り添われると、まぶたが重くなる。
 ぼんやりとした頭で考えるのは、ナッツの飼い主のことだった。炎真に似ている、けれど違う、彼。
 彼は飼い猫を、臆病だと言った。けれど、怯えながらもナッツは、アーデルハイトの前に立ちふさがった。
 それが…嬉しいのは何故なんだろう?
「…ペットは飼い主に似るって…本当かな?」
 呟きは胸にしみる。胸の内には、これから自分が果たすことへの後ろめたさと、もう一つの感情が同居する。
 それを知らないだろうにナッツは、がぅ!と、同意するように吠えた。


 もしそうだったら…少し嬉しいのは、なぜなんだろう?


「―…エンマくん…あれ?」
 頭をタオルでふきながら部屋に戻った。綱吉は、すぐに炎真がベッドにもたれるように目を閉じているのを発見する。
「がぅ!」
 そのそばに座っていたナッツが、しっぽをはたはたと振って、綱吉の足元に飛びかかる。
「ナッツ!お前、なんか吠えてただろ?ダメだぞ。近所迷惑になるんだから…」
「がぅがぅ!」
「なに怒ってんだよ。少し静かに…へくし!」
 寒気がしたので見れば、カーテンが揺れていた。
「窓、開いてるし…」
 とりあえず、足にまとわりつくナッツを避けるように窓辺へ近づき、鍵を閉める。
「おーい。こんなトコで寝てたら風邪ひくよー」
 それから、炎真のかたわらに膝をつき、その肩を揺さぶる。
「ん…」
 しかし炎真は呻くだけで、起きる気配がない。
「うーん…相談したかったのになー…」
 話があるのに先に寝られたのはちょっとショックだった。
 だが、炎真の疲れたような寝顔を見れば、無理やり起こすには忍びないものがあった。
「…ま。明日でいっか」
 綱吉は気楽に決意する。なんて言ったって連休なのだ。
 それからしばらく考えた後、炎真の肩を抱えた。体格は同じくらいだから、一人でもなんとかいける気がしたのだ。
 だが、少し前と比べて鍛えられたといっても、死ぬ気でない普段の綱吉は、やっぱり鈍くさかった。
「うわっ!…あたっ!?」
 すぐに、まくれたラグに足を取られた。ぐらり、と体が横に傾く。
「ぅぐ…た、たすけて…」
 ベッドに着地はできたが、炎真の体が上に乗って、身動きが取れない。
 すぐにナッツが反応した。ぴょん!と飛びはねる…が、しかし。
「…って。ナッツ、上に乗るなよ!」
「がぅ!」
 二人の体の間にできたすき間を埋めるように、いそいそと腰を落とす。
「こらっ。遊びじゃないんだってば!」
 綱吉は怒ってみるが、ナッツはそれを全く無視する。
 あくびをし、ゆるやかにしっぽまで振る。すっかり落ちついてしまった様子に、綱吉は呆れる。
「こ、こいつ…エンマくんにすっかりなついて…ったくもう…」
 飼い主としては、やや微妙な心境だ。それでも、湯上がりの肌には心地のよい温もりではあった。
 ふぅ、とため息を吐いた。体の半分以上を綱吉の上に乗せたまま、うつ伏せになった少年に呼びかける。
「エンマくん…エンマくん?」
 やっぱり起きない様子に、こちらも無理に起こしたり体を動かしたりするのをあきらめる。
 代わりに、絆創膏の貼ってある頬を撫でる。おそるおそる、触れた。温かい。
 この転校生にまつわる今週の出来事が、頭を過る。初めて見た日の暗い瞳。見る度に増える傷。小さな声で告げられる、あきらめたような言葉。
 “――僕なんか…いいの?”
「僕なんかとか…そんな風に言わなくていいのになー」
 少し前の綱吉自身なら、口にしそうなセリフ。けれど、今の綱吉は眉をしかめるのだった。
 どうして今は、こんなに痛むように響くのか?
 彼は綱吉と違う、けれど似ている。
 だからなのかな、胸の内側で呟く。今の綱吉には、願うように思うことが、ある。
 ふぁ、とあくびをもらした。同じタイミングでナッツがあくびをしたのには笑う。
 それから炎真の、疲れたような寝顔に笑いかける。
「…おやすみ、エンマくん」


 どうか。
 優しい世界を。





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最終更新日  2010年05月16日 15時55分16秒
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