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2025.12.10
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テーマ: 日本の医療(145)
カテゴリ: 時事


厚生労働省も、これまでに議論した「多死社会」の到来(2025年問題から2040年問題へ)を見据え、欧米のモデルを参考にしつつ、日本的な事情に合わせた施策を段階的に進めています。

1. 愛称「人生会議」による普及啓発(文化の醸成)
厚労省は2018年、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という専門用語を、より日本人に親しみやすい「人生会議」という愛称に統一しました。

11月30日を「人生会議の日」に制定:
   「いい看取り・いい看取られ」の語呂合わせで、年末に家族が集まる前に話し合いを促すキャンペーンを行っています。

コンセプトの転換:
   以前は「事前指示書(リビングウィル)」という「書類作成」が重視されていましたが、現在は「信頼できる人と繰り返し話し合うプロセスそのもの」を重視する方針に転換しています。これは、日本人の「気持ちは変わるもの」という情緒に配慮した結果です。


2. 「ガイドライン」による医療者の免責的保護(制度的裏付け)
法律ではありませんが、医療現場の法的な不安を取り除くため、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂)を策定・運用しています。

チーム医療の徹底:
   医師一人の判断ではなく、看護師、ソーシャルワーカーなどを含む「多職種チーム」で判断することを求めています。

合意形成の記録:
   本人、家族、医療チームで話し合った内容を都度記録に残すこととしています。このガイドラインに沿って手続きを踏んでいれば、「医師が殺人罪や保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性は極めて低い(事実上の免責)」という解釈が司法・行政の間で共有されています。


3. 「地域包括ケアシステム」の構築(受け皿の整備)
「病院で死ぬ」のが当たり前だった構造から、「住み慣れた地域で最期まで(自宅や施設)」への転換を強力に進めています。

病床機能分化:
   高度急性期病院のベッド数を減らし、回復期や在宅復帰を支援するベッドへシフトさせています。「治す病院」と「支える地域」の役割分担を明確にしています。

かかりつけ医機能の強化:
   大病院ではなく、地域の診療所(かかりつけ医)が、患者の生活背景を知った上で、往診や看取りを行う体制づくりを支援しています。


4. 診療報酬によるインセンティブ(金銭的誘導)
医療機関がACPや看取りに取り組むよう、診療報酬(医療の値段)で誘導しています。

看取り加算・在宅ターミナルケア加算:
   自宅や老人ホームでの看取りを行った医師や訪問看護師に対して、高い報酬がつきます。

救急搬送後の「相談」への評価:
   高齢者が救急搬送された際、単に延命治療を開始するのではなく、入院時に本人・家族とACP(治療方針の話し合い)を行った場合に算定できる点数などが新設されています。
現状の課題と「日本型モデル」とのギャップ
厚労省はかなり尽力していますが、「抜本的な解決」には至っていない部分もあります。

法的拘束力の欠如:
   あくまで「ガイドライン」であり、法律ではないため、現場の医師には「後で家族に訴えられるかもしれない」という萎縮効果(防衛医療)がまだ残っています。

  「お迎え」の社会的合意:
   「老衰なら治療しない」というデフォルト化(標準化)までは踏み込めていません。あくまで「個別の話し合い」に委ねられているため、現場の負担は高いままです。

国民への浸透不足:
   「人生会議」の認知度はまだ低く、元気なうちから話し合っている人は2〜3割程度にとどまっています。


結論として
厚労省は、欧米型の「契約」と日本型の「話し合い」の折衷案を進めていますが、現場の「決められない家族」や「訴訟リスクを恐れる医師」を救うには、もう一歩踏み込んだ「免責の法制化」や「老衰死の定義(社会的ルールの明確化)」が必要な段階に来ていると言えます。







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最終更新日  2025.12.10 23:54:59
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