PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ミュー0891

ミュー0891

カレンダー

コメント新着

kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …

フリーページ

2010年12月11日
XML

この作品はフィクションであり実在の人物団体等とは一切関係ありません。
Copyright(C) 2008-2010 Kazuo KAWAHARA All rights reserved.

 イブラヒムは、アブドルアジズの唐突な申し出に、当惑していた。一体、どうしたと言うのだ。いきなりファイサリア・レジデンスを出ろというのは。

「どうされました、殿下。私は、このリヤドが気に入っております。殿下のお側に置いてください。何か私が悪いことでも致しましたか。一二月に入ってからの原油価格高騰の時に先物市場に参入されるよう進言しなかったのが、いけませんでしたか。もし、そうでしたら、お詫び申し上げます。私の完全な落ち度です」

 イブラヒムは口から出任せで、アブドルアジズに詫びた。

「いや、そうではない。そんなことなど、何とも思ってはいない。そんなはした金で騒ぎはしない」

 イブラヒムは、何が何だか分からなかった。アブドルアジズに嫌われたら、最悪だ。それにしては、アブドルアジズの顔は穏やかだった。

「実はな、誰にも言うなよ。ファイサリア・レジデンスは危険なのだ。ファイサリア・タワーもろとも、木っ端微塵になってしまうかもしれないのだ」

 イブラヒムは目を丸くして驚いていた。ファイサリア・タワー爆破の噂さは前からあった。真新しい話ではない。しかし、アブドルアジズから、そう聞かされると真実味が増す。イブラヒムは急に背筋が寒くなった。

「今度こそ、沙漠のサソリが本気で狙っているようだ。お前には無事でいて欲しいからな」

 イブラヒムは、固唾を呑んだ。声が出ない。

アブドルアジズは怒っているのではなかった。それどころか、イブラヒムを気遣ってくれていたのだ。

「ファイサリア・レジデンスを出て、他の安全な場所に移れば良いのではと言うかも知れないが、実は、イスタンブールには月の欠片・スレイマンがいてな。ちょっとしたものを届けて欲しいのだ」

 イブラヒムは、またか、と思っていた。アブドルアジズに頼まれて、アメリカのタリータウンに行って、資金をスレイマンに届けたこともあった。あの時はあわや事件に巻き込まれるところだった。イスタンブールで、また、そんなことになるのではないかと心配だった。

「心配することはない。イスタンブールではスレイマンは、客人でしかない。お前は用事が済んだら、ゆっくりと観光でも楽しんでくれば良い」

 どうやら、イスタンブールに長期滞在しろということでも無さそうだ。イブラヒムには断わることなど出来ない。

「どこでスレイマンの所在を嗅ぎ付けたのか、イスタンブールにはFBI捜査官や日本の警察もいるらしい」

 イブラヒムは、タリータウンのメンバーが揃ったと嫌な気がして来た。あの時は、結局、スレイマンがスルタンに捕まった。今回は舞台が違うから、FBIも自由に動けるとは限らない。第一、沙漠のサソリはサウジの組織だから、イスタンブールで地元の組織を阻害するような動きをするようには思えない。

「お前は知らないだろうが、アルバハのシェイク家の第三夫人もイスタンブールに滞在している。ほら、あの世界的大ヒットの"沙漠のたそがれ"の作詞をした男の母親だ。偶然というか、運命の皮肉というか、イスタンブールにシェイク家の親子が顔を揃えることになってしまった」


人気ブログランキングに参加しています。クリックのほどよろしく ウィンク






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年12月11日 23時04分46秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説「月の欠片(かけら)」] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: