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2012年02月02日
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この作品はフィクションであり実在の人物団体等とは一切関係ありません。
Copyright(C) 2008-2011 Kazuo KAWAHARA All rights reserved.

 ヤシンはそれで「鋭意折衝中」かと余程言いたかったが、ヤシンは全てターハに任せているし、実際、何も出来ない。ヤシンのようなプロモーションに力点を置いた人間に大事なのはデモテープを聞かせるよりも、段取りを付けることだ。

「ヤシン様、ご心配には及びません。ハキムさえ、プロジェクトに参加して貰えばそれで済みです。デモテープを聴いて貰うのはムハンマドの他にはハキムだけで宜しいのでは」

 それはその通りだ。エイブル・レコードでの再デビューの成否はハキムに掛かっていると言っても良い。

「そうだろうね。だが、母上が伯父上に頼むことが出来たとしても、ハキムが参加するかどうかは分からない」

「ええ、そうですね。特に、ハキムの性格からすれば、自分が納得しないことには例え誰から何と言われても参加しないかも知れませんね」

「それじゃ、話すだけ無駄なんじゃないの。いや、むしろ、母上に頼むことが却って仇になるんじゃない」

 ヤシンはもともと母ラミアに頼むことは気が進まなかった。デビューに失敗したヤシンにラミアは二度と音楽で食べて行こうなどと考えないようにと釘をさされていたのだ。

「ヤシン様、一か八か、やるっきゃありませんよ。駄目元でも。出来ることは何でもやらないと。駄目ですよ。伝手を頼って。伯父上の力に掛けてみませんか」

 ターハはまるでヤシンがラミアに働き掛けなければ、手を引くとでも言いそうな剣幕だった。ヤシンは、いやいや、ラミアにコンタクトしようとしていた。

「分かった。お前に頼んでから、もう随分経つ。とっくにイスラムでは新年になったし、もう直ぐ、西暦でも新年だ。一か八か、か」

「やっと、その気になってくれましたか。そうですね。随分と時間も過ぎました。費用もかさむばかりで。そうそう、その内に、これまでの費用を請求させて頂かなければ」

 ヤシンには、この言葉がズシリと応えた。スルタンに怒られる時がやって来る。いつかこの時が来るとは思っていたが、考えないでいるようにしていた。

 一二月下旬には、原油価格が上昇に転じた。イブラヒムは、ホッとしていた。イブラヒムの取り合えずの協力も少しは利いたかなと、思ってはいたが、イエイツの行け行けどんどんが利き始めたのだろう。こんな動きになれば、アブドルアジズに話をしやすい。アブドルアジズの協力が得られて、本格的に協力することになれば、この上昇の勢いに火が点くかもしれない。

 イブラヒムは、原油価格は本当にジオポリ(地政学的)要因の影響を強く受けると、改めて感心していた。それは、植木がファイサリア・レジデンスにいた時から議論をしていたことでもあったが、今回はその印象が特に強い。

 北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)とか言う、最高指導者・総書記が死んだと言うニュースが一九日に伝えられると、一六日までの流れが変わった。実に面白い、と考えていた。と、言うよりも、実に楽しい。これで、また、儲けが転がり込む。キムさま、イエイツさま、さまだ。

 相変わらずのイラン問題も燻っている。それにカザフスタン西部では暴動だと。やれやれ、どんどんと言ったところだった。不安が高まれば、市場は敏感に反応する。







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最終更新日  2012年02月02日 19時34分33秒
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