ヘナヘナライター 生態日記

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加藤美保

加藤美保

2004.04.29
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4月22日から28日まで、6泊7日の台湾旅行に手配旅行(フリー)で、家族で出かけた。

台湾は実にパワフルな国である。デパートも、夜の23時まで開いているところが多いし、街のレストランや食堂も多くの店が、最低でもその時間まで開いている。夜市と呼ばれるお祭りのようなイベントも、連日連夜、街のそこかしこで開かれている。夜市では、実にたくさんの屋台が軒を連ね、夜中の1時過ぎまで人通りが絶えることはない。屋台は、食堂や洋服を売るお店、マッサージをするお店、金魚釣りやゲームができるところなど、百花繚乱の様相を見せる。それは、まさに、日本の夏お祭りと同じものであり、台湾では連日連夜、一年中、夏祭りが開催されていると言ってもいいのだ。

10数年前、ひとりで台湾を旅行したときいちばん感じたことは、「この国の人は、いつも楽しそうにしているなぁ」ということであった。今回の旅行でもその思いは変わらなかった。そして、台湾人は決して愛想がいいとは言わないが、実は非常に親切で心優しい人が多いということも感じる。電車に乗っていれば、娘のために席を譲ってくれる人が後を絶たない。日本で同じように混んだ電車に娘連れで乗っていると、「こんな混んだ電車に子供を連れ込んで非常識な!」という冷たい視線を感じることがしばしばである。

外国に行くと、祖国である日本という国について考えることが、逆に多くなる。
確かに、日本の国は便利である。清潔で秩序正しくて、合理的でもある。電車は時刻表通りにやって来て、コンビには24時間開いている。スーパーに行けば、ありとあらゆる食材、食品が売っている。道路では、交通規制をある程度守っている自動車や歩行者が多い。家の中は、床暖房やシャワー付トイレなどの設備があって、非常に快適だ。タクシーやデパートのドアは自動扉が普通である。
生活の便利さ、清潔さといういう意味においては、日本にいる限りストレスを感じることは少ないだろう。しかし、それと私たちの幸福感というのは、イコールではない。合理性、清潔さ、秩序正しさを追求すればするほど、日本人のストレス耐性が弱くなっているような気がしてしょうがないのだ。
少しのことですぐにキレる。少しの不便さ、不衛生さが耐えられない。
私たちは、心に余裕がない。
余裕がなさ過ぎて、ときたま心が器からこぼれそうになるくらいに「きゅうきゅう」としていないか?


道を歩ければ、自動車も人も交通規制を守らないので、ボケボケしているとひき殺されそうになるし、電車は、まず時間通りにやって来ない。中国を旅行したときなど、10時間以上も待たされた上に、結局、予約した電車が来なかったことさえあった。
街の安い食堂では、お皿が汚れていることが多い。

台湾鉄道の乗って、台北から花蓮という街に行ったとき、自強号という特急列車の中では、携帯電話の着信メロディーが、そこかしこでワンワン鳴り響いていた。はっきり言ってうるさい。日本なら、許されざるマナー違反に違いない。携帯電話の着信騒音を理由に、一日に何件も暴力事件や、なんなら殺人事件が起こっているに違いない。しかし、台湾の人は気にしない。というより、いろいろものすごいことが多いので、着信音ぐらいではビクともしないのである。
その代わり、娘が電車の中で立っていれば、若者もおじさんも、みんなが座席を譲ってくれようとする。ホテルの朝食で、パンのつかないメニューを頼んでしまって困っていたら、娘ようにトーストをサービスで持ってきてくれたおばさんもいた。とあるレストランでは、娘のために飴の入った袋をプレゼントしてくれたお姉さんもいた。どの場合も、店やホテルの従業員としてというより、その人個人の思いやりやら優しさから発生している行為なのだ。
台湾から帰国して、スカイライナーで上野まで行き、上野から常磐線に乗ったとき、シルバーシートの前に立っていたにもかかわらず、誰も娘に席を譲ってくれようとはしなかった。いや、別に席を譲ってくれなくてもいいのだ。娘は体力も根性もある子なので、30分や1時間、平気で立っていることができる。
ただ、私は考えてしまった。
シルバーシートで、疲れ果て、眉間に皺を寄せて眠り込むおじさん達を目の前に、心に隙間のない日本人の幸せはどこにあるのだろうと。

昔、林真理子がエッセイに、「私は定期的、先進国とは呼ばれない国へ、フラリとひとりで旅にでることがある」と言っていた。彼女は、トイレが汚れて紙も満足にないような国に出かけるという。日本にいると、自分がものすごく甘やかされて、歯止めが利かなくなる怖さを感じることがあるらしい。たとえば、トレイひとつ例にとってもみても、便座を暖めたり、温水シャワーをつけるだけでは飽き足らず、便座クリーナーを設置したり、紙を引いたり。
「日本人のお尻は、年々贅沢に高尚になっていく」と、彼女はエッセイで語っていた。そんな状況をリセットするために、「トイレに紙がないような国」への旅行が、彼女には必要なのだと言っていた。

私も同じ思いである。
今回、この旅行で、娘に知って欲しかったのは、日本という国の常識、状況、考え方、言語、生活などなどが、唯一無二と思って欲しくなかったからなのだ。世界は広い。いろいろな人がいて、いろいろな考え方があり、言語があり、匂いがある。そんなことを、感じて欲しかったのである。





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Last updated  2006.03.25 20:33:48
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