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加藤美保

加藤美保

2004.10.31
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カテゴリ: 時事ネタ
日記でお茶を濁せるようなテーマでもないと思い、できるだけ触れないようにしていたのだが、この事件に対するまわりの反応が私の予想をあまりに超越しており、思い余って筆を取ることとなった。


ついにというか、結局と言うか、香田さんが殺された。

日曜日の午前中、このニュースを知り、びっくりして家族(というか夫)に話したところ、夫の感想は、「香田さんの行動は常識はずれで、殺されても仕方がないだろう」というものだった。午後、義父母がうちに来たのでやはりこの話題をふってみたら、義母の反応は夫とまるで同じもので、私は言葉を失った。

わずかな所持金を携え、短パンという軽装で、まわりから再三入国を止めるように忠告を受けながら無理やりイラクに入り、ホテルを探している最中に捕まり拘束されたらしい香田さん。
命というリスクを賭けて入国した動機は、「自分探し」だったという。

今から15年前、開放政策が軌道に乗る前のバリバリの中国にフリー旅行した私の動機も、平たい言葉で表現するなら、まさにこれ、「自分探し」以上でも以下でもなかったように思う。

当時の23歳の私は、社会の中に自分の居場所が見つからなかった。大学を卒業後に就職した出版社では、夢と現実のギャップの大きさに挫折感を抱き、失望した。そして、今思えば実に安易に、そして短絡的退職する。その後、目的もないままフリーター生活に突入。大志はあったものの、自己評価はアリ並に低く、大志とそんな自己評価の狭間で苦しみもがいていた。それが、20代前半の私だった。
あまりにも未熟な心は、遠い異国で自分を見つめ直すというお決まりのコースを求め、アルバイトで小銭を貯めて中国大陸に足を踏み入れた。

つまり、私にとってこの「自分探し」の時間はとても実りのあるものだったのだと思うのだ。

当時から、「危険地帯には近寄るべからず」という常識が、人間失格のようなフリー旅行者たちの間にすら存在していた
。その最低ラインの約束事さえ、香田さんの前では意味がなかったということだ。

15年前、大学を卒業後、三流とはいえ当時人気企業だった出版社の入社して編集者として働き始めた私が、いきなり会社を退職し、フラフラとフリー旅行することに対して、両親はまるで理解を示さなかったし、常に、「なぜ、そんなことをするの?」「どんな意味があるの?」と、いつも詰問されていたような気がする。
しかし、15年経った今でも私は答えられる。当時の私にはそれが必要だったし、そうせざる得ない何かが心の中に巣食っていたのだと。
誰にだってあるはずだ。衝かれたように、理屈では割り切れない行動を採ってしまう瞬間が。それはたぶん、その瞬間、その人には必要なことなのだと思う。選択の余裕もないまま、他人からは愚かとしか思えないような行動をとってしまう、そうせざるえない瞬間が、一生のうちに何度かるあるもんじゃないのか。

未熟で弱い、そんな心に対して、もう少し思いやりの心を持つことはできなのだろうか。どうして、そしていつから、日本人はこんなに心の狭い国民になってしまったのだろう?

香田さんの行動は、短絡的で思慮と常識が欠けていた。それは、15年前の私と同じ、まさにその通り。
しかし、彼の犯した過ちが、彼が遭遇した想像を絶する悲劇とイコールであるはずがない。
生きながら首を切断され、荒れ果てた異国の街中で遺体を遺棄される、そんな悲惨極まりない目に合わされる道理はあり得ない。
これをイコールと思える人の感性は、狂っているとしかいいようがない。



このイラクの10万人以上の死者と、そして他の犠牲者の前で、「テロリストには屈しない」とお題目を唱える一国のリーダーとはなんだ?
イラク国民にとって、アメリカを筆頭とする多国籍軍こそが「テロリスト」ではないのか。

「小泉さん、彼らは48時間以内の自衛隊の撤退を要求しています」という彼のダイイングメッセージの画像。
それ以前にネット上で流された韓国人やイギリス人の人質のものに比べて、香田さんの表情は切迫感に乏しいという人がいる。しかし、
「すいませんでした。日本に帰りたいです」と言い終えた後、画像が途切れるまでの一瞬、俯き顔を顰める、香田さんのその表情は、苦悶に満ち満ちてはいないか。


ではもし、彼が違った経緯であのような状況に陥っていたら、結果は違っていたのだろうか?
同じなんじゃないかと私は思う。
結局、この国の政治は、たったひとりの日本国民さえも助ける力もなければ、気力もないのだ。今回は、自分たちの「無力さ加減」を言い訳できる免罪符があっただけでマシだったに違いない。

香田さんのご冥福を心よりお祈りするとともに、残されたご家族に、これ以上の中傷と不幸が訪れないことを望んでやみません。





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Last updated  2004.11.01 02:14:24
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