ヘナヘナライター 生態日記

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加藤美保

加藤美保

2008.11.12
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カテゴリ: その他
日常生活からの離脱という意味では、現代の世の中ではどこに行ってもそれは果たされにくいような気がする。中国しかり、カンボジアしかり。

今から20年以上前の日本の八幡平の湯治場でもそれは可能だった。
20年以上前に私はどちらにも行ったことがあるのでこれは確かである。

どちらにも世界中を駆け巡っている世界情勢を伝える媒体が入り込む余地がなかったのだ。
中国はわかるけれど、なぜ、国内の八幡平が?と思われるかもしれない。
しかし、20年前のあの地域の湯治場にはテレビもなければ新聞も雑誌もなかった。
私はそこに取材に行って数日間寝泊まりしたが、その短い時間でまるで浦島太郎になってしまったようが気がした。俗世間の情報を入手する方法がまるでなかったからだ。
そう、私は今から20年前に、取材で八幡平の後生掛温泉オンドル小屋に2泊3日したのだ。


宿泊場所はオンドル小屋である。そこには、療養を目的にした高齢者が集まっている。
朝の4時、5時に起床して、オンドル小屋にある炊事場で朝食をつくる。朝食が終わったら、温泉に浸かる。昼食もまた自炊して、午後にまた温泉、夜にまた温泉に浸かって、夕飯も自炊。夜の8時、9時には就寝。そんな生活である。そんな生活が続くのである。津軽弁は下手な英語より難解で、何を言っているのか、宿泊客から話しかけられてもよく理解できなかった。そんじょそこらの海外より疎外感満載だ(笑)。オンドル小屋から旅館に向かうと、そこにはテレビも新聞もあり普通の日常が営まれていて、何か妙な気がしたものだ。

取材が終わり下界に復活した私は、正直ホッとしたことをよく覚えている。あんな生活はもう懲り懲りだと思った。世の中の情報が全く入ってこない生活は、わずか数日だろうが耐えられないと思ったのであった。取材に同行した編集者さんはそんな環境がとても気に入った様子だったので、感じ方は人それぞれだろう。

中国にフリーで旅行したときも似たような感じだった。テレビも見ても、報道規制されていた当時の中国では、必要な情報は全く入手できなかった。中国大陸を旅行中の20日間は、ほとんど日本人とも出会えず、何もわからないままに必死で生きていた。当時の中国には海外資本が入ってすぐだったので、流通している商品はほとんど国内産。コンビニもファーストフード店もほとんどなかった。缶飲料もペットボトルもインスタント食品も、英語も日本語もない。スーパーマーケットもない、新聞も雑誌もすべて中国産、中国語と中国料理とお茶に囲まれる日々だ。
中国を離れ香港に戻る前日に広州入りして、初めて一流ホテルに宿泊した。確か名前は「スワンホテル」だ。そこで、20日振りに英語音楽と純粋な日本語と日本料理と洋食に触れた。
ホテルのラジオ(?)から流れてきた当時人気の映画『プラトーン』のテーマ曲を聞いたときは、「私は自分の世界に戻ってきた」と思ったものだ。それだけ、自分が属する世界の文化、情報から隔離されていたのである。
翌日、広州から香港に向かう船の中で自販機を見つけたときは、喜び勇んで飲みたくもないジュースを買った。

どちらも楽な経験ではなかったけれど、人は自分が属する常識、日常から隔絶されることは必要な気がする。そこで改めて気づくこと、考えることがあるからだ。日常が連続している中ではなかなかそういう境地にいたらない。

日本のように、ひたすら平和でひたすら豊かでひたすら連続している日々を送っていると、自分が何者でどこに向かっているのかを見失いがちではなかろうか?

20年前に私が感じた世の中との隔絶感を、今、感じられる場所はあるだろうか? 少なくとももう中国はそういう場所ではなくなった。

八幡平の後生掛温泉はどうだろう?


中国を旅行中、後生掛温泉を取材中、移動中と夜はずっとウォークマンを聞いていた。それが唯一のよりどころだったからだ。当時好きだったのは、TMネットワーク。特に「レジスタンス」がお気に入りで、何か自分の境遇と重ね合わせて聞き入っていたものである。





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Last updated  2008.11.13 03:56:19
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