蒼い風 現象への旅

蒼い風 現象への旅

Jan 27, 2011
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カテゴリ: 小さい旅
もう随分と昔に読んだ作品のなかで、登場人物が色濃く残照しているのは稀だと思う。

開高の闇三部作にあたるのだが、最近読み返して、この作家の力量というか、推敲を重ねて研がれた文章が妙に自分の水に馴染んでそれこそ全作品を漁り始めている。
エッセイも含めて、ところどころに作家の文体が煌めきを放っており、ちょっと唸ってしまう。
何故、この作家に惹かれているのだろうかと文体のみに固執せずに主題や思考を追っていくうちにひとつだけ同質な要素を見つけ出した。
それは未だ個人を見つけられずにいるということだ。
つまり自分とは何か。が解らないのだ。しかもそれを解っていること。
私自身はそのことを根っこと表現するが、開高健は背骨というような言い回しをしている。

小説家になってから戦場へ行き、そこから人間とは何かを感じようとした行動の奥にある理由は本人にしか解らないだろうがそうさせたのは自分を捜すためでもあった筈だ。

肌で感じなければ何も描けないと私も思っている。
作文はその先の手段であり、それが絵画でも写真でも良かったのだろう。

昭和40年に書かれた中国に対する考察に、鋭さを見つけた。

私は中国については試行錯誤をつづけるよりほかあるまいと思っている。
何でもかんでも北京人の言動にイエス、イエスと盲従するセンチメンタリストや教条主義者もイヤだし、その反対にただ恐れおびえて憎み、不信を抱いて、ノー、ノーと反対する教条主義者もイヤだ。
この二人はいずれも観念的であることで根はおなじだ。
私はしばらくイエスといい、ノーといい、イエスといいつづけようと思う。
やがて日本はこの巨人と正面から向きあわねばならぬ日を迎える。
私たちの国と人にとって最大の試練はその日である。その日までに私たちは私たち自身の背骨をつくっておかなければならぬ。
(世界文化シリーズ18 中国)世界文化社 昭和40年10月20日





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Last updated  Jan 28, 2011 01:43:23 AM
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