蒼い風 現象への旅

蒼い風 現象への旅

Jun 21, 2011
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カテゴリ: 小さい旅
高さのある50年杉を抜けた雨が霧散して墜ちてくる。

短い休息のおかげでわたしの感覚は森と同化した絵画のように皮膚に意識を送っていた。
迷いはなかった。
ディスタゴンを装着したボディーを胸に抱いた。
宮の西側から見た裏内裏にはめぼしいものは無かったが、奥院との境にある槙の大木の張り出した根を越えて裏内裏に足を踏み入れる。
ときおり雨脚が強さを増す。

惹かれるようにするすると動いていたと思う。
思うと書いたのは、この時のわたしは自分ではなかったらしいのだ。


気がついたとき、わたしは確かに周囲を何万本かの著莪が埋めつくされていて、その空間に捕らえられたのだった。
ヤッケのフードから雫が滴って火照った躯から立ち上る湯気とじゃれている。
その向こうに静かに、ただ静かにその花はわたしを見つめていた。
恐ろしく膨大な数の問いかけ。

三脚から雨水が滴るのも忘れて立っていた。
雨雫に撃たれた著莪の葉がおいでおいでしている。
リズムよく手招きしている。
手招きしている。

それまで見たことの無い花なのに。
この花はまぎれもなくわたしだ。
もしかしたら群生の中でわたしは一本の杉であったのかもしれない。


随分前からの記憶の痛みは何処からきてどこへ行くのか。

あとから山さんに聞いた話だと、そのときわたしは5分間ほど行方不明になっていたらしい。

呼びかけてくれたらしいが、わたしには葉の琴音しか聴こえなかった。






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Last updated  Jun 24, 2011 01:51:23 PM
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