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2018.04.15
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カテゴリ: 音楽





クラシック少年だった頃の私は、オーケストラ曲が好みだったので、ピアノ曲はもっぱらオケとの共演であるピアノ協奏曲を中心に聴いていた。持っているレコード(CD)と言ったら、アレクシス・ワイセンベルクとカラヤンによるチャイコフスキーの1番、ルビンシュタインとズビン・メーターのブラームスの1番、クラウディオ・アラウとハイティンクのブラームスの2番、アルゲリッチとデュトワのプロコフィエフの3番、ヴァン・クライバーンとオーマンディーのグリーグとリストの1番・・・・・といったところ。
ピアノ・ソロの曲は、グレン・グールドによるバッハのゴルドベルグ変奏曲くらいだ。

なので、最近までヴァレリー・アファナシエフを聴いたことはなかった。
たまたま図書館で彼のインタビュー本「ピアニストは語る」を借りて読んだら、これがとても面白かったので、3年ほど前に発表して大きな話題になったベートーヴェンの3大ピアノソナタを納めたCDを買って聴いた。
その3曲は「悲愴」「月光」「熱情」というどれもよく耳にするポピュラーなものだったが、これまでに耳にすることのない全く新しい曲に出会ったような気がした。

まずそのテンポだ。こんなゆったりとしたテンポのベートーヴェンを聴いたのは初めてだった。あの有名な「月光」の第1楽章を聴いていたら、救いようもないほど暗い気持ちになってしまった。「死」を到達点として日々を生きる有限で卑小な実存としての人間存在を再確認させられるような思いに沈んだ。たまたま職場の先輩が亡くなったことがそのような気持ちを助長したのかもしれない。
アファナシエフのピアノは私にはとても「内省的」に響いた。そこにはテクニックを見せつけるような華麗さは微塵もない。ひたすら愚直な音が続いていく・・・・そんな演奏だ。

彼はインタビュー本の中で、こんなことを言っている。

なるほど、これがアファナシエフの演奏の内側にある理念なのだ。これが、ベートーヴェンの誰もが知っている曲をまるで初めて聴いたような気にさせる所以なのだろう。

彼は、ニーチェの言葉を引用してこのようなことも話している。
『演奏者は自分自身のストーリーを語るべきだが、それは作曲家が語った物語の1つと一致するものでなくてはならない。・・・・パーソナルな表現と称されるものは、音楽の分野ではベートーヴェンに始まった。彼が初めて個人的なストーリーを音楽で表現した。それ以前のハイドンやモーツァルトはもっと客観的だ。』
ピアニストとしてのアファナシエフの姿勢がうかがえる。こんな演奏家としての哲学を持ったピアニストがいるなんて知らなかった。このインタビュー本を読んでからCDを聴くと、一層ピアノの音1つ1つが存在感を増して聴こえてくる。

今年71歳のロシア出身の鬼才にこれからも注目していきたい。

最後に一句。  「  月光や   アファナシエフの   贈り物   」





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最終更新日  2018.04.18 01:12:10
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