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キャリアコンサルタントひろくん

キャリアコンサルタントひろくん

2025.10.31
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 前回の行動療法的・ソーシャルワーク的視点とは別に、今回は 心理療法的視点に基づく対応法 を考えていきます。但し今回の記事の特徴としては、具体的な方法までを詳述することができません。従って、各療法などの概要を説明した上で、最終的にセルフワークとして取り組む際の方向性(ゴール地点)を提示するという意図で、情報提供させて頂きます。

 「​ ペドフィリア ​」を心理的アプローチによって対応する為には、まずペドフィリアそのものについて、更に詳しく理解する必要があります。ペドフィリア傾向の多くは後天的要因と関連していると考えられています。具体的には以下の通りになります。

1. 発達・神経心理学的要因:脳の発達異常や機能的差異
 一部の研究では、性対象の選好や衝動制御に関わる脳領域(前頭前野や扁桃体など)の機能差が示唆されています。

2.神経発達障害との関連
 ADHDや自閉スペクトラム症などの発達特性が影響する場合があります。特に衝動制御や社会的認知の偏りが関係すると考えられています。

3.性的学習・経験の影響:児童期の性的経験や曝露
 性的虐待を受けた場合、性的興奮の対象や性的認知の偏りが形成されることがあります。

4.ポルノグラフィや性的コンテンツへの過度な曝露
 発達期に不適切な性的刺激に晒されると、性的嗜好形成に影響する可能性があります。

5.心理・人格的要因:感情調整能力の低さ

6.対人関係スキルの不足
 同年代との健全な関係構築が困難な場合、心理的距離を縮める手段として児童への関心が歪むことがあります。

7.自己肯定感の低さ
 「他者のコントロールや支配で安心感を得る」傾向と関連することがあります。

8. 社会的・環境的要因:孤立・社会的サポートの欠如
 孤独や疎外感が強い場合、児童に対する性的関心に心理的な逃避が生じる可能性があります。

9.文化的・家庭環境
 性に関する不健全なメッセージや性教育の欠如も影響します。

 つまり、 ペドフィリア傾向は生物学的要因、心理的・発達的要因、社会的環境要因が複雑に絡み合って形成されると考えられます 。単一の要因で考えずに、個々の背景に応じた総合的な理解が必要です。
 加えて、各項目が形成された原因もまた、多岐にわたる可能性があります。例えば、自己肯定感が低いのは、幼少期から父親が厳格すぎて批判的出会った上、スポーツでの挫折経験、振るわない学業成績が重なっているというような具合です。

◆重要な他者たちとの振り返りについて
振り返ることが特に有効な要素に絞って、セルフワークとして振り返る作業が重要 となってきます。
 まず最初に重要となってくるのが、 重要な他者との歴史 です。 両親(養育者)を中心として、今までどのような関係性、かかわりあいをもってきたのか? それを冷静に、具体的に、多角的に見つめ直してみる ことです。
 その際は、 自分が安心感を感じられる場所で行うことを強く推奨 します。関係者が絶対に訪れない場所(例:図書館、ネット喫茶など)が望ましいと言えます。
 また、段階的に振り返ること。一度に全部書こうとせず、幼少期→学童期→思春期→成人期の順で分けて作業が有効です。
 加えて、視覚化する。図や色、線を使うと関係性や感情のパターンが見えやすくなります。また、感情が動いた場合は、必ず休憩・気持ちの整理を行うことも大切です。場合によっては、安全性を重視し、必要に応じて心理士・カウンセラーに相談しましょう。

 重要な他者たち(家族など)との関係を振り返る方法としては、以下の方法が挙げられます。
1. ジェノグラム(家族図) を作ってみる。概要:家族構成や重要人物との関係を図式化する方法。家族関係の質(愛情・葛藤・疎遠など)も記入できます。特徴として、世代をまたいだ家族関係のパターンが見えます。愛着スタイルや対人関係パターンの理解に役立ちます。
 やり方は、自分を中心に家族・養育者・親しい人物を図に描く。各人との関係の質(良好・緊張・疎遠など)を線や色で表す。良好なら青、険悪なら赤など。そしてイベントや重大な出来事を補足的に書き込みます。イベントなどは補助的でOKです。

2. ライフライン・ワーク を作ってみる。今度は、イベントや重大な出来事を具体的に追っていきます。生涯を通じての出来事や感情を時間軸上に書き出す方法です。特徴として、幼少期から現在までの成長、トラウマ、喜びなどを視覚化できます。特定の人物との関わりの影響も把握できます。
 やり方は、横軸に年齢、縦軸に感情の高低(幸福感・悲しみ・恐怖など)を書きます。各年齢での重要出来事と関わった人物を記入します。そして、感情の変化パターンや傾向を振り返ります。
(ライフライン作成の記入の仕方)
横軸:年齢(0歳~現在)
縦軸:感情の高低(幸福/不安/悲しみ/恐怖など)
各年齢での主な出来事・経験を書き込む
その時関わった重要人物(両親・兄弟・養育者・先生・友人など)を記入
出来事の感情評価(-5〜+5など)を書き込む
(記入例)
4歳 引っ越し・幼稚園を転校する  母に無理やり車に入れられた 母 -2
7歳 運動会で褒められる 父 +3
最終的に、重要な他者ごとに、トータルの評価値が表れます。マイナスであるほど、相手に対して嫌な気持ちを感じてきたことを表します。

3 . 愛着・関係性振り返り
 幼少期の主要養育者との関係を振り返ります。ライフライン作成を行った後だと、効果的かつ効率的です。安定/回避/不安/混乱の各要素に対して、記述していきます。そして以下の3点について、自分の本音から感じたことを表現します。
どんな言葉・態度で愛情を受け取ったか:
葛藤・否定・不安を感じた場面:
これらの体験が現在の自分にどう影響していると思うか:

4.自己洞察・気づきについて総合的に考えていきます 。まずは以下について、気づいたことを説明していきます。
・幼少期~現在の自分の行動・思考・感情パターン:
・強み・資源:
・サポートが必要な領域:
・今後どのような関係を築きたいか:

◆各心理療法を組み合わせて、総合的に理解していこう
 あなたの努力の結果、自分なりに本音を踏まえながら、自分の幼少期から今までを振り返ることができたと思います。 まずそのこと自体が、とても素晴らしく、勇気の必要なことだったことでしょう。私はあなたの行動力、意志力、そして勇気を最大限に賞賛したい気持ちで一杯です
 ペドフィリアでは、重要な他者との関係が十分に作られなかったことが原因することが多いと言えます。そしてその原因は、あなたではなく、むしろ相手側(両親・養育者他)にあるケースも珍しくありません。ですから、 まずは現在のあなたと重要な他者との関係・かかわりについて整理したり、かかわり方を変えることが、間接的ではありますがペドフィリア治療に有効になってきます。
対人関係療法 (IPT:Interpersonal Psychotherapy)は、ペドフィリア(小児性愛傾向)そのものを直接的に治療する方法ではありませんが、虐待体験に起因する「対人関係の歪み」や「自己認知の偏り」を修正する上で、有効な補助的アプローチとなり得ます。
 対人関係療法は、もともとうつ病治療のために開発された心理療法で、焦点は「過去」ではなく「現在の対人関係」に置かれます。そして、ペドフィリア傾向を持つ人の中には、幼少期に虐待(身体的・性的・情緒的)を受け、愛着や自己認知が歪んだまま成長しているケースがあります。
 そこで、「他者との関係のパターン」「感情の表現の仕方」「自分の価値や安心感の感じ方」、などに焦点を当てることで、過去の虐待体験が、今の関係性にどんな影響を与えているかを“安全な場”で理解・再構築していくことが可能になるのです。
 したがって、トラウマ体験の「直接的な再体験」や「曝露」は行いませんが、被害の影響を間接的に修正することができるのです。

 次に併用する心理療法が、 トラウマ・インフォームド・ケア(TIC) です。これは、トラウマが個人に与える深刻な影響を理解し、その影響を踏まえて医療やケアを提供する方法です。このケアの要点は、トラウマを経験した人が抱える心と体の痛みを認識し、適切にサポートを受けることにあります。セルフワーク中心であれば、セルフケアをすることです。
 トラウマは心と体に長期的な影響を与えるため、患者に安全で安心できる環境を整えることが不可欠です。こうした配慮を通じて、患者が自分自身の体験や感情を理解し、受け入れやすい状況を作り出します。
 トラウマ・インフォームド・ケアに関しては、こども家庭庁が公開しているWEBサイト
『​ わたしに何が起きているの? ~自分についてもっとわかるために~ 支援者用ガイド ​』
が、わかりやすく作られています。そもそも読んでもらう対象が、実際に虐待を受けた子どもたち自身です。
【ガイドの概要】
 このガイドは、虐待やさまざまな被害を受けた子どもたちが、トラウマや逆境について知り、自分自身の状態を理解するための心理教育用の教材として作成されました。イライラや落ち込み、やめられない行動や自他を傷つけてしまう行為がなぜ起こるのか? 子ども自身がわかるように、支援者が一緒に読みながら、トラウマの影響について理解を深めていくものです。

 このガイドでは、トラウマと言う表現を使わずに、敢えて「こころのケガ」という表現で説明しています。「自分はおかしいのかもしれない」「自分がダメな子だから」といった子どもの否定的な自己イメージが軽減され、「自分はひとりではない」「自分の行動は変えていくことができる」という前向きな気持ちが持てるようになることで、子どもの回復や成長が促すことが目的です。

 トラウマに関する心理教育をおこない、こころのケガをしていることに気づき、適切な対処法を学ぶことよって安全感や安心感を高めるアプローチは、トラウマインフォームドケア(Trauma-Informed Care;TIC)と呼ばれます。TICは、トラウマのエピソードを扱う専門治療とは異なり、健康や安全に関する基本的な情報を共有することを目的としており、いつでも、だれでも、実践できるものです。
 とくに、こころのケガをした子どもたちと関わる現場においては、子どもたちの行動の背景にあるトラウマについて理解し、適切に対応することで、再び子どもを傷つける“再トラウマ”を予防しなければなりません。トラウマの観点から理解する「トラウマのメガネ」を用いて子どもの行動をみると、それらは“問題行動”というよりトラウマ反応であることがみえてくるかもしれません。こころのケガの影響について、支援者が子どもとともに考え、その子どもに役立つスキルを一緒に練習していきましょう。

 「トラウマのメガネ」を使うと、第1に子どものことがわかりやすくなります。対人トラブルや暴言・暴力、生活上の不適応や体調不良といった子どもの行動や状態の背景や理由がみえやすくなることで、子どもを理解しやすくなります。子どもと一緒にこころのケガについて話し合うことで、子どもは自分の気持ちや状態に気づけるようになります。また支援者が子どもを理解することで、子どもは支援者に「わかってもらえた」と感じ、前向きな気持ちになれるかもしれません。

 第2に子どもへの対応が変わりやすくなります。子どもの行動や状態を“問題行動”ととらえると、支援者の叱責や禁止、生活上の制限が増えていきます。もちろん、危険な行為を制止したり、ルールに則った対応をしたりすることは、子どもや周囲の安全を守るために欠かせません。
 しかし、普段のかかわりにおいて、叱ったり、制御したりするばかりでは、子どもは更なる心のけがを負ってしまいやすくなります。“問題行動”の背景にあるトラウマを理解せずに支援しても、効果が得られないばかりか、さらに状況が悪化するという悪循環が生じます。
 お互いの安全感や安心感が高まるやりかたに変えていくために、日常での関わりや指導法を「トラウマのメガネ」を用いて、見直していきましょう。

 第3に支援者の安全を守りやすくなります。こころのケガを負った子どもたちに対応することで、支援者もまたトラウマの影響を受けます。多忙さによる過労や、日常業務のストレスに加え、子どもや保護者からの暴言や暴力にさらされたり、挑発的な態度や不穏な状態(リストカットや自殺未遂など)に対応したりするのは、だれにとってもつらいことです。子どもたちの回復する姿が見られず、日々、目の前で起きているトラブルへの対処に追われていると、心身共に消耗してしまうこともあるでしょう。
 業務上、だれにも生じる影響に自覚的であることで、自分の健康状態や支援の質を保つことができます。つまり、トラウマインフォームドケア(TIC)は、子どもと支援者の安全と安心を守るために役立つアプローチなのです。
Part.Ⅰ:オリエンテーション:~子どもへの心理教育に取り組むまえに~
Part.Ⅱ:『わたしに何が起きているの?』:解説
Part.Ⅲ:安全な組織づくりに向けて

Part.Ⅰ:オリエンテーション:~子どもへの心理教育に取り組むまえに~
 子どもに『わたしに何が起きているの?』を使った心理教育をおこなうまえに、支援者が心理教育の目的をよく理解し、自分自身の準備性を高める必要があります。支援者同士で読み合わせをして、子どもにどんなふうに心理教育をおこなえばよいか、イメージをつかんでみましょう。
 こころのケガについての心理教育のポイント。こころのケガとはどのようなものか、また、どんな影響が生じるのかを説明することを心理教育といいます。子どもの被害体験や状態について深く尋ねるのではなく、「一般的には、こうなることが多い」「多くの子どもがこうした症状をかかえている」という情報を伝えます。心理教育は、こころのケガについての一般的な情報を伝えるものです。
 子どもは、こころのケガとなる原因となったできごとだけでなく、その影響で表れている症状についても、「自分だけに起こっていることだ」と思い、「人に知られたら恥ずかしい」と感じていることが少なくありません。
 そうした体験をしたのは「あなただけではない」と伝えるために、「実は、たくさんの子どもが経験している」という事実とともに、「こころがケガをしたなら、だれでもそうした症状が出るもの」という心理教育を繰り返すことによって、子どもは自分の体験や状態を少しずつ理解していきます。

 安心できると、自分の症状について話せるようになる場合もあります。こころのケガによる症状を理解するための取り組みは、無理にやるべきことではありませんが、反対に「なかったことにすればよい」というものでもありません。子どもが支援者との安全な関係性のなかで、自分の状態に気づけるようになることが心理教育の目的です。
 また、子どもの発達や年齢にあった心理教育の仕方を工夫することが大切です。

 こころのケガをすると、次のようなこころやからだの反応が起こることがあります。こわい、悲しい、つらい、イライラする、腹が立つ、心臓がドキドキする、めまいがする、涙が流れる、叫びたくなる、どなり散らしたくなる、走り出したくなる、息苦しくなる、だれとも話したくなくなる、静かにひとりになりたくなる、まわりのことが遠くで起こっていることのようにぼんやりしてみえる などです。

 全体を読み合わせたら、順番に、それぞれの感想を共有しましょう。子どもが「自分にもあてはまる」と話したときに、「そうなんだね、こころのケガをしているのかもしれないね」と受けとめます。支援者自身も、冊子を読むことでいろいろな気持ちや反応が生じるかもしれません。それもまた自然なことです。詳しくは、Part.Ⅲを読んでみてください。

 心理教育をしているときの子どもの様子をよく観察しましょう。たとえ自分のことはまだ話せなくても、支援者が伝える内容には関心を向けていたり、集中して聞いていたりする場合も多いものです。子どもの様子をみながら、子どもが不安や緊張を感じているようなら、リラクセ―ションの練習につなげるとよいでしょう。

 こころのケガは、こころとからだの不調、行動面の変化として表れることがあります。こころのケガのために、イライラしやすくなり、衝動的で攻撃的な言動が増えることがあります。対人関係がうまくとれなくなったり、他者を傷つけたり、適切な距離がとれなくなったりします。自己否定感や否定的な気分によって、自傷行為や依存的な行動が増えることもあります。これらはしばしば「症状」というよりも「問題行動」とみなされることがあります。
 冊子を読むときは、子どもが内容を理解できているか、言葉の意味がわかっているのかを確認しながら進めます。子どもの能力や体調、心理的な状態に気を配りましょう。子どもの理解に合わせて、簡単なことばで言いかえたり、わかりやすい例を挙げたりして、サポートしてください。

 子どもが落ち着きを失ったり、不安そうな様子をみせたり、イライラするといった不穏な状態になったら、子どもに今、何が起きているのかに関心を向け、おだやかな口調で、子どもの状態を尋ねてみましょう。

 子どもは冊子の内容が自分にあてはまると思うと、こわくてソワソワしたり、緊張してイライラしたり、読み合わせをやめたくなったりするかもしれません。こころのケガの話を聞くのは、つらいできごとを思い出すことになるかもしれないからです。
 子どもが話を聞こうとしなかったり、「自分には関係ない」と言い張ったりすることもあるでしょう。ふざけたりして話をまじめに聞かないとか、反抗的な態度などがみられるかもしれません。こころのケガの話を聞いて、そうした反応が起こることは自然な反応のひとつです。
 いずれの場合にも、「あなたの場合はちがうかもしれないけど…」「あなたにあてはまるかどうかは、
はっきりわからないけど…」と言いながら、「こんなふうになる子は、けっこう多いんだって」などと間接的な伝えかたをしていきます。そして「今、どんな感じがしているの?」とおだやかに尋ねてみましょう。
 子どもの状態によっては、一緒にリラクセーションをやって、子どもと支援者が一緒に気持ちを落ち着かせる練習をしましょう。

Part.Ⅱ:『わたしに何が起きているの?』

 『わたしに何が…?』をページごとに解説しています。事前に目を通したうえで、冊子を使ってください。子どもと話し合うときには、子どもの考えや気持ちに関心を向けましょう。子どもに合わせた伝えかたを工夫してください。子どもと支援者がお互いに安心して話し合えるという体験そのものが回復を後押しします。 
 Part.Ⅱの目的は、子どもに本ガイドが何のためのものかを説明するためです。こころのケガをした子どもは、自分がおかしくなってしまったと思いがちです。また、自分でもどうしてすぐに調子が悪くなったり、いろいろなことがうまくいかなかったりするのかがわからず、自信を失っています。だれにも理解してもらえないと感じて、ひとりぼっちだという孤立感を高めていることもあります。
 「あなたは、ひとりではありません」というメッセージを伝えながら、大人が一緒に取り組んでいく姿勢を示して、子どもを安心させましょう。

<ポイント>
●自分のこころやからだに起きていることを理解すると、子どもは「自分だけがおかしいのではない」「だからうまくいかないのか」と思えるようになります。

●しかし、これまで、こころのケガについて考えないようにしてきた子どもにとっては、「こころのケ
ガ」という言葉を聞いただけで不安になってしまう場合もあります。

●また、「自分にはいいところなんてない」といったように、強い自己否定感をいだいていると、自分のことは人に知られたくないとか、話したくないと思うものです。自分のことを話すと、怒られたり、バカにされたりするのではないかとおそれて、不安になる子どももいます。
 子どもがこうした抵抗や不安を感じるのは、もっともなことです。「こういう話をすると、何かイヤな気持ちになるんだね」と、子どもの気持ちや考えに耳を傾けてみましょう。子どものペースに合せて、進めてください。

 「こころのけが」=心身の不調は、なんらかの原因によって引き起こされること、そして、不調に対してはケアが必要であるという基本的な考えを子どもと共有します。
 「こころのケガ」をイメージしやすくするために、まずは身近な「からだのケガ」を例に挙げています。からだのケガは、だれでもすること、そして、ケガへの手当(処置)が必要であることを伝えます。
 からだがケガをしたらなんらかの症状がでるのはあたりまえであり、必要な手当(処置)を受けるのは当然であることを子どもと確認しましょう。
 からだのケガを例にしながら、こうした基本的な考えを子どもと確認しておくことで、③以降の「こころのケガ」の理解をしやすくなります。

 からだのケガをしたり、手当(処置)を受けたりすることは、なんら恥ずかしいことではないと確認しておくことで、「こころのケガ」にまつわる恥の感情を見直しやすくなるでしょう。
 もし、子どもがからだのケガを「本人の不注意だ」と言ったり、「自分はからだのケガをしたときに怒られた」という体験を語ったりしたら、その気持ちや考えについてよく聴いてみてください。

 ケガをしたらどうなるかな?について、からだのケガを例に挙げて、ケガをすると一時的にでもできなくなることがあるという基本的な考えを子どもと共有します。
 からだのケガによって、入浴や移動といった日常動作が困難になったり、休養をとらなければなら
なくなったりすることを、具体的な例で説明しています。
 そして、からだのケガによって「うまくできないこと」は、怠惰や意思の弱さによるものではなく、あくまで身体的な機能が原因であることを子どもと確認しましょう。

 からだのケガの場合、ケガが目に見えやすく(内臓の損傷など見えにくいものもありますが、レントゲンやMRIなど「からだのなかが見える機械」を使うことができます)、周囲もねぎらいの言葉をかけやすいものです。ケガをした本人はつらくても、助けてくれる人もいます。こうした経験があるか、子どもに尋ねながら、「ケガのつらさ」や「助けてもらえた、もしくは助けてあげたときの気持ち」を話し合ってみましょう。
 こころだってけがをするんだって。からだだけではなく、こころもケガをするという基本的な考えを子どもと共有します。「こころが折れる」「血がにじむ思い」という表現があるものの、実際には、からだのケガと異なり、ケガの状況は目に見えにくいという特徴があります。
 もし、「こころが折れる」といった表現の理解が難しい場合は、「こころがヘコむ」など、その子どもにわかる言いかたに変えてみましょう。
 「そうだね、こころは目に見えないけれど、こころがヘコんで、つぶれてしまったような、苦しい感覚はたしかにあるよね」と、こころのケガを感じ取りやすくなるような言葉かけをしてみてください。

 こころのケガは、周囲から見えにくいだけでなく、自分自身でもわからないものであるという基本的な考えを共有することで、子どもが自分の状態に目を向けていく動機を高めていきます。
 こころのケガになりやすい体験は、「とてもこわいこと(客観的な危険性)」「すごくつらいこと(主
観的な苦痛)」「自分ではどうにもできなかったイヤなこと(コントロールできない状況)」のいずれかであることが多いと説明します。どれも、ショックを受けるできごとです。
 たとえ、そのときは苦痛を感じられなかったとしても、感覚や感情がうまく感じられなくなること自体が強いショックによる反応といえます。

 こころがケガをするかもしれないできごとについて。こころのケガになるかもしれない具体例を挙げることで、こころのケガに関する一般的な知識を得て、けっして稀なことではないと知ることで、子ども自身の体験を整理しはじめるためのきっかけにします。
 いずれも、子どもが経験しやすいできごとです。ここでは、子ども自身が体験したことについて、具体的に話をさせる必要はありません。「こういうできごとが、こころのケガになるんだね」「『こんな経験をしているこどもって、けっこういるんだって」そうなんだね。知ってた?」というふうに、一般的な情報として心理教育を行ってください。

 子どもが自発的に、「私はこれ」と話したり、□欄にチェックを始めた場合は、話されたことを聴くだけでかまいません。子ども自身が、「私も!」と話し始めることはめずらしいことではありません。
 ここでは、「あなたにも、そういう経験があったんだね」と、受けとめましょう。

 でも、こころがケガをしているかって、どうすればわかるの?について。こころのケガをしていることに気づかないまま、こころの苦痛が行動に表れていることがあるという基本的な考えを共有します。一般にみられやすい子どもの行動化について理解します。
 行動化の具体例としては、「暴言や攻撃的な言動」「暴力」「引きこもり」「過呼吸(過換気症候
群 )」を表しています。子どもに「これは何が起きているところだろう?」と話し合うための材料にしてください。
 「暴言や攻撃的な言動」や「暴力」は、そうした言動をとる(加害)こともあれば、受けやすくなる(被害)こともあります。イラストを見ることで、子どもはさまざまな場面を思い浮かべるでしょう。「そんなふうにも見えるね。あなたは?」と、話し合うことができます。
 子どもが「自分もあった」と話し始めたら、「そんなことがあったんだね。こころにケガをしたのか
もしれないね」と受けとめてください。

 これらの行動化は、必ずしもこころのケガだけが原因で生じるものとは限りません。あくまで、こころのケガのサイン(兆候)のひとつとして捉え、「こういう行動は、こころのケガによるものかもしれないね」と伝えるとよいでしょう。

 いろんな行動の裏には、こんな気持ちがあるかも?について。こころのケガによって生じる否定的な感情や思いについて、基本的な理解を共有します。例をもとに、子どもと話し合いをします。こころがケガをしたあと、ネガティブな気持ちをいだきながらも、うまく表現できない子どもは少なくありません。「こんな気持ちになることがあるんだね」と、例をみていきます。
 否定的な感情や不快な気分が強まったり、孤立感が生じたりします。行動の裏にあるさまざまな気持ちについて話し合いながら、「こころがケガをしているときは、そういう気分になるもの」「とてもつらい気持ちだったんだね」と伝えてあげましょう。

 自分の感情や思いがわからなくなることも、感情麻痺というこころのケガの影響のひとつと考えられます。自分の気持ちがわからないからといって、苦痛を感じないわけではなく、むしろ自分がおかしくなってしまった、自分でもどうしていいかわからないと思って、とまどう子どもが多いものです。

 こころのケガの悪循環について。こころのケガによって生じた症状や行動に対して、周囲から叱責や非難をされ、ますます自責感や不信感が強まってしまうという悪循環が起きやすいという基本的な理解を共有します。
 こころのケガによって、怒りや否定的な気持ちが強まり、自分でも行動がコントロールできなくなることがあります。それはこころのケガによる症状ですが、“問題行動”とみなされやすいものです。
 子どもがこころのケガをしていることを、周囲の大人が気づいていないことがあります。こころのケガは、からだのケガと違って外から見えにくいからです。そのため、大人は、手当(処置)よりも叱責(処罰)をしやすくなります。その結果、子どもはますますイライラして、自信を失ったりしてしまいます。

 子どもと一緒に「こんなことあった?」「こころのケガがあると、周囲との関係性がどんどん悪くなってしまうことがあるんだね」と話し合ってみましょう。
あわせて、支援者自身がこの悪循環に陥っていないか、考えてみましょう。支援者がよかれとやってきたこと(「子どもの将来のために注意した」「どんな理由があっても、集団の規律は守らせなければならない」「周囲に示しがつかない」など)もあるでしょう。
 もし「しかたがない」「こどもがちゃんとしさえすれば…」といった自己弁護や自分の行動を正当化したい気持ちが起きたら、同僚やSVに話して、落ち着いて考えてみましょう(Part.Ⅲ を読んでください)

 こころのケガは、からだにも影響することがありますについて。こころのケガによって生じやすい身体的な反応や生活面への影響について基本的な理解を共有します。
 こころのケガによって、体調不良が起きたり、生活のリズムが崩れたりすることがあります。それによって、さまざまな問題が起こりやすくなります(例えば、不眠によって昼夜逆転の生活になり、不登校になるなど)。
 子どもがそれまでどんな生活をしてきたのか、今はどうなのか、話し合ってください。具体例としては、「無気力、集中力の低下」「息苦しさ、疲れやすさ」、「疎外感」「不眠、抑うつ気分、不安」「ゲームへの依存」を表していますが、答えはありませんので、子どもに「これは何が起きているところだろうね?」と話し合うための材料にしてください。

 これらは、必ずしもこころのケガの影響であるとは限りません。まずは、身体症状の診察や検査を受けることが大切です。身体的な病気の可能性の確認が優先されます。

 こんなことって、なかったかな?について。こころのケガによる行動化(アクティングアウト)は、本人なりの対処法であることについて、子どもと支援者で共通認識を持つために、基本的な理解を共有します。
 行動化には、いわゆる問題行動や非行とみなされるものが少なくありませんが、こころのケガを体験
した子どもにとって、その環境を生き抜くためにやらざるをえなかった、自分なりの対処法といえます。そうせずには生きられなかった子どもの生活や境遇を理解しましょう。
 この点が極めて重要であり、これはペドフェリアを有する患者にとっても、完全に有効となる理解になります。性加害は許されることではありませんが、性加害をしたいと思うようになった背景は十分に理解しましょう。
 これらの対処法は、つらい気持ちを紛らわすための一時しのぎとしては効果があったはずです。イライラやさみしさをしのげるという効果があったのだと気づくと、それらの行動化が、苦痛、無力感、孤立感などを感じないための対処法だったことがわかりやすくなります。
 「そのときは、気分がよくなったり、すっきりしたんだね」と、子どもなりの対処法を認めることが大切です。但し、ペドフィリア患者については、それは悪しき自己治療行為であったことをしっかりと受け止めることが大切になります。辛かっただろうけれど、対処法を大人として完全に間違えてしまったわけです。 

 自他を傷つけるような不適切な対処法について、支援者が頭ごなしに禁止したり、否定したりするのではなく、そうした行動をとらずにはいられなかった子どもの気持ちに耳を傾けましょう。子どもが「理解してもらえた」と実感できてこそ、「もっといい対処法に少しずつ変えていこうかな」と思えるようになるものです。

 こころの痛みやつらさをやわらげるために、について。安全な対処法を紹介し、具体的なリラクセーションのスキルを一緒に練習します。呼吸法と筋弛緩法は、いつでもどこでも、一人でもできる安全な方法です。一緒にやりながら、生活のなかで使えるようにサポートしてください。
 リラクセーションをやりたがらない子どもは少なくありません。「やっても無駄」「そんな方法では、自分の強いイライラは収まらない」「気を抜いてはいけない、危険だ」と思っているのかもしれません。
 逆境的な環境で生きてきた子どもは、つねに緊張しているため、リラックスする感覚がわからないこともあります。こうしたリラクセーションへの抵抗感こそ、こころのケガによる影響であると理解する必要があります。「これまでイライラすることばかりだったら、そんなの効果ないって思うのも当然だろうね」「ずっと緊張していたら、リラックスどころじゃないものね」と心理教育をしながら、「少しずつやっていこう」と励ましていきましょう。

 リラクセーションの効果を感じにくい子どもには、気持ちの強さを表す温度計のワークや、実際に心拍数を測るというバイオフィードバックを活用したりして、少しでも数値が変わったという客観的な指標を用いるのも役立ちます。
 生活のなかで何度も練習できるように、引き継ぎなどを工夫しましょう。生活の担当者(寮担当者、里親、保護者等)とも、冊子の内容を共有し、同じ視点を持って子どもを支えられるようになることが望まれます。

 だれとなら話せるか、子どもに尋ねてください。また、この冊子を読み終えて終わりにするのではなく、今後も一緒に取り組んでいこうと伝え、継続的なケアにつなげてください。


Part.Ⅲ:安全な組織づくりに向けて

 組織全体でTICに取り組んでいくためのポイントを知り、安全な組織づくりをしていきましょう。支援者自身のこころのケガに対する感じかたを自覚しておくこと、支援者も自分自身への適切なセルフケアをおこなっていくこと、組織としてそうした取り組みをサポートすることが、効果的なTICの活動を支えることになります。
 だれにとっても安全・安心な生活環境や関係性を築いていくことは、子どもの回復のみならず、支援者の健康や支援の向上につながります。

 こころのケガを扱うための支援者と組織のありかた、について。このガイドは、子どもが自分のこころのケガの影響に気づくためのものですが、その前提として、支援者が子どものこころのケガの影響に気づいていること、さらには、支援者自身がこころのケガについての自分の感じかたを自覚している必要があります。
 だれでも子どものこころのケガの話を聴くと動揺させられたり、自分自身のこころのケガの反応が起こったりします。支援者へのサポートやセルフケアがとても重要です。そしてこの部分が、セルフケアによってTICを実践しようとするペドフィリア患者の方々にも有利に働くわけです。

 だれでも、人生のなかで、程度の差はあれ、なんらかのこころのケガを体験しているものです。この冊子を読むことで、自分自身が過去にこころのケガを体験したときの苦痛や緊張感などを思い出して、ストレス反応が生じることがあるかもしれません。
 もしも、こころのざわつきが強く、自分でも苦痛に感じるほどだったり、冊子についても「何の役に立つのかわからない」といったイラ立ちを感じたりするようなら、あなた自身のケアについて、専門家に相談しましょう。
 こころのケガについて子どもと支援者が安心して話せるようになるには、支援者であるあなたと組織のみんなが安全・安心を感じていられる必要があります。
 支援者がチームになって、子どもの回復を支えていくことが求められます。支援者もまた、チームや組織に守られていなければなりません。

 支援者自身が子どもへの支援について感じたことや思うことを、同僚やSVにも率直に話せること、職員会議で自由に意見を言えること、また、子どもが“問題行動”を示したことで、担当職員が責められたりすることなく、何が起こったのかを職員みんなで話し合い、共有できるような組織の文化・風土を築いていくことがTICを進めていくための組織の目標です。こころのケガを扱っていく組織においては、組織の活動の場自体やメンバー1人ひとりの安全や安心を守ることが大切であるという価値観を共有することが求められます。


 長くなりましたが、重要な他者との関係・かかわりを見直し、新たな人間関係(断絶も含む)を築いていく為の対人関係療法。そして自分の心の傷を、自分の心を守りながら、認めて受け入れていく為のトラウマ・インフォームド・ケア。この2つをご紹介してきました。そして最後に紹介するのが、 「​ 認知行動療法 ​」 になります。
 ご存じの方もおられるかもしれませんが、 認知行動療法 は自分を苦しめる歪んだ考え方を発見し、効果的に修正していくことで、生きづらさを解消していける心理療法です。しかも自分で行うことができるセルフワーク性も強く持っています。
 また行動療法の性格ももっているので、マインドフルネスなどの瞑想的な方法をはじめとして、「​ コーピング ​」としても有効に活用できる内容がある心理療法でもあります。

 私が長年認知行動療法を実践・心理教育などをしてきて、 最も失敗するパターンの1つが、自分の本音をとらえていない場合です。 ですから認知行動療法といえども、しっかりと自分を理解しつつ受け止め、本音を把握してあげる。その上で、歪んだ認知を修正できるとき。高い効果が見込めるのです。

ペドフィリアの寛解・治療を目標とする場合、長期戦になるかもしれません。しかし、 適切に対応し続ければ、波を描きながらも、右上がりに効果は高まっていきます。 カンの鋭い方ならわかるかもしれませんが、 ペドフィリア治療の対象になる原因は、ペドフィリア以外の生きづらさ全般を同時に駆逐する威力も有しています。あなたの人生が開けていくことを、心から願っています。スマイル





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Last updated  2025.10.31 18:52:21
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