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#宮沢賢治 #AIイラスト
一五五
「温く含んだ南の風が」より
一九二四、七、五、
温く含んだ南の風が
かたまりになったり紐になったりして
りうりう夜の稲を吹き
またまっ黒な水路のへりで
はんやくるみの木立にそゝぐ
……地平線地平線
灰いろはがねの天末で
銀河のはじが茫乎とけむる……
熟した藍や糀のにほひ
一きは過ぎる風跡に
蛙の族は声をかぎりにうたひ
ほたるはみだれていちめんとぶ
……赤眼の蠍
萓の髪
わづかに澱む風の皿……