DJ Kennedy/life is damn groovy
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雨が多い。季節がだんだんと変わっているからなのだろうけど、この頃から夏が終わるまで、「ああ、日本もアジアだな」と思うことしばしば。やはり湿度がとても高い。四季のある国ならどこも同じように、季節の移り変わりには雨が降るだろう。NYは緯度が青森と同じくらいだし雨季もないので日本ほどではないけれど、でももう少しすると、夏を呼び込む雨が降り出す。学生時代、まだお酒をよく知る前だったが、学校の帰りに大雨に降られて、ふと私はボーイフレンドと通りかかったバーに入った。アップタウン、午後8時。 バーは会社帰りのビジネスマンやデイトの待ち合わせらしいカップルで賑わっていた。私達はカウンターに座って、奥で立ち働くバーテンダーにビアをオーダーする。雨に濡れた体が冷たくなって、冷えたビアが最初のうちはきつかったけれど、徐々に体温が戻ってくると周囲の様子が目に入り始めた。かと言ってビジネスマン達の話が気になったということでもないし、素敵な男性を探しちゃおうなどと、女同士でなければできないことは、付き合い始めたばかりの彼の前でするわけがない。1日の出来事を夢中で話す彼の顔を見ながらも、私の意識は目の前のバーテンドレスに釘付けになっていた。まず、初めて見る女性のバーテンダー。とても若くて私とそれほど変わらないようにも見えるが、バーで大学の話なんてしている子供達とは、身に纏う雰囲気がまるで違う。黒いTシャツを着て長い髪は無造作にポニィ・テイルにし、グレイの瞳に合わせてなのかシャドウもグレイを入れていた。俯き加減の彼女の顔つきがとても美しくて、同じ女性でも見とれてしまうくらいだ。そして、人目も憚らず見つめてしまったのは、彼女の横顔だけではなかった。店の奥から出てきた客のオーダーを取って彼等がテーブルに戻っていくと、彼女は自分の為にグラスを出し、セラーの扉に手をついて一瞬考え、それから白いワインのボトルを取り出しグラスに注ぐと、また元に戻してパタンと扉を閉めた。 彼女は、まるでそこにひとりで居るように見えた。そしてグラスのステムを柔らかくつかむと、口元をきゅっとしめたまま、僅かな隙間からワインをすーっと注ぎ込んだ。その様子が、ちょっとロックで、でもやっぱりファンクで、たまらなくかっこよかったのだ。「何故白なの?」 小娘(=私)はとうとう尋ねてしまった。すると彼女はふっと笑顔になり 「白の方が酔えるのよ」完全ノックアウト、な答えだった。私はきっと、だらしなく口をぽかんと開けて「へ、へぇ」とでも答えたのではなかろうか。私だって、ワインは飲んだことがある。でもその経験は決して心をぐっと掴むものではなかった。ファンシィなフレンチやイタリアンで、ソムリエの説明に耳を傾け、その夜のお料理に合ったワインを選ぶ。その流れは確かなものだ。でも、彼女の方がずっと素敵だと思えた。ちょっと酔いたい、ワインでも飲もう、それなら白を。「ワインの楽しみ方」なんて本を見せたら彼女は鼻先で笑うだろう。心が欲しいと思うならそれでいいじゃないの。言葉はなくとも彼女の醸し出す雰囲気がそう語る。これが、こんな雨の夜に思い出す、私に初めてGroovyなワインを教えてくれた人。NYC Bar Scene (Click and enjoy the music videos!)にほんブログ村Thank you so much for all your support!
April 20, 2010
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