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2005年04月12日
深い森
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屋久島の安房港に着いた。
乗客たちはそれぞれ知り合いや家族の出迎え、ツアーのバスやレンタカー会社の車に乗って足早に安房港を去っていく。
ひとり旅の僕には、誰も迎えが来ない。少しばかりの自由と少しばかりの寂しさを覚えた。
遅い昼食をとるために港から見えているスーパーらしききれいな建物に行ってみる。
中には小さなレストランがあったのでそこで食事をした。
水と食料を調達し、近くのバス停まで歩いていく。
バスの時刻表を見ると、なんとバスが来るのは一時間半後だ。
重い荷物もあるので待つことに決めた。
しかし突然の大雨、座る場所も屋根もないバス停で傘をさしてる姿は、まるで猫バスを待っているトトロのような気分だ。
やっと乗り込んだバスで予約しておいたホテルに着いた。
ホテルの店主はやけに僕を気にかけてくれる。
登山する予定があれば絶対に登山届けを出すようにとか、
下山したらホテルまで連絡するようにと、
まるで以前に僕みたいな観光客になにかがあったのかと思わせるような感じだ。
2日後に縄文杉のコースに登山する予定だったが、数日来の大雨で道路が通行止めになっているらしい。
翌日、天気は良好でバスに乗り、北部の終点でもある永田へ行く。
永田から見る屋久島の山々はとても神々しく、まるで僕に近寄るなとでもいいたそうな、人を寄せつけない迫力がある。
翌日の縄文杉登山のトレーニングがてら、バスで来た道を歩けるところまで歩いて戻ることにする。
11月ながら亜熱帯の気候なので温暖に感じられた。
ウミガメが産卵に来るいなか浜を過ぎるとおなかがすいてきた。
結局3時間ほど歩いただけで、空腹を満たすためバスに乗り、宮之浦へ行く。
安房とならび屋久島のもうひとつの港町である宮之浦。
安房よりも大きな街である。
バス停の近くに観光センターがあり、そこに入る。
1Fは土産物屋で2Fは食堂になっていた。
初めて食べる飛魚。刺身になっているのだが小さく堅い骨があり、食感はいまいちだった。
観光センターで自転車を借り、宮之浦のまちを散策していると携帯が鳴った。
でようとしたが間に合わず、履歴に泊まっているホテルの電話番号が残っていた。
気がついていなかったが3度目の電話だったみたいだ。
何事かと思い、折り返し電話したところ、縄文杉まで行く道路の通行止めが解除されたことと、登山の準備などしておいてくださいとのこと。
これを親切と受け入れればいいのだろうけど、もしかして、僕が自○するような雰囲気に見られたのかと思い、帰ったらなるべく愛想よくしようと思った。2日分の食料とレインコート(悩んだ挙句、一番安いやつ)を買い、自転車を返しに行こうとしたら、また雨。
ひとつきに35日雨が降るといわれるこの島は、絶えずどこかで雨が降っているらしい。
***********************************
暗闇のバス停でバスを待っていた。道路があると思われる暗闇の奥から突然まぶしい光とともに荒川登山口へ行くバスが来た。
このバスは一日一往復しかないので、行きのバスに乗り遅れれば一日が無駄になり、帰りのバスに乗り遅れればホテルに戻って来られなくなる。
バスにはすでに数人の乗客がおり、途中で乗ってきた乗客を含めて十数名になった。
登山口に着くと、まだ暗闇の世界だったがたくさんの登山客で賑わっていた。
雨が降っている。待てば止みそうな雨だが、続々と登山者は山に入っていく。帰りのバスの時間もあるので、ぐずぐずとはしていられない。
昨日買ったレインコートを着るが丈が膝あたりしかない。それにスニーカーにジーパン。
まわりは本格的な登山者の格好をしているなか、いかにも登山を知らないといったいでたちだ。
意外にも傘をさしてるひともいたので、僕も折りたたみ傘をさして暗闇のトロッコ道を進んでいった。
前を行く登山者の明かりだけがたよりである。
このトロッコ道がなかなかのくせもので、枕木が等間隔並んでいるわけではなくリズムよく歩いていけない。
それに滑りやすく、枕木がないところは水たまりになっている。
トンネルを抜け、吊り橋を渡っていくと徐々にまわりが明るくなってきた。さっきまで見えなかった川の流れは、太古を彷彿させる迫力があった。
夜明けとともに雨も小止みになり、霧がたちこめ、苔が一面に生えた幻想的な森が僕の視界に広がった。
樹木の香りや鳥たちの鳴き声も僕の五感を刺激する。
小止みになったと思った雨だったが、常に放射状の水滴が降り注いでくる。
空を見上げようとしても樹齢数千年も生きるといわれる屋久杉が見えるだけだ。
外界で雨が降っていても樹木の葉などのおかげで、僕のいる場所までは直接に雨が降り注がないのだろう。
ここはとてもとても深い森。
一時間ほど歩いただろうか、最初の休憩所に着いた。
近くに廃校になった学校がある。
ひらけた場所に来ると雨が強く降っていることがわかる。
雨宿りがてら朝食を食べることにした。
おにぎりふたつと生クリーム入りのアンパンを食べて、まったりしていると、
数人のおばさんグループのひとりが、疲れたので私をおいて先に進んでくれと訴えていた。
まわりのひとたちはもう少し頑張ろうと励ましていたが、結局そのひとは残ることにしたらしい。体調もかんばしくなかったのだろう。
僕にもこの選択肢を決めないといけない時が、来るのではないかと脳裏によぎった。
登山の経験がないのと単独歩行のため、ペースがなかなかつかめずにいた。
前のグループについていこうとするのだけれど、先に行ってくれと合図が出る。
結局何組かのグループを追い越した。
自分でもハイペースじゃないかと思い、休憩を取ると、さっき追い越したグループに追い抜かれていく。どうもペース配分がうまくつかめない。
湿度が異様に高くなってきた。レインコートのなかはサウナ状態になっていた。
自分の汗や雨で靴下や下着までもがずぶ濡れになった。
どこまでも続くのだろうかと思えたトロッコ道も終わりを告げることになった。この先は山道になるらしい。
少しでも濡れた靴下を乾かそうと脱いでみたら、途中から違和感があった両足の小指と薬指の間の皮がめくれていた。
バンドエイドを貼り、ライターで靴下を乾かした。
***********************************
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最終更新日 2005年05月19日 11時02分40秒
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