下準備 土

下準備 土


 やきもので使う土は使い道の側から大別して四種類あります。かたちを作るのに使う土、装飾的に使うことが多い化粧土、釉薬にする土、窯や窯道具を作る土です。土にはその粘り気や、鉄分などの割合、荒さ、熱に対する性質などによって様々な種類があります。昔から世界中にいろいろな個性的なやきものがあるのは、もちろん作陶技術や人々の暮らしぶりの違いもありますが、その材料の性質自体がそれぞれの土地ごとに非常に個性的であるということにもよります。これらの性質をつかんで、時にはいくつかの土を調合してやきものの原料として用います。

 昔は土のあるところに窯を築いたことと思いますが、自分がここ生畑に窯を造ったのは、土地と住居をお借りして窯焚きが出来る場所だったからです。踏んでいるところの土地の材料で仕事することは大切なことかと思いますが、今ではいろいろな条件で難しいのもまた現実です。ともかく自家では現在生畑の土は少しづつテストしていますが、使っておりません。ここは地質が岩石がちで、粘土層が比較的少ないと言うこともありますが、仮に良い土があったとしてもそれを十分な量確保できるかどうかということとは別問題です。

 自分がここに来た当時日吉ダムの周辺整備の大規模な造成が行われていたため大量の山土を確保することが出来ました。窯はこの耐火度の高い赤土で築きました。この土はさらに、化粧土、一部の釉薬や、呉洲のベースとして用いています。白い化粧土には朝鮮半島の河東カオリンと呼ばれる土を瀬戸の蛙目粘土などと調合して使っています。また窯のなかで品物の融着を防ぐための窯道具土には瀬戸や信楽の業者から特に耐火度の強い土を買っています。

 そして品物を造る土に関しては、地元で奥土と呼んでいる丹波篠山の原土、信楽の原土、隣町である丹波町の原土、京都五条坂の原土、唐津の叩き土、河東カオリン、信楽や京都の製土工場で水漉した土などを単味、または適当に混ぜ合わせて使っています。
 このうち現在最も多く使っているのは最初にあげた2種類です。篠山の奥土は古くから丹波焼で主になる土を調整する目的で使われてきました。耐火度は弱く、粘りは強いが腰のない鉄分の多い土です。この土を自家では他の土とは混ぜないで単味で無釉の焼締めのものに使っています。
 釉薬をかけるほとんど全ての品物に用いている信楽のほうは、五位ノ木古窯という信楽初期の窯跡があるそばの土です。従ってそのころの信楽もこのあたりの土を焼いたものと思われますが、今手に入るものはかなりニュアンスの違う土となっています。これは当時は人力で取りやすい所の良い土のみを使ったのに対して、今では重機で深い層を掘っているためかと思われます。採土場の地層を見ると良い土が薄い層で走っているのがわかります。こういうところだけを丁寧に手で掘れば粘りがある使いやすそうな土ですが、全体を大きく掘り起こしたものは信楽特有の長石や珪石の粒ばかりでなく、細かい砂も多く含まれていて粘土分が少ない土です。この土ばかりでは成形も困難で十分焼き締まらないため、より粘りの強い他の土を補って使います。


土は野積みにしておく
 野積みにして保存している土

 掘ってきた土は野天に積み上げて寝かせておきます。風雨にさらし強い日差しに当てたり凍らせたりする間により風化が進み、また余計な水溶性のアルカリ分が抜けるためです。
 こうして寝かせた土を使いやすいように精製するのですが、土の精製法には主に二つの方法があります。水漉土と叩き土です。もちろん掘ってきたそのままで使うことや、大きな石のみ手で取り除いて使う場合もあるかと思います。水漉とはいったん水に溶かして掻き混ぜ、木の根などは浮かせて、また石などは沈ませて中間の細かい良い粘土分のみをより分ける方法です。大規模な製土工場では原土をすりつぶした後この方法を取る場合が多いようです。


土叩き
 叩き土の道具 左篠山原土・右信楽原土

 自家ではほとんどの場合水漉ではなく叩き土の方法を取っています。これは寝かせてあった土をいったんしっかり乾燥させて、石臼で叩き、用途に応じてそれぞれの荒さに篩い分ける方法です。この方法だと粒の大きさだけで選別されるので、焼けば燃えて無くなる木の根や、砂粒なども一緒に混じってきますが、それだけにいのちのある土が出来ます。土の精製は大切な作業ですが、不純物を除くこの作業も度を過ぎればあまりに人工的で野性味の無い死んだ土になってしまうようです。これに気付いたやきものの作者はしばしばいったん水漉した土に再び小石や砂を混ぜ込んだりすることもあるのですが、なかなか本来の土の表情はもどってはきません。


素焼き鉢の土
 素焼きの鉢に水分を吸わせる

 さて、叩いて粉末にした土は大きなバケツに少し篩ってはじょうろで水を掛け、全体に水分を行き渡らせます。土が粘るのはその物理的性質も大切だろうと思うのですが、土中のバクテリアなど微生物の働きも大きいと言われています。ですから自家ではカルキなどで滅菌した水道水ではなく谷川の水を使っています。しっかり全体を水になじませるためにはやや多めの水を掛けて泥状に軟らかくします。それから素焼きの鉢に布を引いて泥を盛り、日陰においてゆっくりと水分を吸わせて固さを調整します。

 程良い堅さになれば、全体をむらなく揉むのですが、これがなかなかの重労働で、このとき土が多い場合は足で踏みます。しかし自家の場合は大抵はせいぜい素焼き鉢3つづつくらいの作業ですから手で揉むことがほとんどです。足でする場合は「土踏み」手の場合は「荒揉み」と呼ばれています。そうしてこの地点での土はまだまだ粘りが足りませんので、このままビニールに包んだり、時には水を掛けたりしながら、また乾かないように注意して寝かせます。しばらく置く間に土中のバクテリアも増えてよく粘る土になります。よく寝かせた土は作りやすいばかりではなく、焼いたときの傷もでにくいと言われていますが、自家ではなかなか長期間の寝かせは出来ていないのが実状です。

 そうしてどうしても土は固まりの表面から乾くので、使う前に再び荒揉みをし全体の堅さを均一にして、次に空気を抜くための菊揉みと呼ばれる方法でよく揉みます。土の中に空気が入っていると、乾燥段階で土が縮むときに割れたり、あるいはそのときにだいじょうぶでも、焼くときに急膨張して傷の原因となります。
 いざかたちを作る前には、かたものであれ轆轤作業であれしっかりと土を揉むことが大切です。

(02/8/15)


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