気まぐれ屋。

気まぐれ屋。

2018.08.24
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カテゴリ: ヒトコトモノ
菅井きんさんが亡くなった。
晩年は足の骨折により車いす生活となり、老人ホームで
リハビリをしながら暮らしていたのを、TVで観た。
それが私にとっては、彼女の最後の姿となった。
ちょっと意地悪な老婆役のイメージが強いけど、
とても親しみの持てる“近所のおばあちゃん“が
亡くなったみたいに、寂しいニュースだ。
それと同じくらいの寂しさを、感じた悲報がもうひとつ。
以前からメディアで取り上げられる度に興味が増した本が、
矢部太郎 (お笑い芸人カラテカ) の実話漫画『大家さんと僕』。
発行から1年3ヶ月。既に23刷(スゴイ!)まで行き、
この出版不況の時代に50万部を突破した。しかも
第22回手塚治虫文化賞短編賞というお墨付きをもらい、
今注目の作品と言える。
巷で異常な盛り上がりをすると、かえって冷めてしまう
アマノジャクな私が、なぜこの本を読みたかったかと言うと。
私自身にも『大家さんと私』が書けそうな、似たような出逢いとストーリーがあるからだ。
矢部さんの大家さんのように、独り暮らしでもなく、
「ごきげんよう」が口癖のキャラクターではないものの、
まだほんの少ししか読んでないのにもう、「あるある」ネタに
共感し、当時の自分と大家さんのやり取りを思い出し、
胸や瞼が熱くなっている。
******
大学の仲間との集団生活を離れた後、クラスメイト2人と
同じアパートに引っ越したのが、大学3年の春。
都内S区の閑静な住宅地。大家さんちの敷地内に、私達の
新しい棲みかとなるそれは、かなりの年数をかけてその場に
溶け込んでいた。
女性限定と謳ってるのに、マッチョな男が勢いよく蹴りを
入れたら簡単に開きそうな1枚扉。そこにドアチェーンなど
洒落たもんもない (後でお願いして付けてもらった) 超昭和な
物件だった。
田舎者の私達はどうしてもS区のエリアにこだわって、
そこの住民になりたいがために、比較的広いワンルーム
(と言っても昔の畳和室)、収納充実、リフォーム済みという
ことと、このエリアで絶対にありえない“良心的な家賃“が
まるで一軒屋みたいな4世帯で、全くの他人は1人だけ
という、ほぼ大学寮と変わらない暮らしが始まった。
就職を機に地元に戻る友達を見送った後も、私だけそこに
居続けた。次々に周りは変わっていくが、私と大家さん夫婦
の関係は何も変わらずに、更新更新を繰り返し、結局10年も
居座ってしまった。
私の両親より10以上は上の年齢だったろうか。当時から既に
いい塩梅に歳をとった夫婦に見えた。でも町が町だからか、
とてもインテリで、いかにも“東京”の人、という印象で。
一見冷たい感じの近づきにくいふたりではあるが、奥さんは
何かと私を気にかけてくれた。特に距離が近くなったのは、
皆が故郷に帰り、私がなんとか社会人になった頃から。
いつも常に“見張られてる”生活は、初めは気持ちのいいもの
ではなく。窓を開けるのも、ごみを捨てるのも、夜中に
帰ってくるのも、外泊で家を留守にするのも……
とにかく気を遣い、息苦しさを感じることもあった。
でも都会で独り暮らしをする娘に“番人”が居ることを、
我が父や母は心強く思い、とても喜んでいた。
こうして書いていても、昨日のことのように色々と
蘇ってくる。ひと口では言えない想い出と感情で、
ブログには収まりきれない。だから矢部さんの
想い出を“残したい”気持ち……解るなぁ。
私には絵を描く才能はないので、文字だらけになるが、
大家さんの奥さんとのエピソードは、どれもちょっと
煩わしいんだけど、どれも私への愛がたっぷりで、
感謝の言葉だけじゃ、たぶん足りない。
私が歩いてすぐの隣の区のマンションに、引っ越すと
告げた時。今思えば、親戚いや東京の母のような温かい
言葉をかけてもらった記憶がある。その後は年賀状で
安否を確認し合う程度で、最後にハガキを貰ったのは
私が結婚して写真入りのお知らせハガキを送った後だ。
なかなか結婚しない自分の娘が、やっと結婚したのを
心の底から喜ぶ母のように、綴られた文字は躍っていた。
こんなに喜んでくれるとは思わなかったけど、
ようやく10年分の恩返しができたような気がした。
その翌年にも年賀状を送り、その後も送り続けたが
返事が来ることはなかった。近所に行く用事のついでに一度、
あのアパートまで行ったことがある。
我が“東京の実家“とも言えるアパートは、また少しの
リフォームで小奇麗になり、誰かの生活を支えてた。
大家さんちも外から見る限りは、何も変わらない。
もう一歩が踏み出せず、“娘の里帰り”とはならなかったが。
改めてその町の懐かしい空気を吸い、原点を確認し、
気持ちが前向きになった。
引っ越してから、今の町に暮らす前まで長いこと、
なぜだか時々、あのアパートのあの部屋にこっそり忍び込む
夢を何度も何度も繰り返し見た。
今はもう全く見なくなったけど、あれは何だったのだろう。
******
昨日本が届いた夜、知って驚いた。
矢部さんの最愛の大家さんが、亡くなってしまった。
そんな日にぴったり届いたこの本は、私が今
読んでおかなきゃならない“意味”があるのかもしれない。
矢部さんの大家さんのご冥福をお祈りしつつ、
私に沢山の愛情を注いで、成長を見守ってくれた
私の大家さんに、いっぱいいっぱい感謝しよう。
★  ★  ★  ★  ★
今日のひとこと。「マイケル・フォーチュナティ懐かしすぎ!」
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最終更新日  2019.03.19 11:39:47コメント(0) | コメントを書く


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