きまぐれうさぎ

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2010.01.09
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テーマ: 本日の1冊(3794)
カテゴリ: カテゴリ未分類
美しい母マコとその娘のコマコは安息の地を求めて旅を続ける。



直木賞受賞後の作者渾身の書き下ろし長編なので、ずっと読みたかった作品でした。やっと読むことが出来ました。
今回も期待を裏切らない出来だったと思うのですが、今までの桜庭作品とは少し違ったような印象を受けました。
違うといっても雰囲気や文章などに見受けられる作者の世界観は健在です。ですが、これまでの桜庭作品に共通してきた作者の焦点が少し変わって来たような気がしました。
これまではミステリ要素を含んだストーリーや少女達の焦燥感や鬱屈した思いを込めた魂の叫びのようなものを
「語る」ことに重きが置かれていたような気がしたのですが、今回はそれらがあまり重要視されていないように感じました。


さて、内容はというとこの作品は第二部構成になっていて、
第一部は「ファミリーポートレイト」として母親と娘が逃げるように旅をする物語になっています。
この第一部だけを見ると以前の桜庭作品と違った印象を強く感じることはないのですが、若干気になったことはありました。

現実的な物語の中にふと存在する現実離れしたところ、多分これがこの作者を好きか嫌いかに分けている要因になっているのだと思いますが、個人的にはこの不条理さは好みで、これこそが桜庭一樹の物語たらしめているところだと思います。
そうなのですが、今回はその作者の個性ともいえる不条理さが、かなり顕著に物語に存在しているように感じました。不条理さ好みの私でさえも少々やり過ぎなではと感じるくらいでした。
こんなに多いと不条理が現実を打ち負かしてファンタジー化してしまいそうです。以前はあった現実と現実離れした不条理の絶妙なバランスがここでは失われてしまっているような気がしました。
もしかして作者は意図的に物語を現実離れさせることにより夢か絵空事感をだしているのかもしれませんが、それにしてもなんとなく今までの作品にはない不安定な印象を受けてしまいました。


※以下若干ネタばれ有りますので注意


第二部では母を失ってからの娘の余生とも言える約十七年間を「セルフポートレイト」として描います。
この第二部では特に印象に残るような展開や設定がほとんどないように感じます。
作者は以前の桜庭作品にあったミステリ要素のストーリー展開や少女の魂の叫びなどを語るという作業をここではあまりしていません。
ここでは作家になった娘の、物語を生みだす作家としての苦しみに焦点があたっているのです。
そのせいで、第一部に比べて主人公の心情の語りが非常に多いと感じます。第一部に比べてこの第二部は圧倒的に言葉に力強さはあるのですが、文章に力が入り過ぎているような印象も受けてしまいました。
なんとなく第一部の不条理さの多さといい作者がこの作品では客観性を失い気味のような気がしてしましました。
主人公の境遇が作者の状況をなぞらえているようで、主人公が作者の分身のように見えてしまい感情移入しづらいのも気になりましたし。



ですので、「ファミリーポートレイト」は作者のターニングポイント的な作品になるのではないでしょうか。
今までの作品を点とすればこの作品は恐らく線。
以前の桜庭作品と、今後進化するであろう桜庭作品をつなぐものがまさにこの作品のような気がします。

次の新たな作品をつなぐ為のこの作品。
作者が今後どう進化してゆくのか想像しながら読んでみてはいかがでしょうか。





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最終更新日  2010.01.09 22:15:26
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