きまぐれうさぎ

きまぐれうさぎ

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2010.04.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
庵堂家は遺体から日用品を作り出す「遺工」を生業にしてきた。そんな庵堂家は父親の七回忌にバラバラだった三兄弟が集まることになる。



日本ホラー小説大賞受賞作です。
遺体から日用品を作り出す「遺工」を生業にしている三兄弟の物語です。

ホラー大賞というからにはジャンルはホラーになると思うのですが、この作品において唯一ホラーと呼べるのはその「遺工」の部分のみに限るような気がします。

遺体を加工するので、もちろん作中に遺体を切ったり剥いだりという描写がこれでもかと登場するのですが、それはあくまで職人として行っていることなので残虐的な印象はほとんど受けません。ですので、全体的に見てもこの作品はホラーの雰囲気があまり感じらないと思います。


さて、ストーリーですが、その「遺工」を中心に三兄弟それぞれの視点で語られながら物語は進行してゆきます。
若干引きこもり気味ながら寝る間も惜しんで家業に没頭する長男、家業と二人の兄弟に溝を感じてしまう次男、直情的で口が悪いながらも惚れたら一途な三男など、個性的な登場人物達がそれぞれ抱える問題に直面してゆきます。

読んでいて感じたのはこの三兄弟は家業が家業なだけに、一見変わり者じみて見えるのですが、中身は至極まっとうだ、ということでした。
それぞれの抱えている問題にしても、普通に生きていれば誰しもが何かしら直面しそうな問題でしたし。


そんなことから、それならいっそ職業は「遺工」でなくとも良かったのでは?このストーリーなら「和菓子職人」でも「古道具屋」でも良かったんじゃ…などと臆面もない思いを抱いてしまいました。
もうちょっとこの奇抜な発想である「遺工」を生かした物語があったらもっと引き込まれたような気がします。

そうなんです…。
読んでいてとても不思議だったのは、この一見完成された作品に吸引力があまり感じられなかったということでした。

この作品は良いか悪いかで言えば、良い作品であることは疑いのないことだと思います。しかしながら、そんな良作にも関わらず、個人的には読んでいて何故かあまり物語に引き込まれませんでした。
ページをめくる手を止められないということもなかったので、良く言えば時間の有る時に少しずつ細切れに読めた、とも言えるのですが。

とはいえ、この作品で文章の方は全く問題ないと思います。
少しライトノベルを感じさせる軽いタッチの文章だと思いますが、書きなれた印象を受けるので伝わりやすい文章だと思います。
そして主人公達の心理描写も丁寧ですし、遺工の工程も実に詳しく描かれています。
この作品は文章や舞台、登場人物に関しては新人らしい初々しさや青さは、ほとんど感じることなく安心して読むことができました。

しかしながら、この作品は奇抜な舞台と設定、細やかな人物描写に支えられながらも、物語が主人公達のまっとうな成長物語になってしまった為なのか、淡々とした印象しか残らなかったような気がします。


読んでいて思わず「逃げて~」と叫びたくなるようなはらはら感もなく、
最後の最後で思わず「あ!」と漏らしてしまうようなどんでん返しもなく、
数々の伏線がやがて一つに繋がってゆくそう快感もなかったので、
起伏の乏しいストーリーのように感じていまいましたので。
最初からホラーではなく、



ただ、ストーリーは物足りないとは言っても、
この三兄弟が自分の好みにかっちりとハマれば、読むことを止められない作品になると思いますので、
この作品はストーリーよりもまず三兄弟に注目して読んだ方が良いかもしれません。


最近まとまった時間が取れないのでちびちび読みたい方や、
三度の飯より三兄弟が好きと言う方などに、
おすすめの作品です。





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最終更新日  2010.04.14 21:25:57
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